青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

みそさざい『しあわせジョン』


2019年6月から@misosazainfoというアカウントでTwitter上で掲載されている『しあわせジョン』という漫画にすっかり魅了されている。こんなにかわいくていいのか、というほどにジョンがかわいい。心の栄養ドリンクです。心が弱っている時に読める漫画というのは貴重で、みつはしちかこ『はーいアッコです』やけらえいこあたしンち』を読むような幸福感がここにはある。
あたしンち 1

あたしンち 1

つまり、どこかの新聞の日曜版などに掲載される国民的クオリティーを既に獲得しているということだ。線や構図も美しく、作者の”ミソサザイ”という方は何者なのだろうと調べてみるも、大阪で活動るイラストレーター/デザイナーであるという情報しか出てこない。


犬を飼い始めた吾郎という青年のお話なのだが、犬は当たり前のように二足で歩き、言葉を喋る。そのことに驚く者は誰もいない。この”異”をすんなりと受けるいれる優しい世界観は、藤子不二雄イズムの後継者とも言えるかもしれない。この『しあわせジョン』は、『ドラえもん』や『オバケのQ太郎』をはじめとする”居候モノ”の現代版である。そう言えば、吾郎ちゃんは大人になったのび太のようだ。


ジョンたちの暮らしぶり、住むアパート、喫茶店、公園といった町並みのヴィジュアルはどこかノスタルジックだが、これは現代のお話なのだ。タピオカや生食パンなども登場する。そして、何と言っても、現代人を象徴するキャラクター”ふしあわせトム”の存在。社畜のネコである。社会に疲弊しながら、ブツクサと文句を吐き、ひたすらに孤独を抱え込むトム。


この「休日」という作品のブルースには思わず声が漏れた。お前は私だ、と多くの人がトムに肩入れをするのではないだろうか。この時代において、「しあわせって何?」と聞かれても、もはや共通の大きな答えはない。考えている内に虚無に飲み込まれてしまうだろう。であるならば、夕食が唐揚げだったこと、休みの日にパンを買って帰ること、友達にスイカをもらったこと、雲の形がクジラみたいだっこと、焦げたハンバーグが美味しかったこと・・・そういった小さな出来事を、”しあわせ”なのだと胸を張って言うことで、幸福をこちら側に引き寄せてしまおうではないか。そんな強い志を、このほのぼの居候ギャグ漫画から感じるのです。