青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

最近のこと(2017/07/14~)

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ジョージ・A・ロメロ、追悼。なんて綺麗な目で腐った死体を動かしていたことでしょうか。晩年の『ランド・オブ・ザ・デッド』『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』『サバイバル・オブ・ザ・デッド』の感じも好きなのだよな。何がしかのゾンビの端くれとして、ご冥福をお祈りいたします。

たとえば街がゾンビーで あふれ返っても大丈夫
ショッピングモールで暮らしましょう
平和な世界を夢見ましょう

youtu.be



最近のことを振り返ろう。先週の金曜日から。週の疲れを労おうと、帰宅するやいなや自転車に乗り込み、銭湯に出掛けた。ときわ台の「パブリバ八光」へ。ここのサウナがとても気持ちよくて愛用しているのだ。水風呂は温めだが、ボナサウナはレベルが高い。熱源がベンチ裏にあり、座っていると上から蒸気が降り注ぎ、身体を包みます。これがもう超気持ちいいのです。いかにも街の銭湯という感じですが、いつも清潔にしてあるのも好感がもてる。サウナ利用者には専用のタオルが渡され、サウナ内で敷くようにと、指示される徹底っぷりだ。あと、男湯と女湯の壁の端っこに「石鹸渡し所」という穴があって、かわいいのです。入口がギリシャ風であったり、脱衣所には街灯とベンチが設置されていたり、風呂の壁画が西洋絵画の天使だったり、各所で独特のセンスを発揮しまくっています。5個貯めると1回無料になるサウナポイントカードなるものを最近始めたのようなのだけども、渡されたカードが財布に入らないような大きさの代物で笑ってしまった。きっとポイントカードの始祖はああいう形をしていたのだろう。「パブリバ八光」を後にし、川越街道沿いにある「太麺太郎」で味噌ラーメンを食べた。
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どでかい看板を掲げるこれぞ街道のラーメン屋といったような店構えなのだけども、侮るなかれ。実にレベルの高い味噌ラーメンが食べられる。魚貝類系の濃厚な味噌スープもさることながら、モチっとした麺が美味いのです。


最寄りのセブンイレブンで「チョコミント氷」を買う。この一週間いつチェックしても売り切れていたのでうれしい。新しくバイトで入ったらしい店員さんが、”水でできているアイドル”こと3776井出ちよのにそっくりで、思わず二度見してしまった。知らない間に3776はシーズン4を迎え、静岡方面を井出ちよのが担当し、山梨方面を元Peach sugar snowの広瀬愛菜が担当する、リンクアイドルというやつに変容していた。ライブでは、2人は同時に別のステージで同じ楽曲を別のアレンジで歌い、2つのステージの中間で聞くと、新しい1つの楽曲に聞こえるのだそうだ。コーネリアスの「STAR FRUITS SURF RIDER」理論。
youtu.be
複雑怪奇だよ!むちゃくちゃライブ観たい。広瀬愛菜はPeach sugar snow時代のライブを一度だけ観たことがあるのだけど、その歌声に圧倒されたのを覚えている。「3776に山梨方面を担当するメンバーが加わった」というニュースを聞いた時に、「あのPeach sugar snowの子かしら」とすぐさま頭に浮かんだくらいである。買ってきたアイスを食べながらリアルタイムで『ハロー張りネズミ』1話を観た。うーん、これはおもしろいのだろうか。とりあえず今後に期待。やはり瑛太には痩せていて欲しいものだ。岩井秀人安藤聖の出演はうれしいが、伊藤淳史の演技がとにかくキツい。演技の良し悪しの判断なんて人それぞれでしょうけど、個人的にはありえないほどペラペラの芝居に思えたし、やはり話としてもテーマのわりに軽かった。ちなみにこき下ろされていた下赤塚の商店街、本当はとても素敵なのだ。小さい商店街に八百屋が3軒あるのがにくい。池袋はもちろん、地下鉄は東横線とも直通しているし、何と言っても駅前には「餃子の満州」があるのだ。これは3割美味い。『セシルのもくろみ』1話も観た。宇野祥平がプライムタイムに真木よう子の夫を演じているのにグッときた。来週も観るかはわからない。『陸海空 こんな時間に地球征服するなんて』の猿を主食とする部族の映像に興奮する。猿は身が締まっていて淡泊であるらしい。彼らからすると、牛や豚は不味くて食えたものではないのだそうだ。ナマケモノですら食べるというのだから驚かされる。世界は広い。観光ビジネス部族というテーマも興味深かった。学生の頃、そんなテーマで非常にレベルの低いパワーポイントプレゼンをさせられた記憶があります。


