
「最近のこと」が全然更新できない。実のところ、ドラマや映画の感想エントリーを書くよりも、日記を書くほうがずっと労力がかかる。書いていて、「こんなん誰が読むねん」となって筆がのらないので。また、何を書くか以上に、何を書かないのかも重要で、その選別に時間がかかる。そして、わたしはその選別が下手くそだ。気を抜くと、朝起きてから眠るまでをしっかり時系列順に書いてしまいそうになる。また、内容に自信がないので、せめて情報を入れようとしてしまうので、正式名称や表記を調べたりと時間がかかる。しかし、今はとにかく何かを書いていたい気分なので、10日分以上をまとめて書いてみた。またしても、1万字を超えてしまった。こんな長いの、まじで誰が読むのだ。毎日少しずつ更新できたら1番いいのにな。
11月15日土曜日
妻が娘を連れて友人の家に遊びに行ったので、自由行動の日。古本屋でも巡りながら京都の一乗寺あたりをプラプラすることにした。そのことを妻に伝えると、「東京の人は本当に京都が好きだねぇ」と言う。妻は関西人なので、京都を特別に思っていないふしがある。仕事で京都に毎日通っていた時期があるので、東京に住んでいた頃に比べればスペシャル度はだいぶ下がったものの、それでもやっぱり京都は、歩いているだけで特別な気分になれる場所だ。話は逸れるが、仕事で京都の河原町の商店街を歩いていたら、「えっ、ウェンディーズあんだけどwww」というような感じで、めちゃくちゃウケている西洋の観光客がいた。たとえば、自分がニューヨークを歩いているとして、どんな日本食のチェーン店が街並みにあったら笑うだろうか、と考えてみた。「宮本むなし」とかあったら笑うかな。
電車を乗り継ぎ、出町柳駅で降りる。豆餅で有名な「出町柳ふたば」の行列が、とうとう道路を横断してまで続いていた。ふたばの豆餅は本当に美味いので、並んで買う価値はあると思うが、いくらなんでも信号を渡る行列はやりすぎだ。出町柳から一乗寺までは叡山電鉄に乗ればいいのだけど、歩きたい気分だったので、何軒かの古本屋を覗きながら散歩。京都大学の周辺を賢い心持ちになりながら歩いた。白川疏水通りの静けさ、美しさにウットリ。やっぱり、京都はスペシャルだ。気分が良くなって、clairoの音楽をイヤフォンから流した。そういえば、先月くらいにclairoは奈良や京都に来ていたらしい。鹿と一緒に写っていた。先月、両親とともに奈良旅行に行ったのだけど、父が鹿と高市早苗の話題に触れだして、「これが噂に聞く、年老いた両親が知らぬ間にYouTubeなど犯され、ネット右翼になっていたというやつか!?」と身構えていたら、「外国人が蹴っている写真とか加工らしいな」と言っていたので、安心して「あんなこと言っちゃダメだよね」と返しました。
一乗寺はラーメン激戦区で、関西で唯一の本家の「ラーメン二郎」があり、「池田屋」や「ラーメン荘」などの二郎インスパイアの名店、さらには「天下一品」の総本店、「極鶏」や「高安」といった有名店がひしめく。のだけども、最近はこってりとしたラーメンを食べるとお腹が痛くなってしまうので、「とん吉」という古くから営業している趣の、町のとんかつ屋に入った。“ポップカルチャーととんかつ“と謳っていたこともあったが、とんかつもすっかりご無沙汰だった。ラーメンもカレーもとんかつも積極的に控えていかねばならぬのが加齢なのです。「とん吉」は人気店だったらしく、12時を過ぎるとあっという間に店内はいっぱいになり、行列ができていた。甘めのソースに浸ったとんかつは白米が進む。山椒のきいた豚汁が口の脂っこさをリセットしてくれて、最後まで美味しく食べられて大満足。腹ごなしをすませ、一乗寺エリアをひたすらに歩き回る。「紫陽書院」「欧文堂」「萩書房」「マヤルカ古書店」「一乗寺BOOK APARTMENT」「アリバイブックス」など、いい感じの古本屋がたくさんあった。中でも「マヤルカ古書店」の品揃えが趣向にドンピシャ。安西水丸と宇野亜喜良のイラスト集を買っておけばよかったな、と書いている今になって後悔している。