青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

五反田団『びんぼう君』

五反田団『びんぼう君』

いきなり思い出話になります。小学校の時、友達がたくさん来る予定になったりするとテンションが上がっちゃって母親に「今日友達たくさん来るから!」とかちょっと自慢気に宣言しちゃいましたよね。でも、なんかこう色々あって言うほど人数来られなかったりして、母親に「あれ、今日ってたくさんお友達来るんじゃなかったっけ?」とか聞かれるのが死ぬほど恥ずかしかった、みたいのありませんでした?ないのかしら。後、友達の誕生会に呼ばれるか、自分の誕生日会に何人友達を呼べるのか、とかを自分がどうこうって言うより親がどう思うのかを気にしちゃったりして。何が言いたいかというと、そこが例え家族間であっても、大人はもちろんの事、子どもですら、演じたがるんだよなぁ、という話。


そこで、アトリエヘリコプターにて五反田団「びんぼう君」を観てきたわけです。貧乏な父と息子の2畳2人暮らし。息子の誕生日会にクラスメイトを呼ぶも、結局仲がいいわけでもない女子が1人しか来なくて・・・という3人芝居。父と息子の関係にクラスメイトが入る事で、息子とクラスメイトの関係に父が入る事で、それぞれ演じていた役割が変化していく様が面白い。また、劇内で人形遊びやおままごとに興じる。更に元をただせば演劇というのは役者が演じているものであって、「演じる」という行為が複雑に絡み出していくのを目の当たりにする興奮。では、小難しい芝居なのか、というとそんな事は全くなく、むしろ大それたものを演劇に期待している人には口足りないくらいのライトな味わいに仕上がっている。貧困に対抗する技は想像力で、テレビを観た事のないびんぼう君が想像力でサザエさんを筋肉質な男として立ち上げたり、集めて燃やすと紫の炎が出ると信じて爪切りにいそしんだりする愛おしさがおかしさに変化して転がっていく2畳を舞台にした小さな演劇。1シチュエーションで1時間半持たす前田司郎の巧みな戯曲にはほとほと感服です。演劇に出会うのが遅かった事による最大の後悔は五反田団の過去の演劇を見逃している事に他ならない。


アフタートークでは、演劇を15年やってきて、今まで才能(感覚)で作っていたものが、経験に邪魔されてきている、という話を展開していた。そこに抗っていかなければ落ち目になっていくだけ、と。これって表現者はもちろん、全ての人の生き方に通ずる話ですよなぁ。