土曜日。早くに目が覚めてしまい、ひたすら掃除と洗濯をしていた。本棚を増設し、部屋の模様替えまでした。お昼に冷やし中華を食べる。以前、中華屋の店主が「冷やし中華は始める前は、まだ?という声が多いのだけど、いざ始めるとあんまり出ない」とボヤいていたのを思い出す。ないものねだりばかりの僕たち。

ねぇ、知ってる?
冷やし中華にマヨネーズかけると美味いよ

というのはどついたるねんの楽曲のリリックだが、私はそれを既に知っていた。小学生くらいの頃に、テレビで桑田佳祐に教わったのである。しかし、ネットで「桑田佳祐 冷やし中華」で検索するもそんな情報はどこにも出てこない。記憶違いの可能性もあるのだけど、あの時熱弁していたのは確かに桑田佳祐だったはずだ。誰か覚えている人はいないだろうか。土9で『透明人間』が放送している頃だったはずなので、「愛の言霊 〜Spiritual Message〜」リリースに伴うテレビ出演だろうか。なんなら、サザンなので原由子もいるからして、「桑田家の冷やし中華」として語られていたような気がしないでもない。1つ覚えているのは母が「桑田さんは誰でも選び放題という状況で原由子を選んだのが偉いわね」と言っていたことで、原由子に失礼な話であるが、そういう母の物言いにかなり影響を受けてしまっているような気がする。ちなみに私のマイベストサザンは「LOVE AFFAIR〜秘密のデート」です。


3連休の始まりなのだけども、特に予定もなし。乃木坂46のライブDVDをずっと観ていたら、乃木坂熱が再び高まった。乃木坂46のライブDVDをめちゃくちゃレベルが高くて、繰り返しの鑑賞に耐えうるのです。先日発売された4年目のBirthdayライブDVDも購入しようと思います。しかし、初期は本当にカップリングにいい曲が多い。アルバムに未収録かつさして人気のない「海流の島よ」「サイコキネシスの可能性」「やさしさとは」あたりですら良曲。中期ですと、断トツで「吐息のメソッド」である。


プロ野球オールスターゲームは2日間ありながら、ヤクルトからはライアン小川が監督推薦で出場したのみ。しかも1イニング投げて、しっかりホームランを打たれていた。辛い。もう1軍はさておき、新人のフレッシュオールスターで、ヤクルトの期待の星である高橋奎二が躍動していたことを喜ぼう。
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左のライアンこと高橋、来シーズン(もしくは今年の9月あたり)には1軍で投げ出すと思いますので、ぜひとも覚えておいてください。この日放送していた『音楽の日』をダラーっと観続けてしまった。全部観たわけではないけども、SEKAI NO OWARI「RAIN」とAKB「恋するフォーチュンクッキー」の生演奏バージョン」、欅坂46三浦大知、KICK THE CAN KREWあたりがとてもよかった。あと、TOKIO「クモ」はやっぱり良い。長瀬智也の作曲能力とボーカリゼイションがJ-ROCKバンドの中でトップレベルにあるのは紛れもない事実だ。尾崎豊の息子に続いて、山口百恵の息子が「秋桜」などを歌っているのにビックリした。またこれがカラオケみたいで全然良くないのだ。シンプルな親の七光り。三浦貴大は好きなので、複雑な気持ち。『音楽の日』は中居くんと安住さんという1人いれば充分な力量のMCが2人体制でいるのがとても豪華だ。AKBが7年かかった東京ドームでのライブを6年で達成、と振られて謙遜するしかない乃木坂との絡みの中で、「俺(SMAP)は5年目」とやったのには痺れた。しかし、やっぱりSMAPがいないと音楽特番が締まらないなぁと思ってしまう。この日の『ゴッドタン』にランジャタイが出演。正直全然ピンと来なかった。ゆにばーすの川瀬名人が平場でもめちゃくちゃ面白くて、早く売れて欲しいと思いました。