鴨沢祐仁『クシー君の発明』の青林堂の初版が置いてあって、高くて手が出なかったのだけど、実物のオーラが忘れられず、帰り道にネットで探して購入してしまった。お店では、古賀及子の名著『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』の自費出版版(?)と今江祥智『はじまり はじまり 絵本劇場へどうぞ』を買った。いまさらながら、古賀及子さんの本を少しずつ読んでいるのだけども、エッセイ・日記ブームにおけるトップランカーだなと心酔しています。内容がおもしろいのはもちろん、自意識の取り扱いが大人だな、と思う。
一乗寺に来たならばと、「恵文社」も少しだけ覗く。言わずと知れた名店だけども、質のいい本が網羅されすぎているが故に、店の魂みたいなものが見えづらくて、どうも気分が上がらない。20代の頃にも何度かはるばる訪ねていったけど、なんでもあるので何を買えばいいかわからなくて困惑していたのを思い出す。『君たちはどう生きるか』の岩波文庫版とか、どこでも買えるものを選んでしまったものの、帰りの高速バスで読んでいたく感動した。じゃあ、いい思い出の店か。それにしても、バスで本が読めるというのも若さだ。今は絶対に無理。三半規管、衰えまくり。「恵文社」の隣にある「ガトーモンブラン」という歴史のありそうな町のケーキ屋さんで、レモンケーキを買った。ネットの記事によれば、80代の夫婦が作っているらしい。ショートケーキやチーズケーキも美味そうだったが、移動時間を考慮して諦める。歩き疲れたので、駅前の「喫茶 点線」で休憩。ビルの3階にあるうえに、看板もない。「写真撮影やおしゃべりは極力お断りです」「注文をうかがうのが遅くなるかもしれませんが、席でお待ちください」みたいな注意書き机に置いてあって、どうにも敷居が高いお店らしい。店内にはお客はわたしを含めて3名。他のテーブルにはすでに提供済みである様子なのに、待てど暮らせど、わたしの席に注文をとりに来ない。そもそも店員の姿も見当たらない。「なるほど、試してくるじゃねぇか」とジッと待っていたが、かなりの時間が経過した後、「申し訳ありません!まったく気づいていませんでした!」と慌てて注文を取りに来た。思っていたよりも気難しいお店ではないようだ。深煎りのアイスコーヒーと固めのプリンが美味でした。女性客が本を読みながらめちゃくちゃ泣いていた。鼻をズルズルさせて泣いていた。一体何を読んでいるのか気になったが、わからずじまい。なんの本かわかれば、「恵文社」で買いたかった。
11月16日日曜日
妻が友人の結婚式へと出かけていったので、娘と2人で過ごした。公園の遊具で遊んでいると、突然にして、補助なしでガシガシと一人で登れるようになった。「やりましたね!今のお気持ちをどうぞ」とエアマイクでインタビューごっこを試みたら、「はい、がんばりました!もっとできるようになりたいです!」とちゃんとインタビューみたいに返してきたでの、ウケた。笑っていたら、娘も笑った。お昼は娘のリクエストでうどん屋へ。お子様セットのキツネうどんの甘く炊いたお揚げを食べながら、「これ、好き」とご満悦でした。あとは、わたしの注文した鶏天をよこせ、よこせとたくさん食べた。
数駅先の商店街でマルシェが開催されているというので、自転車で出掛ける。マルシェというよりは縁日という感じで、店先で射的とか塗り絵とかパチンコ台などが展開されていて、娘はスーパーボールすくいに挑戦。難しいかなと思ったけども、ピンクとオレンジの小さなボールをすくうことに成功。周りの人も盛り上げてくれて、相当にうれしかったらしく、「宝物だ」「やってよかったな」と何度も反芻していた。お店の人に「お喋り上手ねぇ」と言われると、急に黙りこくってしまった。帰りの自転車で、「あの時、なんで急に大人しくなったの?」と聞くと、「ちょっとおこられたかと思った」と言っていて、すでにマニュピレーションを理解している、と驚く。「そんな、京都の人じゃないんだから」と絶対にわからないであろう返しをしたら、「なぁに言ってんだぁ?」と言われた。
