青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

松茸への異常な愛情

f:id:hiko1985:20141126102536j:plain
松茸の美味しさをまだ理解していない。国外産の安い松茸しか食べた事がないからだろうか。実際、松茸ってどんな味だったっけ?と思い出そうとしても、浮かんでこない。実際美味いのだろうか。「庶民が無理して松茸を買って大騒ぎする」というのはファミリー漫画の定番である。『あたしンち

あたしンち (9)

あたしンち (9)

では母が「このまま松茸を食べずに死ぬ人生か」とスーパーで突然思い立ち、購入して焼いてみるも、全員(父を除く)が「あまり美味しくないな」としょんぼりする。『ちびまる子ちゃん』はアニメでは毎年のように秋になると松茸を食べたがる。今年は、秋刀魚を焼いた七輪を使ってしまった為、秋刀魚の味しかしないし、そもそも松茸じゃなくてエリンギだった、というオチだったらしい。やはり傑作なのは90年代初頭の『まる子、松茸を食べる』だろう。家族全員で松茸ご飯の登場に盛り上がるも、「あんまりおいしくない、ふりかけかけたほうがおいしいよ」というまる子の提案に、家族全員が賛同してしまうというもの。とにかく、だいたいの漫画が「松茸はたいして美味くない」というオチを用意するのだけども、それでもなお我々庶民が松茸に対して憧れを抱き続けるのは『ドラえもん』の存在が大きいと思うのだ。『ドラえもん』における松茸の美味しそうさは異常だ。てんとう虫コミックス38巻
ドラえもん (38) (てんとう虫コミックス)

ドラえもん (38) (てんとう虫コミックス)

に収録されている「箱庭で松たけ狩り」の鮮烈な印象よ。発端はご多分に漏れずスネオの自慢から。

松たけ山へいったんだ。もう、とりほうだいのたべほうだい。土びんむしやら、やき松たけ、松たけめしにすい物・・・とりたてだからさ、かおりも舌ざわりもなんともいえないんだ。腹いっぱいたべちゃった。きみたちもぜひいくといいよ。いや、高いからむりかな。アハハハアハハハ。

いや、数ある自慢の中でも、言葉のパンチ力やリズム、具体性が効いていて、非常にレベルが高い。涎を垂らして聞かざるを得ないし、のび太にしても

いつもながらあいつのじまん話は、じつに不ふかいでうらやましい

と、ちょっとしたレトリックまで使って不満を漏らす。そこで、ドラえもんにおねだりして、松茸の山ごと箱庭で作ってしまうわけです。まさに獲り放題、食べ放題。
f:id:hiko1985:20141125215543j:plain:w500
このドラえもんの表情。もしかしたら松茸ってどら焼きより美味いんじゃなかろうか、と幼心にも思いました。「これ一本いくらするんだろう?」だとか「とってもとってもきりがないわ。もうくたびれちゃった」なんて言葉も飛び出します。そして、いざ口にした時のこの感じ。
f:id:hiko1985:20141125213533j:plain:w400
f:id:hiko1985:20141125213436j:plain:w400
舌を出してのこの表情よ。「この舌ざわり」とスネオの自慢話の語彙力をさっそく真似する所もかわいいですね。しずちゃんが松茸を持って「この香り」って言ってるコマもあるのですが、児童ポルノの疑いがあるので自粛します。とにかく、『ドラえもん』の刷り込みの為、他のどの作品が美味しくないと言っても、いざ食べて美味しいと思えなくても、「松茸への憧れ」は揺るがないのであります。