青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

岡田恵和『ひよっこ』6週目「響け若人のうた」

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みなさーん、『ひよっこ』は6週目も好調です、朝ドラって本当に素晴らしいものですね(←私の中の増田明美が文体を侵食している)。いや、本当に東京編に突入してからの充実度はどうかしています。おもしろくない日がないし、6人娘はずっとめんこい。赤いコート、喫茶店、クリームソーダ、甘納豆、銭湯、洗い髪の乙女、恋バナ、ラムネ、西部劇、コッペパン、アーコディオン、ロシア革命、フレンチトースト、大き過ぎる上着、屋台のラーメン、初めてのお給料、まかないののり巻き、ビーフコロッケetc…こういった細部の数々だけでも思わずにんまり。物語は初日から実にエモーショナルに幕を開ける。みね子(有村架純)は父が暮らしていた出稼ぎ現場を訪ね、その残像に想いを馳せる。時を同じくして乙女寮では、庭先に集まった仲間達がみね子の一日の行方を気にかける。また、素敵なお洋服を諦めたみね子、「みね子はこんなのが好きじゃないかな」とブラウスを裁縫して届けるお母ちゃん。その素敵なブラウスはみね子を赤坂の"すずふり亭"に導く。こういった"誰かが誰かのことを想うこと"の密やかな交感が、『ひよっこ』というドラマの根元だ。



そして、コーラス部。余談にはなるが、幸子(小島藤子)の恋人でありコーラス部の指導者である高島を演じているのは井之脇海黒沢清の傑作『トウキョウソナタ』(2008)のあの天才ピアノ少年である(音楽が2つの作品を繋いでいる)。週のタイトルは「響け若人のうた」、なるほど『ひよっこ』にはたくさんの音楽が流れている。コーラス部が歌うのはロシア民謡だ。

響け若人の歌 高なれバイヤン
走れトロイカかろやかに 粉雪けって


黒いひとみが待つよ あの森越せば
走れトロイカ今宵は 楽しいうたげ

辛い日々が続き、どんなにボロボロに疲弊してしまったとしても、"がんばって"乗り越えれば、またいつか楽しい時間が訪れる。そんな祈りが込められているようのようなロシア民謡で、夜は徐々に熱を帯びていく。

お父さん まさに楽しい宴です
みんなで歌うって楽しいんですね~こんなに
みんなちょっと顔がポーっとほんのり赤くなっていて
乙女寮の乙女はかわいいな~と思いましたよ

本質的には"孤独"であるはずの人々が、何かを為し得ようと"一つ"になる時に生まれる高揚感。それは東京オリンピックを機とした日本の高度経済成長の空気感ともリンクしているし、みね子と同郷の巡査(竜星涼)が発した

同じ茨城だからほっとけないです
絆っていうものですか

という台詞とすら結びつくだろう。



茨城の奥地にて、たまたまラジオでキャッチしたビートルズの音楽にすっかり打ちのめされてしまった宗男おじちゃん。みね子からの手紙を受け取った宗男がぽつりと零す。

みね子ぉ〜がんばれぇっ!
ビートルズの情報、何かあったらよろしくな
この空は、東京にもリバプールにもつながってんだなぁ

先週放送の感想で「みね子たちが作っているのがトランジスタラジオであるのがいい」というようなことを、RCサクションと絡めて書いたのだけども、岡田恵和の念頭にあるのもやはり、忌野清志郎であったようだ。この回が放送された5月9日は奇しくも、清志郎のロック葬『忌野清志郎 AOYAMA ROCK'N ROLL SHOW』の開催日。そこで弔辞を読んだのは甲本ヒロト

僕はいつでも 歌を歌うときは
マイクロフォンの中から
ガンバレって言っている
聞こえてほしい あなたにも
ガンバレ!!


