青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

片想い×フジロッ久(仮)in ペンギンハウス

高円寺ペンギンハウス30周年記念の片想い企画ライブを観た。時間の都合でsajjanuは観られず。”はいからさん”もラスト1曲しか聞く事ができなかった。しかし、その”はいからさん”の演奏のR&R具合が実に良くて、ペンギンハウスの音響の格好よさに痺れてしまう。大きい音なのに抜けが良くて、少し粗野なのだけど、たまらなく腰にきてセクシー、ようはロックンロールみたいな音なのです。その後の2組のライブへの期待で始まる前から胸がいっぱいに。なんと、トリだと思われた片想いが3番手、トップバッターだと思いこみ、見逃した事を悔やんでいたフジロッ久(仮)がトリなのだという。ついている。片想い×フジロッ久(仮)、これが観たかったのだ。
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片想いのライブを観るのはずいぶんと久しぶり。その久しぶりがペンギンハウスで良かった。50人も入らないようなライブハウスで、あのとんでもない音楽が鳴っているという贅沢。そして、親密さ。演奏は決してピシッとしてないのだけど、隙間と抜け感がたまらなく魅力的だ。うさんくさファンクに、なんてちゃってビーチボーイズなコーラス、その全てが愛しいな。どこまでも間口の広いポップミュージック、その敷居の低さはなんてかっこいいのだろうか。恒例のissyタイム、オチは赤ん坊の亡き声で、そこからスティービー・ワンダーのカバー「愛しいな」へ。なんてくだらないオリジナルへのオマージュだ。最高だ。「グッドエネルギー、シンキングタイム」「tristeza de carnaval」「Daily Disco」「踊る理由」「センチメンタル☆ジントーヨ」etc…楽曲の良さ、改めて尋常じゃない。日本語でこういう音楽を聞ける喜び。このバンドのありがたみを当たり前のように思ってはならないな、という原点回帰なライブでした。
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そして、フジロッ久(仮)だ。今回のイベントでシラフさんが共演バンドにまず指名したのが彼らだったらしい。目の周りを黒く塗るタイプの実にパンクバンド然とした佇まいで、ライブパフォーマンスもその実、確かにパンクバンドである彼らと片想いの共演を意外に思う人も少なくはないだろう。しかし、ここ数年、彼らが活動の指針においていたのは名作DVD『片想い VS VIDEOTAPEMUISC』、パンクシーンからとんちれこーどの背中を追い続けてきたバンドなのである。個人的にも彼らはceroの生き分かれた双子みたいなものだと思っているのです。育ち方と出力が違うだけなのだ。DJ感覚であらゆる音楽性を雑多にマッシュアップした出来上がった楽曲と音色。ブラックミュージックと日本語ポップスの歌謡性を折衷点としたスウィートなメロディ。そして、この街で暮らす事の”美しさ”と”もどかしさ”について歌ってくれる。そうです、フジロッ久(仮)ceroと並ぶ僕らの世代の最重要バンドなのであーる。過去に何度かブッキングライブで共演はあれど、ついにMC.sirafuからお声が直接かかったわけで、気合い入りまくり、少し緊張している感じもグッときます。もうこの日は全てがずーっとよかった。1曲目に披露された「おかしなふたり」はまたしても新たなアンセム誕生!と紹介して回りたくなる名曲だ。「はたらくおっさん」での「おどるポンポコリン」からの拝借に倣って、今度は『クレヨンしんちゃん』の「オラは人気者」からのサンプリングだ。どうしたって思い起こされる、金曜から日曜日の刹那。これはもう、週末ソウルだ!鍵盤とパーカッションの新規加入によって、リズムが更に細分化&強化され、バンドの演奏から生命の躍動をより感じるようになった。彼らが目指す所の”命が踊る音”にまた一歩近づいたのだろう。昨年リリースされた『ニューユタカ』(もしくは今年の『あそぼう』も)という音源は飛び抜けたクオリティのメロディと言葉の詰まった名盤だが、正直な所、録音にやや不満があった。この日「ニューユタカ」や「ドゥワチャライ久」の音の塊の弾け方や、「シュプレヒコール」「あそぼう」の藤原さんの歌の伸び方を聞くと、録り直して欲しいなーと思ってしまう。この日のライブ、個人的に彼らのレパートリーで1番好きな「うまれる」がハイライトだろうか。少し落としたテンポが不思議なグルーヴを生み、ちょっと特別な演奏になっていた。これが、新・フジロッ久(仮)か。感慨深けに、なんなら涙ぐみながら、片想いとの念願の共演の喜ぶを語る藤原さんが、いい感じにMCを締めて、最後の曲に入ろうとすると、横から「マザーファッカー」の声が。もう1人のフロントマン高橋元希である。「え、今、なんかマザーファッカーって聞こえたんだけど」と、もう一度仕切り直す一連のくだり、最高でした。意味がわからない場面でも炸裂する元希君のパンク精神よ。「僕は今日この人(元希くん)の魅力を伝えに来たみたいになってるんですけど、実際そういう所あります」という藤原さんのMCもグッときたな。こんな雑多なバンドいないぜ!


本当に素晴らしいライブイベントだった。ペンギンハウス30周年おめでとうございます。そういえば、数年前にフジロッ久(仮)藤原亮のソロライブをたまたま見かけたのもペンギンハウスだったな。こんな箱が1984年から高円寺にあるのだな。片想い、フジロッ久(仮)のライブ共々、ペンギンハウスもマストチェックの空間であります。