家で『しましまとらのしまじろう』のアニメを観た。最近のしまじろうのアニメはめちゃヌメヌメと動くし、道徳的な話しかなくて、なんか気持ち悪い。わたしが小学生の頃の初期のアニメもあって、こっちは温かみあるアナログなアニメーションであったし、話もずいぶんと練られていた。主要キャラクターだった“らむりん”が突然消えてしまったのは有名な話だが、黒猫三兄弟というキャラクターがいたのもすっかり忘れていた。長男のドット、結構好きだったな。彼らも2008年を境に出なくなったらしい。ちなみに娘の推しは“とりっぴぃ”とのこと。道徳が支配するしまじろうの世界において、とりっぴぃはとびぬけて愚か者である印象なので、いいチョイスだと思います。
夜ご飯は妻が作っておいてくれたおでんを温めて一緒に食べる。昼に鶏天、夜はおでん・・・『じゃあ、あんたが作ってみろよ』に影響を受けた食生活ではないか。お風呂には、娘の大好きな藤井風を流しながら入った。彼女のお気に入りは「Hachikō」「きらり」「帰ろう」「まつり」あたりの楽曲です。「Hachikō」を聞くと、「へい!って歌うところがおもしろいなぁ」と言う。歯磨き、保湿、着替え、ドライヤーを終えて、宝物のスーパーボールを抱えて眠っていった。わたしもヘトヘトになり早めに寝る。
11月17日月曜日
休み明けでテンションが上がらない中。内務処理に追われる日。景気づけにお昼は、後輩と鯖飯の専門店に行く。鯖飯とお味噌汁のセットを注文。鯖は脂が乗っていてジューシーで旨味たっぷり。鯖の下に敷かれた大葉が爽やかなアクセントとして楽しませてくれた。店内に出汁のポットがあり、最後にその出汁をかけて、茶漬けにようにして食べた。生活への意識が高そうな同年代くらいの女性3人が働いていて、店内には小沢健二、フィッシュマンズ、キセル、カネコアヤノが流れた。このお店の人たちが好きそうすぎる!と密かに興奮した。わたしも好きですけど。
帰宅するとまさかの夜ご飯も焼き鯖だった。鯖は好きなので、まったくかまわない。鯖を食べまくり、肝臓脂肪を減らしましょう。肝臓の脂肪には、鯖とブロッコリーが効くらしいですよ。デザートに柿を剥いて食べた。柿は固いのとグチュグチュのとどっちが好きかを語り合い、わたしと娘はグチュグチュ派で、妻は固い派ということに決まった。娘はたぶん響きだけでグチュグチュ派になった。最近の娘は、質問するときの語尾が「~なのかい?」なのだが、誰か江戸の落語を聞かせましたか。メルカリで購入しい童心社から1997年に出版された太田大八『絵本西遊記』が届く。
B5のワイド版で絵が大きくて格好いい。『西遊記』をちゃんと読んだことなく、『ドラえもん のび太のパラレル西遊記』(大好き!!)の印象しかないので、本家の話の大筋が知れたのもよかった。本家は三蔵法師に出会うまでの、暴れ者の孫悟空の挿話が結構しっかりある。『CDTV ライブ! ライブ!』のスペシャルが放映していて、星野源とFRUITS ZIPPERを観た。星野源の新曲「いきどまり」はとてもいい曲だ。「いきどまり」はまだしも、穏やかな「Family Song」を披露している時にも、星野源に笑顔はなかった。紅白を辞退したという星野源は、“わたしたち”に怒っているのかもしれない。そして、わたしはFRUITS ZIPPERにすっかりハマっている。「わたしの一番かわいいところ」は最初はピンときていなかったのだけど、楽曲の情報量のわりに、よく聞くとBPMが遅いのがおもしろい、と気づいてグッと掴まれてしまった。どの曲を聞いても、めちゃくちゃいい。「ぴゅあいんざわーるど」「超めでたいソング 〜こんなに幸せでいいのかな?〜」とか泣くぜ。