THE BLUE HEARTS「人にやさしく」

やさしい歌が好きです。忌野清志郎甲本ヒロト、そして峯田和伸。『ひよっこ』はロックンロールである、というようなわけのわからないことを口走ってしまいそう。アンテナさえ磨いておけば、会いたい人には必ず会えるし、想いは届く。



ロシア民謡ビートルズRCサクセションだけではない。『ひよっこ』では1960年代のヒットソングがいつも流れる。今週は喫茶店で流れる「明日があるさ」、銭湯の帰りに口ずさむ「見上げてごらん夜の星を」が印象的。街灯が水面に煌めく川縁を、銭湯帰りの洗い髪で乙女達が歌う。そして、就職してからの初めての休日を終えようとしているみね子たちに、幸子が気合いを入れる。

がんばりましょう、明日からまた

前述の宗男おじさんのブルーハーツもそうであるし、この”がんばりましょう”は『ひよっこ』全体を貫くテーマのようなもの。一体何度この魔法の言葉が登場することか。思い返せば稲刈りの前日のみね子の「明日はがんばりましょう」がまずもって記憶に濃い。そして、向島電機の朝の挨拶「それでは今日も一日、がんばりましょう。ご安全に!」、巡査がみね子に言う「お互いがんばろう、東京で」、すず子(宮本信子)の「がんばれ、みね子」、愛子(和久井映見)の「さぁ、今週もがんばろう」などなど、枚挙に暇はない。とりわけ愛子さんの"がんばりましょう"は素晴らしい。

ちゃんと頑張ってないと 神様は気付いてくれない

だから私はこれから幸せしかやってこないのよ
もうね 大変なことになってしまうわよ これからの私は

台詞がまぶしく躍動している!最後に、音楽が流れ続ける『ひよっこ』であるから、この国が誇る最高のポップミュージックの名曲を重ねてしまおう。

Hey Hey Hey Girl
仕事だから とりあえずがんばりましょう
Hey Hey Hey Boy
空は青い 僕らはみんな生きている

Hey Hey Hey Girl
いつの日にか 幸せを勝ちとりましょう
Hey Hey Hey Boy
かっこわるい 毎日をがんばりましょう


SMAP「がんばりましょう」


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星野源さん、”人見知り”を斬る

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人見知りだって言っちゃうことは、相手に僕人見知りなんで、なんか気を使って下さいって言ってるのと一緒だなって。それってすごい失礼だなと思って、失礼だし、何様なんだって思ったんです、自分が。だから、嫌われてもいいやって段々思えるようになってきて

星野源さん、テレビ放送で”人見知り”を斬る。2年くらい前にも雑誌で同様のことを書いていていた気がする。その時は確かもっと過激で、「人見知りなんです」と相手に言うのは、傷つかない為の予防線でしかない、オレもやめたから、早くお前らもやめろ、というような論調だった。今回は「これはあくまで僕の場合はですよ」と前置きをし、あくまで批判する対象を過去の”自分”に定めているのだけど、それこそただの予防線であり、建前でしかない。本心は、全国の”人見知り”に対して、「お前ら考え改めろよ」と言ってくださっているのだ。黙ってはいられないではないか。


