エッジを失いつつあるピクサーに反比例するように良作を量産しているディズニーの最新作『ズートピア』でありますが、これがまたしても大傑作!名作揃いの『ボルト』以降のディズニー作品の中でも個人的にはベストに近いほど好きですね。なぜならこれがハードボイルド探偵活劇だからだ。動物が人間のように暮らす世界でウサギちゃんとキツネ君のコンビが大騒動を巻き起こす、というどこまでもかわいいルックの中で、チャンドラー、もしくはトマス・ピンチョン『LAヴァイス』(ポール・トーマス・アンダーソン『インヒアレント・ヴァイス』でもいいのだけど)のようなヒリヒリとした冒険が描かれる。

- 作者: レイモンド・チャンドラー,清水俊二
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ディズニー作品の活劇としての素晴らしさはもはや言及するまでもないが、今作もまた魅力的なアクションが物語を牽引していく。カースタントは勿論、西部劇さながらの列車激突までありサービス精神。とびきりに素晴らしかったのが、主人公ジュディとニックが真にわかり合っていく過程を上昇するロープウェイで魅せたシークエンスだろう。2人の屈指なさが、高い場所、尊い場所に導く。
その他もいちいち細部が充実(歌姫ガゼルはいまいち効いてなかった気がしないでもないが)しており、スタジオの大ヒット作『アナと雪の女王』の「ありのままに」を差別的に使ってみたり、キツネ君がスターバックスコーヒーを愛飲していたり、超小柄なミスター・ビッグに、スピード違反するナマケモノ、などユーモアもバッチリ。反復を多用した構成も嫌みなく決まっている。複数の脚本家で練り上げたというのが存分に感じられる、とびきりウェルメイドな世界。誰が観たって面白い、GW映画のマストチェック作品ではないでしょうか。