2025年に入ってからのリリースもまた凄くて、「かがみ」「好き、お願い」「KawaiiってMagic」「さん」「JAM」「はちゃめちゃわちゃライフ!」あたりはどれも年間ベスト級では。「好き、お願い」とかはほとんど嵐の「Love so sweet」なのでもっと売れてもいいと思う。クレジットを眺めていると、ヤマモトショウ、玉屋2060%、宮野弦士、中田ヤスタカ、コモリタミノル、Youth Case・・・そんなアイドルソングのトップクリエイター総取りが許されるのか。であるから、有象無象のアイドルの屍の上に立っているような感覚があって、そこに凄味を覚える。NHKプラスで15日放送の『タモリ・山中伸弥の!? ヒトはなぜ音楽を愛するのか?』を観たのだけど、ちょっとおもしろすぎ。吉岡里帆の聡明さ、かっこいい。好きな曲の2位に選んでいた玉置浩二の「しあわせのランプ」を聞いて、寝た。この曲が収録されている『JUNK LAND』もいいアルバムだ。
11月18日火曜日
仕事で大阪の堺周辺を回る。堺にあるフェニックス通りという大きな道路にはなぜかヤシの木が植えられていて、南国の雰囲気を醸し出している。なぜフェニックス通りにヤシの木があるのだろう?と調べてみると、植えられているカナリーヤシの通称がフェニックスであって、ヤシの木が植えられているからフェニックス通りなのだ。堺というと、わたしの中では「かん袋」のくるみ餅と「本家小嶋」の芥子餅だ。どちらも、堺まで足を延ばして堪能する価値のある銘品。特にオススメである「かん袋」のくるみ餅は、実はくるみを使っているわけではなく、餡で餅を“くるむ”からくるみ餅であるらしい。夏場は氷くるみ餅もいいですね。余計なものが入っていない純然たる甘味は味わうごとに力が湧いてくるようなのです。
移動しながら、カーステレオでGeese 『Getting Killed』を聞く。最高。聞いたことない音がたくさん鳴っていて何回聞いても新鮮だ。コーネリアスがプロデュースしたストーンズ、みたいな形容に納得してしまう。あと、最近のラジオ事情としては『金の国のたまに壁どん』と追加して、ちょこちょこと聞いている。渡部おにぎりの人としてのありかたの複雑さは味わい深い。そして、声があまりにフリーザすぎる。
帰宅して、夜ご飯に鰯の照り焼きを食べる。妻にお願いして、平日は魚中心の献立にしてもらっている。今年は健康診断の数値があまりよくなかったので。ご飯を食べて、娘と一緒に入江泰吉『仏像の表情』という写真集を眺めた。
先月、奈良に旅行に行って以来、娘はプチ仏像ブームなのだ。『仏像の表情』はなかなかにすごい写真集で、今では許可がおりないような距離から撮影されていて、仏像の顔の陰影がくっきりと写り込んでいる。娘が気に入ったのは阿修羅像のようで、買って欲しいとおねだりされ、部屋のどこに置くかまで決めていた。ごめん、生涯年収をつぎこんでも無理だ。お風呂に浸かりながら『有吉クイズ』のメモドライブ最新回をTVerで観た。わたしはお風呂で本も読むし、テレビも観てしまうので、絶対に入浴によって疲れがとれていないと思う。メモドライブは生々しい人間が映りこんでいるので、いつ観ても興奮する。あのちゃんのテレビでの在り方は最高だ。楽しみにしていた『じゃあ、あんたが作ってみろよ』7話を観る。連続ドラマなので「全話が最高!」を求めるは酷なのだけど、6話までの圧倒的なおもしろさから比べると、7話はちょっとトーンダウンな印象。やはり高円寺が舞台であるほうががおもしろいのだろうか。菊池亜希子と星野英利の家族、良かったけども。結婚式に出席する勝男の靴下の色がベージュであったのが1番記憶に色濃い。This is LAST「シェイプシスター」のスローテンポバージョンが流れると、いつもMrs.GREEN APPLEの節回しだな、と思う。注文してあった『クシー君の発明』が届いていたので、ウットリしながら眺める。モダンでウイットに富んだ、宇宙と月と少年愛。完全なるインスピレーション元であろう稲垣足穂『一千一秒物語』が読みたくなり、本棚から文庫版を取り出し、パラパラと読んでから寝た。
11月19日水曜日
何をしていたのか記憶にないが、気になる音源のニューリリースが豊富だった。まずは、cambelleの1stアルバム『Magic Moment』だ。