「人見知りなんです」という言葉は、果たしてただの予防線だろうか。話が盛り上がらなかった時の相手への「あなたが悪いのではなく、私のコミュニケーションスキルのなさのせいなので、気にしないでください」という気づかいでもあるはず。いつも何歩か先の結果に頭を働かせる。*1こういった気づかいの側面をして、タモリは「この世界(芸能界)で成功するのは人見知りだけ」という言葉を残している。そもそも、「人見知りなんです」という前置きが予防線になるだろうか。ただの敗北宣言でしかないはず。それでもその言葉を言わずにはいられない人だっているのだ。もちろん、星野源が言っていることは半分以上が正論である。”人見知り”なんていうレッテルを自分に貼り付けてしまうのは、可能性を狭める行為でしかない。「人見知りなんです」という前置きが似つかわしくない年齢というのもある。心の扉の鍵は常にオープンに?そんなものしておいたほうがいいに決まっている。だが、「嫌われてもいいや」と強い気持ちで相手に立ち向かえるほど人はみな強くはない。星野源がそう思えるのは、着実にステップアップしていく自分があるからだろう。星野源という男はとても魅力的な男だ。一見しただけではわからない奥まった魅力や才能が詰まっている。そして、その事実は知れ渡っている。周りの人間のみならず、今や日本全国民に、と言っていいだろう。いや、それコミュニケーションのハードルむちゃくちゃ下がってますよ。誰とでもフラットに接せるでしょうよ。仮に彼が今回の人見知り否定を発するべきタイミングは、aikoと熱愛フライデーされ、一般人と間違われて目線にモザイクを入れられていた、あの頃だった。つまり言いたいのは、「こんなものはただの声の大きい奴の言葉だ、耳を傾ける必要はない」ということである。名も無き私たちは、誰かと繋がらん為に、その魅力を何とか相手に伝えようといつだって必死なのだ。その必死さの中で、嫌われたくがないゆえに「すいません、人見知りなんで」という言葉を使う機会もあるだろう。そういった”必死さ”は絶対にチャーミングで、誰かの心を捉えるはず。安心して、みっともなくもがけばいいと思う。であるから、星野が言うように、人見知りだけどがんばってコミュニケーションしていく様だってもちろんチャーミング。*2しかし、それができるようになったからと言って、「人見知り」を否定する必要なんてまったくないと思うのだ。

*1:星野の「失礼だし、何様なんだ」という発想も数歩先を見据えた考えではある

*2:上の画像の舌を出してはにかむ源ちゃんもかわいいよ

最近のこと(2017/04/28~)

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GW中にジョナサン・デミの訃報が。『レイチェルの結婚』の煌めきは永遠であるし、何と言ってもNEW ORDER「Perfect Kiss」である。好きなバンドのとびきりに大好きな曲。高校時代から「死にたい」が口癖の友人がいて、彼が「葬式ではこの曲をかけて欲しい」といつも言っていたのがこの「Perfect Kiss」だった。完璧なキスと死。深そうで全然深くないし、お葬式の意味をはき違えていると思うのだけど、えてして童貞というのはそういうものだ。変わったやつだった。McCartneyの「Ob-La-Di, Ob-La-Da」を世界で1番好きな曲と公言していて、私はそのエピソードが妙に好きで、彼を知らない人にもむやみやたらとその話を喋り散らしていた。その話を聞いたことがある人はテレビや街中で「Ob-La-Di, Ob-La-Da」が流れると「あ、あの人が世界で1番好きだった曲じゃん」と思うという。それくらい「Ob-La-Di, Ob-La-Daが世界で1番好きな曲」というのは、何かこう”変”なのだろう。大学生の時、そいつに友達の女の子を紹介してあげることになり、渋谷で待ち合せたのだけど、彼は底に気色の悪い突起が無数についたゴム製の靴を履いて現れた。しかも、色はヴィヴィッドオレンジ。少し苛立ちながら、「何のつもりなの、それ?」と聞くと、「海を歩く時、珊瑚を傷つけない為の靴なんだ」って言っていて、すごくおもしろかった。あれから10年以上の時が経ったけども、今でも「Perfect Kiss」や「Ob-La-Di, Ob-La-Da」を聞くと、彼のことを思い出してしまう。そんな奇妙な男がどうなったかというと、実はまだ生きているのです(唐突な、つげ義春『李さん一家』へのオマージュ)。PS.彼はポールのライブに行き、無事「Ob-La-Di, Ob-La-Da」を生で聞くことができたそうです。いい話ですね。後、その時紹介した女の子には今でも超嫌われています。



