是枝裕和『奇跡』
上り新幹線と下り新幹線が交わる瞬間に奇跡が起きる、というフォーマットは、過去と未来とが交わる映画の奇跡そのものじゃないか。航一の友人が憧れの先生(長澤まさみ)の自転車を眺めるシーンはどうしたってトリュフォーの『あこがれ』を想わせ、それでいてサドルを嗅ぐと見せかけて、ベル(音)を盗むというのがよいではないか。兄弟が再び、それぞれの家に帰る別れ際のホーム、線路が画面の奥にスーっと伸びているのも素晴らしい。また、奇跡目撃前夜の家屋でのシークエンスも出色だ。警察の補導から逃れる為に咄嗟についた嘘が、時間と空間を柔らかく変容させてしまう。ありえるはずのない孫の来訪。こう書くとまるでお涙頂戴映画のようだが、そんな奇跡をサラッと実現させてしまっている是枝の手腕よ。「スイミングスクール」だとか「ポテトチップス」だとか「かるかん」だとかで、スッと距離を飛び越えていくのもいい。また、航一が住んでいるのが鹿児島の桜島近くというのが効いてくる。「わけわからん」とくさしていた桜島の火山灰を航一が受れ入るというのは、降り積もっていく「時間」を受け入れるという事だ。ジュブナイルとしても良質で、くるりの音楽もいい。
しかし、2013年現在において今作最大のトピックは福岡のアイドルユニットRev. from DVLの橋本環奈が出演しているという事実だろう。SKE48松井玲那がTwitterで「橋本環奈ちゃんが可愛すぎて生きていく気持ちが芽生えました。」「マインちゃん以来の衝撃」と絶賛し、ネット界に衝撃を走らせている話題のアイドルだ。確かにかわいすぎる。
左端ですね。役名もカンナです。2年前の今作出演時はよりロリータですが、妙に色っぽい。独特な声質も素晴らしい。東宝は彼女がローティーンの内に『学校の会談5』を撮るべきあった。ちなみにもう1人の女の子を演じる内田伽羅は樹木希林の孫、つまり本木雅弘と内田也哉子の娘です。彼女もとても存在感があって、いい女優さんになりそう。子役の演出はさすがの是枝節。ドキュメンタリーを観ているかのように、現実と虚構を行き来する。