青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ティム・バートン『ダーク・シャドウ』

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とにかく女優が美しい。空撮での列車の滑走から窓際に座るベラ・ヒースコートの顔のカットまでの一連でもう満足してしまう。美しい光が当てられている。ベラ・ヒースコートの幽霊然とした佇まいよ。クロエ・グレース・モレッツの足、そしてレコードに針を落としてのダンス、ミシェル・ファイファー(キャット・ウーマン!)のショットガン、いちいち痺れる。しかし、全てをもっていくのがエヴァ・グリーン。『シザーハンズ』のエドワードや『バットマン・リターンズ』のペンギンや『アリス・イン・ワンダーランド』の赤の女王という哀しく美しい、そしてバートンの魂が込められたキャラクター群の系譜にある魔女アンジェリーク・ブシャールがことさら素晴らしい。あの唇から発される「バーン、ベイビー、バーン」の炎に、あの差し出された心臓に、涙しないやつなんているのか。


物語の整合性のなさを指摘する人が多いようなのだけど。例えば「アンジェリークがバーナバス(ジョニー・デップ)を吸血鬼にする意味がわからない」とか。そんなもの、バートンがアンジェリークの唇に赤い紅を塗りたぐりたいからに決まっているわけで。それはつまり、アンジェリークは、赤い血を求めるバーナバスに、自分の唇の赤を求めて欲しかったって事なわけですね。でも叶わぬから赤い炎で全て燃やし尽くす。忌わしい赤の連鎖。泣ける。そして、それとまた別の主題として家族、血族というのがあるわけですから、よく出来た脚本なのです。200年の時を経てバーナバスは蘇るわけで、宣伝ではそのジェネレーションギャップネタ(テレビや車に驚く、というやつ)を全面に押し出しているわけですが、そんなものを主題にした映画を今更バートンが撮るわけがない。そういう映画を作りたいなら、21世紀を舞台に撮りますが、今作は1970年代が舞台なのですね。ここがまたよかった。今、カーペンターズを劇中に使用して(しかも大工が集結する場面で)ぴったりはまる映画が作れるという事に素直に驚き感動した。中盤ややダレるも、ラストに向けてのコリンウッドでのアクションシークエンスが痛快で一気に持ち直す。バートンのゴシック趣味が集結したコリンウッドでの前半の巣籠り感も素晴らしかったのだが、ラストそれらを全て焼きつくしたバートン。彼の次なる一手に注目であります。