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オススメ野球漫画リスト

キャプテン (1) (集英社文庫―コミック版)

キャプテン (1) (集英社文庫―コミック版)

穂村弘の著作で「読むと落ち着く作品」いうくくりの中でちばあきおの『キャプテン』が紹介されていて、「あぁ確かに心がざわつく時に野球漫画はちょうどいいな」という所が出発点である。作家の川上弘美

1人でお昼ごはんを食べたりするんだけど、そのときに心が揺れないための本というのがありますね。『キャプテン』とか。

という言葉を残している。1人ご飯くらいで心が揺れてしまうような人にも『キャプテン』は有効なのである。野球漫画は偉大だ。



私の野球漫画の出会いは、親戚のお兄さんにもらった水島新司ドカベン』である。

ドカベン (1) (少年チャンピオン・コミックス)

ドカベン (1) (少年チャンピオン・コミックス)

主人公山田太郎の「山は野山の山 田は田んぼの田 太郎は山田太郎の太郎です!あっ!」という自己紹介にまずもって心掴まれるだけども、その山田がしばらくずっと野球をせずに柔道に励んでいるのが幼心に衝撃であった。劇画の影響が色濃く残った初期の水島新司タッチは絵としてただそれだけで素晴らしい。めくるめく魅力的なライバル、ドラマの重厚さ。明訓高校山岡さんの2年生の夏の予選大会の打率について語れる人はだいたい友達だ。
ドカベン (プロ野球編1) (少年チャンピオン・コミックス)

ドカベン (プロ野球編1) (少年チャンピオン・コミックス)

プロ野球編」の連載が始まった時は心躍ったものだ。リアルタイムで『ドカベン』が読める喜び!山田→西武、岩鬼ダイエー、里中→ロッテ、殿馬オリックスという適材適所ぶりにも唸った。清原はFAで巨人に行くかどうか悩んでいた時、山田の実家にタクシーで訪ねて相談したんですよ!



ドカベン』はいくらなんでも長すぎて(まだ連載している)、手が出しにくい。という事で私が水島漫画で1番オススメしたいのは『球道くん』である。文庫で全11巻。

水島新司流メロドラマの大傑作。今やネタ使い的なポジションの水島新司だが、彼が素晴らしきストーリーテラーである事の何よりの証明が今作。水島が書いているのは野球でなく人生だ。映画化希望。ちなみに野球漫画最大のヒット作と言っていい満田拓也『MAJOR』のプロットは『球道くん』とほぼ同じ。



水島作品が続いて申し訳ないが『野球狂の詩』も外せまい。

野球狂の詩 (1) (講談社漫画文庫)

野球狂の詩 (1) (講談社漫画文庫)

50歳を超える現役投手・岩田鉄五郎は今作に限らず、ほぼ全ての水島作品に姿を現す永遠のアイコン。東京メッツを舞台にした野球狂たちのオムニバスだが、描かれているのは一貫して"ブルース"である。シミったれていて泣ける。女性初のプロ野球選手、ドリームボール水原勇気を描いた中編のメロドラマ性も見逃せない。また、これほど男子マインドを魅了してやまない野球漫画はない。ドカベンどころじゃないハチャメチャ球選手が続々と登場する。劇場でゴリラがメジャーに入って活躍する『Mr. Go』という韓国映画の予告編を観たのだけど、いや、それ40年くらい前に『野球狂の詩』でやってますわ。



もう1つだけ、水島作品から外せないのが『おはようKジロー』だ。

廃部をまぬがれる為に各部活から選手をスカウトする、という今ではお決まりのプロットの最高峰ではないだろうか。1番印象に残っているのは、貧血を回避するために試合前にレバニラやら鰻やら牛乳やら食べまくってしまい、試合中ひたすらに便意と格闘する回。



水島新司の野球漫画は濃すぎるのであれば、最初はあだち充から入ってみてはどうでしょう。

タッチ (1) (少年サンデーコミックス〈ワイド版〉)

タッチ (1) (少年サンデーコミックス〈ワイド版〉)

H2 (34) (少年サンデーコミックス)

H2 (34) (少年サンデーコミックス)

なんだかんで『タッチ』と『H2』の2作品をチョイスしたい。あだち充の人物に喋らせ過ぎない美学がよい。特に『H2』はあだち充の独特のミニマリズムが画風を含めついぞ完成を見せた大傑作だと思います。小学校の頃、タイトルで買うのが恥ずかしかった。



キッズ向けと思いきや、その熱さにやられてしまうのがむぎわらしんたろうドラベース ドラえもん超野球外伝』だ。

ドラえもんの世界観を借りているものの、Fマインドは希薄。しかし、クロえもんとシロえもんのライバル対決の熱量。無人島での修行、満月打ちに180Kmの剛速球。これぞ、漫画である。しかし、最初のほうだけ読めば、後はわりとどうでもいいです。



女性にオススメなのはひぐちアサおおきく振りかぶって』だろう。

おおきく振りかぶって (1)

おおきく振りかぶって (1)

BL要素も満載。これを読んでおけばルールもばっちりです。ルールを覚えてきたら、ハロルド作石ストッパー毒島』をオススメしたい。
ストッパー毒島 12 (ヤングマガジンコミックス)

ストッパー毒島 12 (ヤングマガジンコミックス)

あの伊集院光も「宇宙一の野球漫画」と絶賛しております。劇中の時間軸をプロ野球の1シーズンに限定した事で、ドラマの密度が凄まじい。とにかくプロ野球好きのツボをついてきます。オリックスイチローがいて、野村監督率いるヤクルトが強かった頃のお話。打率や防御率などの成績などが作中に詳細に出てくるのがミソだ。続編が待たれる。



すっかり野球漫画にはまり、行くとこまで行ってしまったら

アストロ球団 (第1巻)

アストロ球団 (第1巻)

地獄甲子園 (1) (ジャンプ・コミックス)

地獄甲子園 (1) (ジャンプ・コミックス)

アストロ球団』と『地獄甲子園』に突入してみましょう。野球で人が死にます。ここが最果て。やっぱり野球はルールがよくわからない!という人には野球部だが一度も野球もせずにバスケの練習を続け気が付いたら三井寿よりも3Pシュートが上手くなった主人公がいる木多康昭『幕張』を全巻揃えるといいかもしれない。
幕張 1 (ジャンプコミックス)

幕張 1 (ジャンプコミックス)

ここがもう1つの最果て。


そうだ、冒頭のちばあきおであれば『キャプテン』の続編的扱いの『プレイボール』も必読。

プレイボール (1) (集英社文庫―コミック版)

プレイボール (1) (集英社文庫―コミック版)

しかし、我々の荒んだ心を落ち着かせてくれるひたむき美しい世界を描いてくれてちばあきおは絶筆の末に自殺、同じく『スポーツマン金太郎』など健康的なスポーツ漫画を描き続けたトキワ荘の兄さん寺田ヒロオも絶筆している、という事実には少なからず動揺してしまう。でも、やっぱり我々は野球漫画を追い求めてしまうのだ。