9連休というわけにはいかなかったのだけども、カレンダー通りにGWを過ごすことができました。特に何をしたというでもなく過ぎ去ってしまって、もう3日目くらいから終わりを予感してずっとブルーな気持ちに包まれてしまい、GWというのは人生そのもの過ぎるのでは、という見解に至った。GWに突入する前夜は街全体が高揚しているような気配があって、なんだかワクワクしてしまった。まぁ、こんなものは当然その時の精神状態に大きく左右されるので、そんな街の喧騒に「うるせぇ、ボケ」と悪態をつく日だってもちろんある。そういう気持ちはブログからも零れて落ちて、一体どこに行ってしまうのだろう。
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この日公開された柴田聡子の「後悔」という新曲がすんごく良くて、今年1番いい曲なんじゃないかしらというくらい良くて、MVも良くて、「この車から顔出すやつやろうじゃないか」という気持ちになったので、友達に車を出してもらった。ときにceroの「武蔵野クルーズエキゾチカ」という曲の

それよりさぁ今週の日曜、暇? また車 乗せてよ

というリリックはすっごくいいよな。2011年という時代に『武蔵野クルーズエキゾチカ/good life』という軽やかな7インチを聞くことができたのは、本当に救われた気持ちだった。ドライブの途中でファミマのチョコミントフラッペを飲んで、秩父あたりまで飛ばして(運転してないけど)、真っ暗な中で芝桜の気配をそこはかとなく感じながらも、それよりなにより星が綺麗でした。せっかくなので、真夜中だけども宝登山を少しだけ登った、コッペパンを食べながら。ファミマのコッペパン(あんマーガリン)が美味いと豪語したばかりなのですが、食べ比べてみたところ、どうやらセブンのコッペパンのほうが美味しい。餡子の力量に差が出た結果である。車の中で曽我部恵一の『strawberry』(2004)というアルバムを聞いたのだけども、これがもうむちゃんこよかった。

STRAWBERRY

STRAWBERRY

「LOVE-SICK」「STARS」「ミュージック!」の怒涛のラスト3曲に涙。しかし、これがもう13年前のリリースとか気絶しちゃいそうな感じだ。『JAPAN』のレビューに「音質がもっと良ければなぁ」みたいなことが書かれていて、心底バカにした記憶があるわたしのスウィースウィーナインティーンブルース。



土曜日。昨日はしゃぎ過ぎてしまし、一日中眠い。とりあえず洗濯だけは済ませて、あとは寝そべって過ごした。どうしてもコーラが飲みたくなって、コンビ二に買いに出かけたくらい。おじいさんが2つのカゴがいっぱいになるまでコーラの1.5ℓペットボトルを買い占めていて、おじいさんでもコーラを常飲したりするのだな、と感心した。もしかたらじじいとばばあが一同に介すファンキーなピザパーティーの予定があるのかもしれないし、そっちのほうが断然素敵な考えに思えた。
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CHAIの「sayonara complex」という曲はMVも含めて本当に最高だ。メンバーはCSSロールモデルにしているらしい。CSSの1stアルバムむちゃくちゃ聞いていた。Let's Make Love and Listen to Death from Above!
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ボーカルのLovefoxxxに憧れていて、一時期、mixiのトップアイコンにしていたくらい好きでした。


日曜日。アップルストアに行くついでに、表参道の銭湯「清水湯」へ。前回は整理券を発行するほど混んでいたが、今回はすんなり入れた。賑わってはいたけど。スタイリッシュで小奇麗な内装、サウナも水風呂も特筆すべきほどではないが、なかなかのコンディションで、バッチリととのう。銭湯を出て、大きな通りで通行人にたびたび話しかけられているおじいさんがいて、おそらくだけども、小澤征爾だった。小柄で赤いフライトジャケットのようなものを崩して着ていて、しかも「僕はねぇ、イタリアのフィレンツェで」と喋っているのが聞こえたので、ほぼ間違いないだろう。道行く人はみな一様に「(日本に)いるんだ~」と言っていた。同感です。



