シディ・ラルビ・シェルカウイ×森山未来『テ ヅカ TeZukA』
振付家シディ・ラルビ・シェルカウイとニティン・ソーニーの音楽に世界中から選りすぐられた8人のダンサー+森山未来のダンス作品『テ ヅカ TeZukA』をオーチャードホールにて観賞。原爆が投下された日本と震災後の日本を『鉄腕アトム』で繋げ、エネルギー問題を、そして『ブラックジャック』でピノコにバクテリアのコミュニケーションを語らせ、自己認識を、仏教思想を、終末思想を、と果てしなく転がり繋がっていくテーマ。手塚治虫の脳内が見事に映像、舞台装置、音楽、そして役者の身体で可視化されていき、そのイメージをひたすら浴び続ける超絶体験だった。『MW』『寄子』『どろろ』など手塚のダークサイド作品からも次々と立ち上がる。手塚治虫というのはディスコミュニケーション、喪失、カルマ、不条理な障害や阻害、性欲、劣等感、そういった暗部に目を背けずに立ち向かう作家であり、シェルカウイはそこへのリスペクトを最高の形で示し、その思考こそ今の日本に必要なものだ、と声高に表現していた。