日本語で紡がれるレトロモダンソウル。ビンテージ楽器の音色、丁寧なソングライティング、リリック、全部が良い。「Gloom/親密さについて」というタイトルだけでノックアウトです。ちなみに、cambelleはケイチ&ココナッツ・グルーヴが改名したバンド。キイチビール&ザ・ホーリーティッツというバンドもいたけども、あまりにもバンド名のテンションが似ているので、なにか関係があるのかもしれない。ケイチ&ココナッツ・グルーヴが今年の4月にリリースした『OLD JOY』というモロ渋谷系なアルバムも悪くなかったが、改名とともにサウンドも大きなジャンプアップだ。ボーカルの歌い方も腰が据わった気がする。この飛躍は、“生活の設計”がBluemsから改名したのを想起するが、両バンドには交流があるらしい。生活の設計とcambelleが今年リリースした都市生活の暮らしと決意を刻んだメロウでソウルフルな2枚のアルバムには、今後も勇気づけられていくことでしょう。さらに、今をときめく裏方さんとなっていたTobias Jesso Jr.が10年ぶりにソロアルバムをリリース。2015年の1人でジョンとポールとジョージをやっているような『Goon』をずっと聞き続けてきたので、うれしい。RADWIMPSのトリビュートアルバムも聞いた。ずっと真夜中でいいのに「有心論」が印象に残った。あと、米津玄師は改めて喉が太いし、Vaundyの「前前世」の図太さにもグッときた。RADWIMPSは完全に同世代。2枚目から4枚目あたりのアルバムは大学生活とも重なっていて、青春のサウンドトラックであって、涙なしには聞けません。前にも書いたことがある気がするけども、わたしがはじめて人前に公開した文章はmixiレビューの「25コ目の染色体」という説がる。怖すぎて、決して開いてはならないmixi。そういえば、mixi2ってどうなったのだ。そして、幼い子どもがいる世代がマストで活用している写真共有アプリ「みてね」は株式会社mixiが運営していると知り、いまだにmixiにお世話になっていることに驚きます。
夜ご飯は鯖の味噌煮。食後に、娘とモーリス・センダック『かいじゅうたちのいるところ』を読んだ。まだ早いかなとも思ったけども、たいへん気に入った様子で、あっ!と思いつた顔でクローゼットに走り、白いフワフワのアウターを引っ張り出し、「マックス!」と叫びながら“かいじゅうのダンス”を披露してくれた。異なる事象が脳内で結びついてハッとする時の娘の顔を見るのは大きな喜びだ。スパイク・ジョーンズの映画版のサウンドトラックを聞かせてあげたら、「All Is Love」に激ハマりしてしまい、かれこれ30回は聞いている。
この日の『水曜日のダウンタウン』はニッポンの社長のケツときしたかの高野さんのドッキリ。2人の生活が垣間見られてよかった。ケツの家が“ちいかわ”だらけなのとか興奮したな。高野さんの狼狽はブルースがあって、改めて良い。お風呂で、吉本隆明『夏目漱石論』を読んだ。気分が乗ってきたので夜更かしして、ロバート・B・パーカー『ハメットとチチャンドラーの私立探偵』を流し読み。評論とはなんぞや、ということを学ぶ。
11月20日木曜日
通勤中にRCサクセションの「君が僕を知ってる」を聞いて、電車の中で泣きそうになる。もともと、大好きな曲だけども、最近は木村と中居を連想してしまうので。商談があり、肉体労働もありで、この日も非常に疲れた。仕事でひさしぶりに前に住んでいた谷町あたりをウロウロした。最近の『空気階段の踊り場』は何週にも渡って岡野陽一がゲストでうれしい。岡野さんを交えての3人の会話が空気階段のラジオで1番好きかもしれない。
この日はM-1の準決勝進出者が発表。カナメストーンがラストイヤーにして初の準決勝、うれしい。板橋に住んでいたことがあるので、カナメストーンには親近感がある。ラジオもYouTubeも好き。基本的には暗い人間が好きなのだけど、カナメストーンのカラっと明るい悲壮感のなさはとても好きで、とは言え、見せないところで色んな葛藤があったことだろうから、まずは少しだけ報われてよかった。M-1がダメでも、カナメストーンはTHE SECONDでめちゃくちゃウケると思っているので、大丈夫です。