月曜日。2日働いたら休みだと思うと仕事にも精が出る。はずもなく、「休みでいいじゃないか」という気持ちでパンパンになって弾けた。火曜日。井の頭公園でロロが野外演劇をやるというので駆け付けたかったのだけども、休み前の業務で忙しく断念。むちゃくちゃ観たかった!!そもそも、瀬田なつきの『PARKS パークス』を観ていない。予告編の限りだとあまり関心を抱けないというか、違和感すら覚えたのだけども、実際のところどうなのだろう。最近、映画館に行くのがとにかく億劫で困っている。『美女と野獣』も観たい。GW中に観た映画は、amazonプライムで『ドラえもん のび太とブリキの迷宮』の1本のみです。



火曜日。いざ、GW突入。朝のリアルタイムで『ひよっこ』が観られることに感激。お風呂に入りながら聞く『スチャダラ外伝』がご機嫌だった。

スチャダラ外伝

スチャダラ外伝

「手へんにガンダム」んーいいでしょう!昼前に東北沢に出掛けて、気になっていたインド料理屋でランチにチキンビリヤニを食べる。本格派だったが、やや旨味に欠ける印象。天気が凄く良いでの、下北沢まで散歩する。街を歩いていて、下北沢にタワーレコードができるらしいことを知る。ファッキューだなぁ。タワレコはもはやK-POPとかアイドルとか星野源のCDを売る場所でしかないので、そこいらの駅ビルとかに勝手にどんどん作っていけばいいと思うのだけども、下北沢であったり中野であったり、多少なりともカルチャーが根付いている街にはいらない。シェルターの前にある劇場でまんじゅう大帝国とXX CLUBの合同ライブを観た。タイタン所属の若手漫才師2組が3本ずつネタを披露して、合間に企画。初めて観たXX CLUBは発声が素敵だった。まんじゅう大帝国が2本目に披露したコント「風邪」がクラシック感のある新作落語みたいで感激。3本目の漫才「登山」がまた飛び跳ねるほど素晴らしい。「醤油の甘さで~」のくだりは、拍手が巻き起こるくらいの決まり方だったな。東大卒のXX CLUBは太田光代社長に激ハマりしているらしいが、まんじゅう大帝国は「私は獲りたくなかった」と深夜にツイートされるほどハマっていないらしい。渋谷に寄ってTSUTAYA山田太一のテレビドラマ『早春スケッチブック』を一気借りして帰宅。
早春スケッチブック DVD-BOX

早春スケッチブック DVD-BOX

GW中に少しずつ観ていったのだけども、ほんとにもう感銘を受けてしまった。山崎努ももちろん素晴らしいが、何と言っても河原崎長一郎だ。あれぞ、小市民の良心。息子役の鶴見辰吾も抜群で、彼は『3年B組金八先生 第1シリーズ』『早春スケッチブック』『翔んだカップル』という大傑作を3つもものにしているのだから、もっと名優扱いされてもいいのでは。



さて、GWのすべての日を振り返るつもりだったが、完全にめんどうくさなってしまったので放棄します。埼玉県を中心にサウナを攻めていて、この休みは「新座温泉」と「草加健康センター」に訪れた。「草加健康センター」に関しては別エントリーでじっくり書いてあるので、そちらをお読みください。
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「新座温泉」も温泉と水風呂がなかなか良くて、リピありです。ちなみに「リピありです」というのは、化粧品の口コミサイト『@cosme』において多用されている文法へのオマージュです。「新座温泉」のあたりは学生時代の思い出がいっぱいで、川越街道のファミレスとかショッピングセンターの佇まいを目にするだけでこみ上げてくるものがあった。久しぶりに、朝霞が日本に誇る名店「いち川」でとんかつを食べようと思ったのだけども、お休み。仕方ないので、近くで発見した「ホープ」という小汚いとんかつ屋に入ってみたら、これが意外にも(失礼)結構美味しかったので満足。
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衣剥がれるし、肉の旨味も僅かだけども、それでも"とんかつ"としての良さは失われていない。味噌汁とサラダが美味しいのも好感でした。


