青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

panpanya『枕魚』

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あいかわらずフェティシズムに満ちた街、水(と海中生物)、地下、そして”過ぎ去っていったもの”への憧憬。中でも目をひくのは、やはり看板や標識といった街の風景の描き込みだ。看板や標識というのは、その先に何かが”在る”という予告だ。panpanya作品の主人公は、それがどんなに頼りなさげであろうとも、その”ガイドラン”のようなものに忠実である。彼女(や彼)は、ガイドラインに沿い、多くの寄り道をしながらも”謎のピザまん”や”枕魚”や”ニューフィッシュ”や”4本の東横線”といった得体の知れないものに見事に辿り着いていく。ガイドラインには”予告”と共に「ここはこういう場所です」という定義づけの側面も持ちあわせている。ニュータウンらしさとは?どこからどこまでが車両なのか?ゴミのよく集まる場所とは?ラーメンの作り方とは?本作には、あらゆるものを形づくる定義が、ことこまかに描かれている。しかし、人物デッサンのふにゃっとした線のように、その定義もまた、クニャクニャと頼りない。


すなわち、panpanyaは、“ガイドライン”に従って進んでいく、ヌルっとした快楽性と共に、その目印の不確かさを提示し続けている。物事の定義を揺さぶりながらはみ出していく愉快さ。指示どおり進んでいるはずなのに、辿りついてしまう、魅惑のどこか。「何でもない日常に潜む非日常」という言葉にしてしまうと実に面白みのないそのアドベンチャーを、驚くべきバリエーションで描いていくpanpanyaの漫画はどうにも面白いのである。

枕魚

枕魚