仕事を終えて、ご飯を食べて、お風呂に入ってから車に乗り込み、レイトショーのシネコンに出掛けた。風呂に入ってから出掛けるのはとても悪いことをしている気持ちになる。レイトショーの空いている映画館が好き。この日の上映はお客さん3人。わたしは昼にチケットを買ってあったのだけど、席についてみると、前の席に人が座っていて、「人の心がないのか・・・」と憤った。もちろん、まったく同じタイミングで買っていた可能性もあるのですけども。頭の中でくらい勝手に怒らせて欲しい。こんな空いている映画館で、なぜ他人と固まって観ないといけないんだ、と上映が始まってから、後ろの端の席に移動した。映画は『平場の月』を観た。いいだろうな、と思っていたけども予想以上に良かった。そもそもわたしは堺雅人が大好きだし、監督の土井裕泰のフィルムがかなり好みなのかもしれない。『カルテット』はもちろんだけどテレビドラマも好きな作品が多いし、映画でも『ビリギャル』も『片思い世界』も好き。井川遥も大変良かった。舞台が朝霞、志木、池袋あたりの風景で泣く。わたしは西武線と東上線の人間なので。安藤玉恵、中村ゆり、宇野祥平、吉岡睦雄、黒田大輔といった、邦画の脇を支え続けている良心みたいな面々が勢ぞろいしているのもうれしい。ポスターの出来があまりに酷くて損しているのだけど、それ以外は細かいところまで気が効いている。たとえば、大森南朋の娘の結婚式に、父親の友人である堺雅人や宇野祥平や吉岡睦雄が出席していて、「そんなことありえないだろう」と思っていたのだけど、後半に出てくる堺雅人の母の葬式で、宇野祥平が母の遺体に「オババぁ」と泣きつくシーンが挿入されていて、彼らの家族ぐるみでの結び付きが提示されて、そういうことだったのか、と納得させてくれる。
hiko1985.hatenablog.com
ブログでは、月のモチーフがどうこうとか色々書いてみたものの、本当は、でんでん演じる孤独な老人が作る湯豆腐に堺雅人が「うまっ!!」とひどく感激し、でんでんが「湯豆腐は利尻昆布に限るっ」とか言うシーンについて書きたい。湯豆腐や昆布はなんのメタファーにもなっていないし、物語に奉仕しないのだけど、ただあのシーンがあることで、キャラクターの実存感がクッキリとする。生きている、ということが撮られている。そういえば、クズな元カレとして登場する成田凌がUSのM65タイプのコートを着ていて、そういえば、『じゃあ、あんたが作ってみろよ』のミナトくんもM65のコートを着ていたし、やっかい元カレの着るコートとして、M65はあるのかもしれない。映画を観終えて、星野源「いきどまり」をリピートしながら、帰宅してすぐに寝た。
11月21日金曜日
基本的に、昨夜観た『平場の月』のことを考えていて、他の記憶がない。移動中に、cambelleが100曲をセレクトしたプレイリストの中に入っていて、ジャケットが気になったRusty Williams『Grand Man』というアルバムを聞く。1970年代に録音され、なぜか今年リイシューされたらしい。派手さはないがグッドメロディの詰まったパーソナルでウォーミーなAORで、とてもいい。なんで今年になったリリースされたのかは謎。2027年にバカリズム脚本の朝ドラ決定との報に喜ぶ。主演は森田望智ということで、すでに良い。夏帆、市川実日子、木南晴夏は出るものと確信しております。
友達に会いに行く話(1/5)
— 絹田みや🐖💨 (@tukutyan) 2024年2月22日
(サンプルです。)#コミティア147 #COMITIA147 pic.twitter.com/B7f5JFDOwm