亀田興毅の1000万円のやつに途中で飽きてしまい、せっかくabemaTVをつけたので、開局1周年記念特番の『ロンドンハーツ』を観てみたら、モグライダーのともしげ君がドッキリにかかっていた。ライブでのおもしろさそのままにロンハーに染まっていて、すごくうれしくなってしまった。芝さんもかっこよかった。芝大輔という才能がこのままライブシーンの大将で終わっていくのは損失が大きすぎるので、早く発見されて欲しい。ナタリーに掲載されていたランジャタイ×マッハスピード剛速球の「戦略会議」で、馬鹿よ貴方の新道さんが紹介していたカズレーザーメイプル超合金)の挿話にグッときてしまった。

メイプル超合金カズレーザーが「俺らはモグライダーが売れるの待ちなんですよ」っていう名言を残してるんだよね。モグライダーの芝くんはめちゃくちゃMCできるし面白いしカッコいいし柔軟性もある。カズレーザー曰く「M-1の決勝に1回でも行ったらすぐレギュラー決まる。メイプル超合金が霞むくらいにめちゃくちゃ売れるだろう。だから今はモグライダー冠番組を持ってそれに呼ばれるのを待ってる状況」って。


最近聞いている2枚。

Pure Comedy

Pure Comedy

THIS OLD DOG

THIS OLD DOG

Mac DeMarcoは無条件で大好き。なんていい曲ばかり書くのだろう。
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スーパーミラクルいいじゃないか。あと、シャムキャッツのニューアルバムのタイトルが『FRIENDS AGAIN』なの、すっごいグッときました!夏目くんが"ちなヤク"(ちなみにヤクルトファン)と聞いて、なおいっそう贔屓にしていきたいバンドになりました。

岡田恵和『ひよっこ』5週目「乙女たち、ご安全に!」

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みね子(有村架純)が故郷の奥茨城を出て、新たに東京での生活をスタートさせる。”いや~な奴”を登場させるにはまさにうってつけのタイミングであるのだけども、やはりこの『ひよっこ』はそうはならない。みね子が働くこととなる向島電機の人々は揃いも揃って”いい人”達ばかりだ。"朝ドラ"で(現実でも)よく見かける新人いびりなんてものは描かれない。これはもうファンタジーの領域。しかし、だからと言って、「人間が、社会が描けているのか?」なんて批判は実にありきたりであるし、お門違い。『ひよっこ』の登場人物が善人である事に間違いはないが、彼等は単なる”いい人”ではない。その人物像は一面的ではなく、複雑。何気ない会話の中で描写されていく豊かな個性がまずもって心地よく、更には、その個性の奥に潜むそれぞれの”哀しみ”のようなものが浮かび上がっていく。奥茨城編で言えば、三男(泉澤祐希)の母や兄を思い出したい。三男に厳しくときには冷たく接した彼らの、その奥に秘められた真意を。そういった書き込みはこの東京編でも健在。愛子(和久井映見)の底抜けな明るさに潜む戦争の傷跡(これは峯田和伸の演じる宗男おじさんも同じだ)、豊子(藤野涼子)のガリ勉に影を差す女性差別、寝坊助な澄子(松本穂香)のその睡眠欲にさえ、農家の過酷な労働環境と孤独が顔を覗かせる。こういった彼女たちの抱える”哀しみ”に、しっかりと社会が映されている。


東京に舞台を移しても、物語の歩みは変わらずスローペース。この一週間に渡って、工場からは一歩も出ない。乙女寮での女の子たちの他愛のない"おしゃべり"でもって、物語が転げ回っていく。大袈裟な展開はないのだが、その"おしゃべり"の数々でもって、それぞれのキャラクターはどんどん多面性を宿し、愛おしき実存性を湛えていく。とりわけ素晴らしかったのが5/5(金)の回だろう。みね子の狸寝入りから始まる、人間関係の衝突。その摩擦をユーモアで塗り潰し、セオリーみたいなものをとことん回避して辿り着いてしまう温かい"愛"のようなもの。この岡田恵和の肯定の筆致!これぞ、永久保存回だ。新たなレギュラーとなった、松本穂香小島藤子八木優希藤野涼子(『クリーピー』の西野澪!)といった若手のホープ達の好演も光る。全員すっごくかわいい。