日曜日。ひさしぶりに「さやの湯処」へ。連休中日ということで信じがたい混み方だったが、水風呂はしっかりと17℃あたりをキープしていて、シャッキリ冷える。塩素臭バリバリの水風呂だが、これだけ人が多いので仕方ないだろうし、夏場に限ってはこの塩素臭も悪くない。夏休みの記憶をくすぐられます。サウナも混んでいるわりにまずまずのコンディションだった。「さやの湯処」ではサウナ→水風呂→外気浴からの寝湯なんてコースもオススメである。濃度の高い温泉に塩サウナもなかなか良くて、施設としてとにかく充実している。飯もそれなりに美味いのだけど、私はいつもほど近い「吉祥軒」で食べる。
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海老炒飯と豚肉とニンニクの芽の炒め物。呆れるほど美味い。多分何を喰っても美味いので、麺類にも挑戦したいのだけど、ここの炒飯の魅力にはそうそう抗えるものではない。お米に旨味が見事に閉じ込められていて、冷めても美味しい。この店には私が敬愛の気持ちを込めて“水ババア“と呼んでいる店員がいる。少しでもグラスの嵩を減らそうものなら、間髪を入れずに水を注ぎにきてくれるのだ。店が暇な時などは席の後ろに張り付くようにして、水を注ぐチャンスを窺がっている。彼女を見ていると、cero

砂漠に閉ざされていても大丈夫

というリリックを思い出すのです。水ババアがああも躍起になって潤そうとしている現代社会の”渇き”とは?などということを考えながら、帰宅。暇だったので、『怪盗グルーの月泥棒』と『ミニオンズ』を観た。

怪盗グルーの月泥棒 [DVD]

怪盗グルーの月泥棒 [DVD]

ミニオンってここ10年のポップカルチャーが生み出した最良のものでは、と思っています。「怪盗グルー」シリーズは脚本もとにかくウェルメイドで、かつ優れた活劇でありますから、未見の方は新作『怪盗グルー ミニオン大脱走』の公開のおりにぜひ復習下さい。明日も休みなので、リアルタイムで『乃木坂工事中』と『欅って、書けない?』を観る。私服姿の乃木坂に目が焼け死んだ。日村さんの神宮ライブ極秘潜入でのダンスパフォーマンスは、完全に”めちゃイケ”オマージュの予感。来週が楽しみ。



月曜日。昼まで寝てしまう。この日もバカみたいに暑い。ちょうど近所の人気のパン屋の開店時間だったので、買いに出かけた。あんぱん、メロンパン、コロッケパン、カレーパン、クリームパンというTHE定番品を購入。当然とてもじゃないけど食べきれないので、余った分は冷凍するのです。

エビクラシー

エビクラシー

私立恵比寿中学の『エビクラシ―』を今更ながら聞きました。サウンドの統一感はないが、どこか楽曲のフィーリングはまとまっている、気がしないでもない。「制服"報連相″ファンク」というハロプロオマージュ曲があった。中山莉子ちゃんかっこいい。小林歌穂ちゃんの歌声が大好きなのですが「感情列車」はMVも含め、本当に素晴らしいと思う。
youtu.be
安本さんが安本さんのままに美人になっているの、ほんと泣けるなぁ。Huluで小津安二郎『お早よう』を久しぶりに観た。いやー凄い。むちゃくちゃクールなコメディで、痺れてしまったな。勇ちゃん役の子役が最高。そして、佐田啓二中井貴一のお父さん)の信じられない格好良さ。斎藤工もこの作品が好きで、何度も繰り返し観ているらしい。『昼顔』の北野先生が好きで、斎藤工を見かけると、ついつい反応してしまう。スーパーと100円ショップに買い出し。夜ご飯はキーマカレーノンアルコールビールを、ナイターを眺めながら。家で食べるキーマカレーがむちゃくちゃ美味しくて感激した。ヤクルトの2年目原樹理は本当に素晴らしいピッチャーに成長したが、今日も勝ち星つかず。どうか腐らない欲しい。
ラヴァーズ・キス (小学館文庫)

