青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ヤーレンズという漫才師について


ヤーレンズという漫才師が面白い。オードリーを擁するケイダッシュステージ所属の2人組だ。ダブル眼鏡(ちなみにコンビ名にレンズが入っているのは眼鏡からではなく、サザンオールスターズの「YARLEN SHUFFLE~子羊達へのレクイエム~」という楽曲からだそう)というだけでなく、楢原の飄々とした人をくったようなボケ、ツッコミの出井の柔和な感じの良さ、おぎやはぎを連想しない方が難しいだろう。しかし、彼らは単なるおぎはやぎフォローワーには陥っていない。

ヤーレンズの漫才はまさに”お喋り”である。かつては関西に活動の拠点を置いていたようだが、”しゃべくり漫才”というのとは違う、まるで深夜のファミレスでの”駄弁り”を想わせる絶妙なボンクラ感がある。ヤーレンズの2人はそれぞれ楢原と出井という自身の”人”からは抜け出さない。コントスタイルの漫才も行わない。例えば、「“きのこの山”と“たけのこの里”のどっちが好きかは日によって変わるけど、本当の”きのこ”と”たけのこ”、”山”と”里”なら、ほんとどの人が”きのこ”と”里”を好きだっていう法則に気付いたわ・・・」といったような何の意味もない話を延々と続けるのだ。話題はシームレスにスルスルとチェンジしていく。話題と話題の間に脈絡はない。これが何故か面白い。2人のやり取りには無駄がなく、発想や言葉の端々のフレーズが実に洗練されているからだろう。

ヤーレンズはダラダラとしたお喋りを”演芸”として成立させようとしている。ラストには、「そろそろ漫才するか」と、15秒ほどの設定を固めたショート漫才を披露する。ネタの9割を占めるそれまでのダラダラとした”お喋り”を自ら「漫才ではない」とするメタ構造なのだが、それが逆説的に「ヤーレンズの”お喋り”こそが漫才だ」と宣言しているように聞こえてくる。横山やすしダウンタウンの漫才に対して放った「チンピラの立ち話」というあの有名な批判を、ヤーレンズは現代的に解釈し、漫才に新しさを持ち込もうとしているように思える。ライブシーンではめきめきと人気を獲得しており、以前紹介したランジャタイらと共に、新しい波を巻き起こすであろう要注目の漫才コンビでございます。