青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

星野源『ばかのうた』(自主制作盤)


星野源の初期のディスコグラフィー自主制作盤『ばかのうた』(2005)というのがある。なんと限定200枚でのリリースで、現在オークションでは6万円なんて値段がついていたりする。主要曲は、写真家・平野太呂との共作本『ばらばら』

ばらばら(CD付)

ばらばら(CD付)

に付属しているCDに収録されているわけですが、やはりイントロ、アウトロ入りのオリジナルを聞いてみたい、というのが音楽好きの"性"というものです。「たしか、探せばあったはず」という知人がいたので、貸してもらいました。これがまたとってもいいのですね。シングルのカップリングでも(house ver.)という形で宅録音源を収録していますが、こちらはよりハンドメイドでローファイ。ややあざとい、とは思いつつも「ばかのうた」が「スゥー」という息を吸い込む音から始まるのに、親密さのようなものを抱いてしまいます。この自主制作盤『ばかのうた』の何が素晴らしいかと言えば、歌い手の「歌う事への気恥ずかしさ」というのがきっちり刻印されている所ではないだろうか。表現をする事へのためらいのようなものに心動かされてしまう。以前のワンマンライブで

中学のときに自分の歌声を聴いて、バームクーヘンを食べたようなカスカスの声なのがイヤで
B'z みたいに歌いたくて・・・

と自身の歌声へのコンプレックスを語っていましたが、コンプレックスを経ての歌声ゆえに、歌い人にありがちな陶酔感がない。「くだらないの中に」での堂々たる歌いっぷりには、次のフェーズに行かれたのだな、と頼もしくも悲しくなったものです。話は戻って、この自主制作盤の『ばかのうた』、収録されているのは

01 intro at atlantic
02 ばらばら
03 スーダラ節
04 次は何に産まれましょうか
05 ばかのうた
06 outro at pacific
07 夜中唄

と、何故か本編が”大西洋”と”太平洋”に挟まれ、「夜中唄」で終わるという構成。この盤での星野源の歌は、前述「照れ成分に加え、技術的な面でも現在とは趣が異なる。ピッチが整っていない。しかし、これこそが本来の星野源の歌のリズムなのだろう、という生々しさがあって、それを「ばらばら」や「ばかのうた」といった代表曲で堪能できるのはなかなかに一興だ。「intro at atlantic」と「outro at pacific」は、環境音、というか街(阿佐ヶ谷)の空気が収められている。

世界は ひとつになれない そのまま どこかにいこう


「ばかのうた」

分かっちゃいるけど やめられない 

「スーダラ節」

ああ もう ばかなの土は これからもぬかるむ 
くだらない心の上 家を建てよう 


「ばかのうた」

というボヤキのような諦念(とちょびっとの祈り)は、”生きづらさ”のようなものを抱えた24歳の青年が、その街で暮らす為の処世術だったに違いない。そして、"街"、そして"海"を逸脱し、不思議な場所に辿りついてしまう最終曲「夜中唄」が美しい。街での暮らし、そしてそこへの抵抗のドキュメントとして、この自主制作盤『ばかのうた』は面白いのだ。