みね子らが配属されたラインで製造しているのが"トランジスタラジオ"というのがまたいいではないか。トランジスタラジオと聞くと、やはり「ベイ・エリアから/リバプールから/このアンテナが キャッチしたナンバー」(RCサクセション)と思わず口ずさみたくなってしまう。清志郎が歌うように、ラジオは、チューニングを合わせることで、どんなに遠くの出来事であろうと、届くべき人に届けてしまう魔法の装置だ。そのありようは、行方知れずの”お父さん”へ届かぬ手紙を出し続けている、みね子の”祈り”のようなものにとてもよく似ている。褒めるのがすっかり遅くなってしまったが、みね子を演じる有村架純は抜群にいい。モノローグで繰り返される”お父さん”という呼びかけを聞き過ぎたあまり、私こそが彼女のお父さんなのではないかとさえ思ってきております。というのは冗談として、有村架純はたびたび私たちに呼びかける。楽しいね、おいしいね、がんばろうね。あの野暮ったく、温かい発話。それを聞いて私たちは想う、”生きていかなくちゃね”と。視聴者とみね子は、毎日密やかな交信を行っている。



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草加健康センターという名の楽園

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東武伊勢崎線草加駅から送迎バスで約5分。埼玉県の草加市、決してハイカラな土地ではないが、駅周辺には心地良い素朴さのようなものがあるし、ちょっとしたアクセスの困難さも旅情に華を添える。肝心の施設もまた、宴会騒ぎの大広間にゲームコーナー、カラオケホール、麻雀室・・・”健康センター”という名称にふさわしい野暮ったさ、よく言えば昭和レトロな趣を携えていて、「遠いところにきたぞ」という感覚を刺激してくれる。まずもって外観からして素晴らしい。これは良いサウナがあるに違いないという確信を抱かせてくれるものがある。実際のところ、こちらのサウナは強烈。広く設計されたサウナは、ストーブと自動ロウリュウシステムが採用されたサウナストーンの2基使いで暖められている。温度計は90℃を示しているが、体感としては優に100℃を超えているように思う。すぐさま汗が気持ちよく噴き出すセッティング。通常のサウナであれば1番人気である最上段に座る人は少なく、みな一様に下段か中段に陣取っている。それくらい熱い(サウナ初心者は足裏が焼けるような気分を覚えるかもしれない)。しかし、自動ロウリュウのおかげで湿度も高く保たれていて、どこまでも気持ちがいい。尻に敷く用のマットの使い放題がありがたいし、室内のマットも従業員によって細目に交換されていて衛生面も◎。更に入口には、口に含み冷をとる為の氷がクーラーボックスいっぱいに詰められている。まさに至れり尽くせりなのである。


水風呂は露天で(外気浴スペースも充分に保たれている)、15.5℃という実に思い切りのいい冷え具合。更にバイブラでもって凄まじく攪拌しており、サウナで編み上げた熱の衣を纏わせてはくれないので、そうそう長くは浸かっていられない。熱々だった身体がすぐさまキーンと冷える。100→15の急激な熱の下がり方であるから、毛細血管が伸縮し、血液が全身にいきわたり、脳内が不思議な幸福感に包まれてしまう。この恍惚と全身の痺れるようなディープリラックスをして、サウナ界では”ととのった“と表現する。余談になるのだが、ジャズミュージシャンにして文筆家の菊地成孔が仁節発のタトゥー彫りについて語ったインタビューの中で、氏がサウナ愛好家であることを公言していた。そこで思い出されたのが、2005年に菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール名義でリリースした『野生の思考』というアルバムのライナーノーツ。公式サイトに記載されていたそのライナーの要約を引用したい。