Xで大バズりしていた絹田みや「友達だった人」を読んで、泣く。SNSでしか交流のなかった人のお葬式に行く話なのだけど、楽しかったTwitterへのレクイエムである。短編集も買おうと思う。三宅唱『旅と日々』を観て、ひさしぶりにつげ義春の旅ものを読み返そうと思って本棚を確認したら見つからなかったので、思い切って大きい版で揃えようと、筑摩書房の全集を買った。すでに絶版なので、ネットで安くて状態のいいものを血眼で探した。こういう作業をしている時が一番生きていることを実感するかもしれない。大きくて読みやすくて感動。つげ義春を読んだことがないという妻に、とりあえず「リアリズムの宿」と「李さん一家」だけ読ませた。一連の作品を読み直してみて、ほとんど内容を覚えていることに驚いた。高校時代に、意味がわからない・・・と思っていた作品たちも、“意味がわからなさ“をしっかり噛みしめていて、心に残っていたのだな。
夜は『ばけばけ』と『ひらやすみ』をまとめて観返した。髙石あかりと森七菜は本当に素晴らしい。『ひらやすみ』は森七菜が出てくるだけで泣きそうになってしまう。
hiko1985.hatenablog.com
かりそめ天国もMステもない金曜日で、味気ない。先週か先々週のかりそめ天国に出演したいたかもめんたる岩崎う大、おもしろかったな。そんな岩崎う大さんの『家族コント』の試し読みで公開されていた父親の自覚について書かれたエッセイに感銘を受けた。この本も買おうと思う。
11月22日土曜日
朝から2-4歳までの親子料理教室というやつに娘と出掛ける。妻が勝手に応募していた。4組の親子のうち、父親はわたしだけであった。もち米を潰して、味噌と胡麻を振りかけ、海苔を巻いて味噌餅の完成。ついつい手を出したくなってしまうのだけど、最近は手伝おうとすると、「自分でやるから!!」と泣いて怒るので、見守る姿勢を心掛けたい。「これくらいの子どもは、やっているところを見せるだけで勝手にできるようになりますよ」と先生が言っていた。1時間の教室を終えて、さぁ帰るぞと思っていたら、「一人ずつ感想をお願いします」と始まってしまい、焦る。1組目のお母さんが、この教室の意図というか核心みたいなものを端的にまとめた感想を発表していて、「賢いかよ・・・」と焦り、言うことがないので、「娘と2人で過ごすことがほとんどなかったので、これからは一緒に料理をすることで時間を・・・」と嘘の自虐に走ってしまった。「そうは見えませんでしたけどね」と先生にはすぐ見敗れてしまった。愚かなことをしてしまった。
教室を終えて、妻と合流し、「カプリチョーザ」を食べた。ひさしぶりにトマトとにんにくのスパゲッティを食べて興奮しました。しかし、トマトソースが跳ねて、白いカバンについて染みとなった。料理教室で気疲れしてしまい、帰宅してすぐに私も娘も爆睡。夕方に、娘を乗っけて、コンビニまでサイクリングに出掛けて、ノンアルコールビールと板チョコアイスとチョコモナカジャンボを買った。ビニール袋が自転車と擦れる音を聞いて、「ん?なにがリンリンしているんだい?」と不思議がっていた。リンリン・・・そう聞こえるのか、素敵だ、と思った。夜はM-1の準々決勝落選組の漫才をTVerでひたすらに観る。これで落ちてしまうのか、レベルの高さを痛感。毎年のことですが、さすらいラビーで大笑い。宇野マンはかわいいので、妻に「娘の結婚相手として宇野マンみたいな人が家にやって来たらうれしいね」と言った。シンクロニシティの漫才は優雅で鑑賞的な日本野球だった。
11月23日日曜日
車で「上の太子みかん園」に行き、みかん狩りをした。人生ではじめてのみかん狩りだ。関西の人はよく行くものらしい。たしかに、みかんの産地って西のほうが多い気がする。みかん狩りは想像以上に大規模なイベントで、ものすごい数の人だった。各地のこども会が集結していた。駐車場に車を停め、入場料を払ってから、みかんの木のある山の上のほうまでグングンと登っていく。かなり登る。途中で、後ろ向きに登っている小学生くらいの子どもを何人か見かけて、「あのスタイルは令和でも健在か」とうれしくなった。さくらももこが『ちびまる子ちゃん』でも書いていたし、山は後ろ向きに登ると楽、という迷信は昭和から受け継がれている。娘もと当然真似して、後ろ向きに登っていた。上の太子みかん園は、南向きで日当たりが良く、みかんはどれをもぎっても甘くてジューシーであった。その場では何個もぎって食べてもOKで、持ち帰りは大きさによって値段の異なるカゴに入る分だけ、というルール。みかんなんて何個も食えないよ、と思っていたが貧乏性なので10個近く食べた。みかんの水分でお腹がいっぱいになってしまい、お昼は食堂でカレーを一皿だけ頼み妻と分け合った。
