青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

カンパニー松尾『テレクラキャノンボール2013』


「テレクラキャノンボール」というのは、6人のAV監督が、公道での車とバイクのレース+素人ナンパ撮影を、詳細なルールのポイント制で勝敗を競い合うという企画。過去にも数回行われソフト化している。誰しもの脳裏に浮かぶ構図は『水曜どうでしょう』meetsアダルトビデオだと思うのだけど、時に挿入されるンパニー松尾の独特なリリカルな映像と演出は、バラエティ色よりも”映画”と呼ぶにふさわしい感触をもたらす。10時間を超えるロードムービーである。主要メンバー対してかなりの距離感を抱いていた。AV監督、女優という職業に色眼鏡を持っていた事を正直に告白せねばならない。しかし、映像を見続けていく内に彼らが真っ当な感覚を持った、かつ愉快でチャーミングな人間達である事に気づき、その旅に同行できる喜びを抱き出す。特に、チャラそうなのにナンパが苦手なタートル今田と嵐山みちるはキュート過ぎます。”普通の人”であるはずなのに、彼らは常人では理解できないモチベーションでこの大会に挑む。どう考えてもやばそうな女と避妊具なしでセックスをし、飲尿食糞に挑んでいく。セックスがしたくてたまらない10代の男の子でもない。勝利しても、地位や名誉が待っているわけでもなく、賞金も出ない。商品として神谷まゆと新山かえでというAV女優が用意されているが、それがモチベーションとなるような輩ではないだろう。「ヤルかヤラナイかの人生なら、俺はヤル人生を選ぶ」という、わかるようでよくわからないコピーはあるのだけど、やはり彼らのその行為の動機がいまいち見えてこないのだ。しかし、そこが凄くいい。

ただひたすらに移動して、ひたすら腰を降る。その透明な運動性が捉えられている。終盤において

もう、この夏は戻らない

というテロップが出る事からもわかるように、カンパニー松尾はその移動で、“時の流れ”を描き出している。そして、その不可逆性を肯定している。ディスク2の終盤、帰りのフェリーに乗り出すと、作品が不思議なトーンに包まれ出す。“りん“という女性が登場する。松尾が出会い系サイトで知り合い、「明日、一緒にフェリーに乗って東京へ行く」という無茶苦茶な条件を飲んでくれた素人さんだ。そして、レースの賞品である神谷ゆま。この2人がまるで、「もういない人」のように撮られている。「もしかして、この神谷ゆまという女性はこの後亡くなってしまったんじゃないか?」とネットで検索してしまったほどである。調べてみると死んだのではなく、AVを引退していた。どうやら漂っているのは死臭ではなく、神聖な何か。カンパニー松尾(とおそらく嵐山みちる)はこの2人は天使のように演出している。

港が近づいてきた船のデッキに、いや、光の方向に向けて船内を駆けていく神谷ゆまのシークエンスは疑いようもなく美しい。また、松尾は“りん”という女性に、北海道から東京という長い“移動”の結末として、美しい花火を用意してあげる。これが彼の「移動=時の流れ」の肯定だ。