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青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

岡田恵和『ど根性ガエル』4話

上を向いて歩こう
涙がこぼれないように


坂本九上を向いて歩こう

この日本を代表する名曲に心震わされてしまうのは、「上を向いて歩こう←涙がこぼれないように」と、まず”上を向く”という運動が描かれているからではないだろうか。これが「涙がこぼれないように→上を向いて歩こう」では興ざめしてしまう。重要なのは、とにかくまず上を向いてみること。
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いきなり余談から入ってしまったのですが、『ど根性ガエル』4話の感想です。年に1度の花火大会、誰もが等しく空を見上げる。そんな日は空の上にいる人達もこちらの事を見てくれているに違いない、とひろしの母ちゃんは言う。幼い頃にそう言い聞かせられたひろしは、父の形見であるサングラスを大人になった現在も、肌身離さず頭にかけつけ続けている。

ずっとつけてな、これを。いいかい?今日は花火大会だ。空の上から、父ちゃん見てんだよ。これしてれば空の上からでもひろしだ!ってわかるだろ?

空の上から父ちゃんがすぐにひろしを見つけられるように。これがあのトレードマークの秘密だったのだ。ひろしだけではない、みんな大切な人を失っている。母ちゃんも京子ちゃんも五郎もゴリライモも、そして私達も。悲しいけれども、それが”生きていく”という事なのだ。「星になる」なんて言葉もあるし、母ちゃんの言う通り、人は死んだら空の上に上っていくのかもしれない。だから私達は、涙がこぼれそうな時、上を向くのだろう。花火を見る為に、星を見る為に、大切な人に想いを馳せる為に。


さて、4話は現状の最高傑作と呼んでいいだろう。”見上げる”というシンプルな行為に、エモーションを宿す事に成功し、言葉以上に映像の語る、万人が感動できるドラマに仕上がっている。演出が的確だ。登場人物の”見上げる”という所作が、それぞれの抱える喪失感や孤独を空の下で繋げてしまう。花火職人に原作からモグラを登場させるのも上手い。土を掘って潜っていくモグラ(というあだ名の男)が、トンビと名を変え、空に打ち上げる花火を作っている、という上下の運動に目配せした成長の見せ方。全編素晴らしいのだけど、特筆すべきは自分の死期が迫っている(と感じている)ピョン吉が、空の上からみんなの事を眺める練習をするシークエンスからの一連だろう。ゴリライモが放り投げるTシャツ(=ピョン吉)が空中で広がり、上からみんなを見下ろす。と、同時に打ち上がらないはずの花火が上空で咲く。このドラマにおいて、常に印象的にヒロシ達を見下ろしている東京スカイツリー。16年前は存在しなかったもの。つまりは”時の流れ”の象徴である。その隣で、花火とピョン吉が咲いて散る。なんという儚き美しさか。そして、このシークエンスと同時進行で描かれる人々の様子。なんとか地元で花火を打ち上げられるよう画策するモグラ、祭りの警備を務める五郎、寿司屋でにぎりを作る梅さんとよし子先生、学校で職務を全うする町田校長、全員に等しく別々の時間が流れながら、最後、同じようにその花火を見上げる。大人数のキャスティングを抱えながら、見事に群像の時間の流れを映像で処理し切った狩山俊輔の手腕を湛えたい。


上空から落ちてきたピョン吉をひろしがキャッチする。まず、Tシャツ(ピョン吉)の生地を伸ばしてあげてから、花火がよく見えるようにと、両腕でそれを掲げる。今話もこういった温かみある演出はいちいち素晴らしいのだ。更に感動的なのは、私達が空を見上げる時、空の上の人もまたこちら見下ろしてくれている、という今話のテーマである視線の交錯が、Tシャツとして着られたピョン吉が目線を上げながらひろしに話しかける、それに耳を傾けるひろし、という関係性にトレースされている点だろう。秀逸な視線劇、それをテレビドラマの枠の中で描き切っている。


その他、雑感。言及してきませんでしたが、改めてピョン吉のCG表現のクオリティ高過ぎ/満島ひかりを湛える最上の言葉を常に探し続けている/それほどに本当に素晴らしい、かわいい/ひろし実ははピョン吉の死期に気づいているのでしょうか?/気づいていても、必ず忘れたふりをする/とすると、3話の感想で書いた記憶喪失者としてのひろし像に重なる/前田敦子白羽ゆりの素晴らしさも回を重ねるごとに増している/眼鏡屋さんの内装、最高すぎた/作品における柄本時生の顔のインパクトはいくら観ても慣れなくて、最高/しかし、時生。映画館で見かけた事ありますが、実はかっこいいです/ゴリライモは本当にかっこいい/ゴリラパンのニ食パンなんだろうか?/アンコとクリーム?/3話では紅イモ味とバナナ味が売っていたけど、それは不味そうだ/祭りの日にパンを買うなんて発想はないが、売上が3倍になるゴリラパンはむちゃくちゃ地域に根付いているのだな/