青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

Hi,how are you? 『MINISTOPDIARY』


カセットテープって好きだ。中学生の頃、ふと「プロデューサーになりたいなぁ」と思ったので、前の席に座っていた友人に相談してみたところ、彼が録音機能付きのラジカセを持っているというのではありませんか。ダメ元で「君の歌はとてもいいから、500円で買い取らせてくれないか」と頼んでみた。すると翌日、彼は本当にカセットテープに自分の歌を吹き込んで持ってきてくれたのです。内容はアカペラで歌われた「残酷な天使のテーゼ」で、無茶苦茶下手くそだったけど、笑えるし、何だかとてもよかったのだ。恥ずかしいので布団をかぶって録音したらしく、荒い鼻息や、家の人の気配がすると歌うのをやめたりする様が生々しく記録されていたのですね。当時、卓録という概念すら把握していない中学生には衝撃の内容でありまして、クラス中にそのカセットを回され、瞬く間に彼は時の人になりました。ぜひ2作目を、とお願いしたのだけど、「あれ(1本目)は越えられない」と生意気な事をぬかすので、それでブームは去ってしまったのですが、今思い返せば、あれが私のローファイ原体験だなぁ、という気がします。Hi,how are you?を聞くまで、この思い出をすっかり忘れていました。ありがとう、Hi,how are you?、ありがとうマツナガ君。確かあの時の500円渡してなかったよね。


Daniel Johnstonにオマージュを捧げたユニット名にイラスト。付属のzinによれば、カセットにした理由はDaniel Johnstonの真似っ子や海外インディーの流行の乗っかったわけではなく、「ばあちゃんにも聞かせたい」という全おばあちゃんっこ号泣の理由が記されております。しかし、Daniel Johnstonのポップセンスはバッチリと引き継いでいて(何でもホフディランになりたくて音楽を始めたらしい)、センチメンタルなメロディーとつぶれた音質が泣ける。つぶれて、こもった音質が泣けるのは、布団をかぶって録音された天使のテーゼを思い出してしまうからだろうか。やっぱり青春というのはノイズ混じりでなくてはね!「真冬の屋内プールの監視員」という言葉のセンスがとても好きだ。固有名詞と口語体のメロディーの乗せ方にも確かな才能を感じます。「僕の部屋においでよ」「半径5kmの生活」なんて歌っていて、所謂「四畳半のフォーク」のようなものに陥りそうな所なのだけど、部屋にいたまま空間が広がっていくような感覚があってとてもいいのだ。開けている。多分、ボーカルの原田君が色々な物を大好きだから。そういう気持ちは距離とか空間とか色々飛び越えていきますよね。やっぱり、僕は何かを好きだ、という気持ちが溢れんばかりに紡がれているものが無条件に好きなのだなー。男女デュオという所もよいですよね。

そして、素晴らしき本人達による自己紹介。

借りパクした漫画や延滞した映画、おわっちゃった夏のハーゲンダッツやイーニドがバスから見た景色をうたいます

『ゴースト・ワールド』がバイブル、もしくはバイブルだった人は全員聞くべし。カセットで聞くのがベストですが、CD-Rもついているので再生機器のない方も安心。735円で各レコード屋さんで発売中のようです。