1998年の夏に39度を超える高熱が頻発するようになり、10日以上連続したため入院する。夏バテの一種だと軽い気持ちでの検査入院だったが、解熱剤を投与しても、熱は一向に下がらず、ついに41.5度に達し全身のリンパ腺に結節が出来、膨れ上がった。病名は不明のままで、水と点滴と解熱剤で1ヶ月を過ごすと体重は60キロから34キロに。菊池は解熱剤を投与されたあと熱が急激に下がることを宗教的な昇天をイメージさせるほどの上昇感、もしくは法悦感と例え、しばらくして再び熱が上がっていく地獄のような悪寒と痙攣を舞踏病と例えている。この麻薬的な時間の中でハープとフルートの音色がずっと聴こえていたそうだ。

この文章はサウナで得られる快楽性の一端を捉えてしまっていやしないか。サウナ→水風呂という流れは、上がった熱を下げる為にあり、そこに伴う”ととのう”という感覚は大袈裟に表現するならば、“宗教的な昇天をイメージさせるほどの上昇感、もしくは法悦感”と言っていい。水風呂で冷えた身体を再びサウナで温める、下がった熱が上昇していく際に得られるのは、まさに舞踏病のような悪寒と痙攣と言っていい。もちろん、サウナのそれは地獄のようではなく、そこにさえも快感が伴う。


話が逸れてしまった。とにかく、「草加健康センター」のサウナと水風呂は素晴らしい。こちらは中村獅童のベストサウナであるらしい。中村獅童に思い入れはないが、イメージとしては遊び人、快楽の限りを尽くした男という感じであるので、そんな彼がベストと公言するだから、その”気持ちよさ”には大きな箔がついたというものである。更にこの施設には、漢方剤仙薬草湯と露天草津温泉湯という2つの目玉が用意されている。漢方剤仙薬草湯は8種類の漢方生薬を混入しているそうで、薬効なのか何なのか、身体がピリピリするほどに温まる。草津温泉から源泉有効成分を濃厚にした液状の浴剤を直送しているという露天温泉は、強烈な硫黄臭の本格派。染み付いた匂いは家まで楽しめる。どちらも「草加健康センター」に訪れたらならば二度ならず三度は浸かりたい代物だ。
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食堂兼宴会場である大広間ではカラオケ大会が開催されて、浴衣やら館内着を着たユルユルなお客さん達が次々にステージに上がっていく。ラーメンなどを啜りながら聞く素人の歌声はどういうわけか染みる。大勢の観客の前で歌うからにはみな腕自慢であって、それなりに上手。とりわけ見ず知らずのおっさんの歌う玉置浩二「メロディー」などには思わず泣かされてしまった。

あんなにも 好きだった きみがいた この町に
いまもまだ 大好きな あの歌は 聞こえてるよ
いつも やさしくて 少し さみしくて
あの頃は なにもなくて
それだって 楽しくやったよ
メロディー 泣きながら
ぼくたちは 幸せを 見つめてたよ

おっさんの歌声には彼の人生の断片が積もっていた。NHKの『ドキュメント72時間』は健康センターの宴会場にカメラを置いてみるべきだろう。大抵は大きな拍手で賞賛されるわけだけども、決して悪い歌ではないのに、何故かあまり拍手をもらえない人もいて、そういう光景を見ると、どうにもいたたまれない気持ちになってしまうので、ここぞとばかりに大きな拍手をしてしまう自分がいる。人がいいというのではなく、気が小さいのだろう。更にこの日はGWスペシャルということで、大広間にて辺見マリの歌謡ショーが無料で開催された。最近では”しくじり先生”としても話題の辺見マリであるが、1曲も持ち歌は知らない。しかし、辺見えみり顔ファンである私としてはなんだかすっかりうれしくなってしまったのでした。