ラヴァーズ・キス (小学館文庫)

唐突に、吉田秋生ラヴァーズ・キス』を読みながら眠った。



火曜日。連休明けの仕事辛し。しかし、4日働けば、また休み!の精神で頑張った。15時頃、天気が急変して、竜巻が巻き起こり、空から大粒の雹が大量に振ってきた。凄まじい音で窓に打ち付けられる氷の粒。外を眺めると、車道は混乱に陥り、全て停車していた。『デイ・アフター・トゥモロー』を地でいくようなSF的光景であった。ちょっと忘れ難い。帰り道は夏だというのに地面は氷だらけ、そして木の葉まみれであった。タワレコ欅坂46『真っ白なものは汚したくなる』と口ロロ『LOVE』を購入する。

真っ白なものは汚したくなる (Type-A)(DVD付)

真っ白なものは汚したくなる (Type-A)(DVD付)

LOVE

LOVE

欅坂46のアルバムはこれがグループのピークでないならば凄いことである、というような素晴らしい出来栄え。日曜日の野外ライブ、むちゃくちゃ楽しみだ。口ロロはまだほとんど聞けていないのだけども、いとうせいこうが活躍している感じ。口ロロの音源、なんだかんだで全部購入していることに気づいて驚いた。
hiko1985.hatenablog.com
Mr. Children×docomo25周年企画の動画のフルバージョンを観て、泣く。高橋一生は素晴らしいよな、ほんとに。黒木華も凄いよい。ミスチルの「君がいた夏」が頭から離れません。最後に流れる知らない曲は未発表のデモであるらしい。ヤクルトは今日も負け。星が1失点の好投を見せるも見殺し。中澤とギルメットのリリーフも良かった。もはや負けても何とも思わなくなってきたが、12連敗で7月は未だに勝ち星なしです。



水曜日。ショルダー肩美の漫画で爆笑した。
omocoro.jp
鉄拳チンミ』の猿を引用してきたのむこう2年は笑える。仕事帰りに新居に引っ越した実家へ寄る。母の誕生日が近かったので、好物のスイカを1玉買ってプレゼントした。母がスイカを好きという印象は20年くらい前のもので、今も好きなのかは定かではない。新居はとてもいい環境であるように思えた。あそこが両親の終の棲家になるわけだ。何となく”終の棲家“という言葉を使ってみたかっただけで、特にどういう感情も巻き起こっていません。ヤクルトは怒涛の13連敗。これでさすがに世間でも話題になるかな、と思いきやいつだってジャイアンツが話題を持っていく。この日は悲しい訃報が2つもあった。まず、映画監督の堀禎一。先週、ポレポレ東中野の特集上映でその姿をお見かけしたばかりなのに・・・新作『夏の娘たち~ひめごと~』の公開で、ついぞその名が大々的に広まっていく機運を感じるさ最中であったのに。その数時間後には京都のバンド本日休演のボーカル/鍵盤の埜口くんの訃報。謹んでお悔やみ申し上げます。評論家である佐々木敦の「誰かが急に亡くなった時のツイッターの反応が大嫌いだ。」というTwitterでのつぶやきがRTされてきて、はてなマークが頭の中にうごめいた。誰かが突然亡くなってしまった行き場のない哀しみをTwitterに垂れ流すことは悪いことなのだろうか。「大嫌いだ」なんて強い言葉を向けるべき対象は他にもっとたくさんあるだろ、と。佐々木敦は「誰かが死んだことについては絶対に書かないようにしている。知っている人ならば尚更だ。」とも呟いているのだけど、そこにどんな美学が隠されているのかはよくわからない。評論家とは違い、Twitterにしか言葉を放れない人だっている。