車内での選曲の主導権は娘が握っている。最近の彼女のお気に入りは『いないないばぁっ!』で流れているGReeeeN「ポ ポポポポーズ」で、何回も何回もリピートさせられた。GReeeeNがGRe4N BOYZに、FUNKY MONKEY BABYSがFUNKY MONKEY BΛBY’Sに、謎の改名に思いを馳せた。あとは、星野源と宮藤官九郎が『みいつけた!』に提供した名曲中の名曲「グローイングアップップ」を何度も流しては涙した。
内田慈も最高だが、三宅弘城の笑っているような泣いているような歌声が本当に素晴らしい。グループ魂における石鹸としても、ドラマを叩きながらボーカルをとるべきだ。帰り道に見かけた松原市にある幸南食糧ブランドの「おくさま印」の看板がなんかグッときた。心にひびくおいしいお米。
夜は『ぼくたちん家』を観る。河野プロデューサーが新人脚本家をつかまえて、『すいか』的なものを作られていて、いくらなんでも台詞から編集のリズムまでが木皿泉ドラマのトーン過ぎて、最初のほうはパロディみたいなだなと思っていたけど、観ているうちにどんどん好きになってきた。『0.5の男』が大好きなので、白鳥玉季が出演しているのもうれしい。またしても、不機嫌な中学生の役だが、似合うのでしかたない。EDテーマのハイロウズのカバーである「バームクーヘン」は我が家のお気に入りだ。
11月24日月曜日
三連休の最終日。この日は一人時間をもらい、神戸を練り歩いた。朝一で出発し、午前中は「神戸サウナ&スパ」でのんびりと過ごす。ホクホクと軽くなった身体で、お昼に神戸の味噌だれ餃子を食べようと、「ぎょうざ大学」に向かうと祝日でお休みだった。さっそくプランが崩れてきた。汗をたっぷりかいたので塩分を欲していたので、適当にラーメン屋に入って食べた。古本屋と古着を覗きながら歩き回る。花隈公園の近くに、「生田電設会館」という綺麗なティファニーブルーの建物があって眺めていたら、ふと目に入った真横のラブホテルの名前が「ティファニー」であった。これは偶然の産物なのか、はたまたどちらかが便乗したのか。興味は尽きないが、調べる気にはならない。公園近くの「古書ノーボ」に行くつもりだったのだが、オープン時間になってもシャッターが閉まったままで、お休みのようだった。祝日はこの問題にいつも悩まされる。ブランデー戦記『BRANDY SENKI』とブラジルのギタリストFabiano do Nascimentoのニューアルバムを聞きながら歩いた。三宮~元町あたりをうろちょろしながら、古い雑誌とユーロビンテージのお店で70年代のGloverallのダッフルコートを買った。わたしは小学生の頃からダッフル党だ。お坊ちゃん感がわたしのニンに合っている、と10歳になる前から思っていた。ここでいうお坊ちゃん感というのは、お金持ちとかそういうことではなく、”温室育み”たいなニュアンスであります。これまで何着のダッフルコートを買ってきたかわからないが、年齢を重ねたこともあり、ここ数年はご無沙汰だったのだけど、気に入ったものがあったので、ひさしぶりに買ってしまった。Gloverall なんて現行品を新品で買うと10万円に近いが、50年前のものとなるとお手頃価格になっている。もちろんウールもそれなりに潰れているののだけど、気軽にガシガシ着れそうで気に入っている。この価格ならネイビーじゃない色も選べるというものだ、とグレーと茶色で悩みに悩んで、茶色を選んだ。「まめや」という珈琲屋で豆を買い、「BRUN」でドーナッツを買う。レモングレースとシュガー。プレーンは揚げたてを買えるというので、駅まで歩きながら食べた。たいへん美味しくて、これはお土産が買えたな、と満足感に包まれて家路についた。