木曜日。珍しくスパっと気持ちよく起きることができた。The Flaming Lips『Clouds Taste Metallic』を久しぶりに聞く。これは人生の1枚である。PAVEMENTのヨレヨレを志向するバンドは多いが、この頃のThe Flaming Lipsのドタバタなメロウネスも誰か復権して欲しい。
youtu.be
『真っ白なものは汚したくなる』をじっくり聞きたくて、ウォーキングで帰ったら、あまりの蒸し暑さでヘトヘトに。途中コンビニで富士急のライブチケットを発券するも、残念ながらステージから通そうな席だった。久しぶりに風呂にお湯を貯めて、ミントのバブを放り投げて長湯した。長嶋有の『問いのない答え』を興奮でのぼせそうになりながら読む。有田哲平主演の『わにとかげぎす』の1話、結構おもしろい。

田中嗣久×高橋一生 NTTドコモ25周年CM『いつか、あたりまえになることを。』

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高橋一生は本当に素晴らしい。NTTドコモMr.Childrenが25周年を迎えることを記念して制作されたCM『いつか、あたりまえになることを。』を貴方はご覧になっただろうか。いや、よくあるタイプの作品なのだ。『ニューシネマパラダイス』的手法で”眼差し”をダイジェスト化して泣かせにかかり、「何気ない毎日こそが、奇跡の積み重ねなのです」というようなことを家族の愛でまとめあげる。ややもすれば「けっ、古臭い」と一蹴されかねない代物なのですが、これがどうにも目が離せない。いや、それどころかまんまと泣かされてしまうのです。カメラワーク、音楽、美術、衣装・・・様々な細部が振動し作品を高め合っているし、黒木華と清原果耶の2人の女優の存在感も素晴らしい。だがやはりその最大の貢献者は高橋一生であろう。


高橋一生の芝居は、「役者が演じている」という当たり前の事象を観る者の頭から吹き飛ばしてしまう。演じるキャラクターそのものとして画面の中にスッと収まっている。このCMで高橋一生が扮するのは、時代の片隅に埋もれる名も無き平凡な男だ。癖の強いキャラクターを見事に演じ分ける高橋一生だが、こういった”なんでもない”匿名の市民こそ、彼の演技メソッドが最大限に発揮される役柄なのではという気がする。僅か4分の映像の中で矢継ぎ早に流れる断片的エピソードでもって、1人の男の人生の奥行きのようなものまで体現してしまっている。そこには嘘らしさは微塵もなく、“人が生きている”という確かな質感だけがある。その質感には”奇跡”というような言葉をヒュッと飛び越える強度があり、故に、このCMは我々の涙腺を激しく刺激するのだろう。


この『25年前の夏』という作品の監督を務めたのは田中嗣久。九州新幹線開通のCM、カロリーメイト『夢の背中』など、そのワークスはどれも印象的なものばかり。あの高橋一生×長澤まさみによるdtvのCM『ふたりをつなぐ物語』も田中嗣久の監督作だ。あの作品もまた、「洗濯物を畳む高橋一生」に代表されるように、”市井の人”としての高橋一生の日常の所作が、地球と宇宙ステーションというSF的な距離を飛び越えていく物語であった。


少しばかり『いつか、あたりまえになることを。』の細部に目を向けてみるならば、やはり90年代の東京の街の風俗描写が目をつく。ポケベル、カラオケボックスの歌本、コンポーネントオーディオ、バスケットシューズプレイステーション、たまごっち、Windows 95、あすなろ抱きetc・・・あの時代を生きてきた者はノスタルジーの沼にハマってしまうこと必至。
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とりわけ秀逸なのは、ネルシャツにダウンベスト、TシャツとロンTの重ね着、半袖シャツにロンT、ウォレットチェーンといったスタイリングの数々。それらを身に纏った高橋一生の佇まいの説得力はどうだ。コスプレ然とした印象はまったくなく、確かにあの時代を”生きている”人なのだ。そして、その時代を代表するドコモの携帯機種がさりげなく映し出され、それらの機能・形態が徐々に進化していく様子が窺える。そこに「悪い、待った?/遅いっ」という高橋一生黒木華演じるカップルのお決まりのやりとりが合いまり、輝かしい未来は少し遅れて、(しかし必ず)やってくるのだ、というような希望のフィーリングを、観る者に与えるのである。
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大根仁『ハロー張りネズミ』1話

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まあ、調査費用はふっかけられるかもしれませんが
何せドブネズミのような連中ですから

片桐(矢島健一)の“ドブネズミのような連中”という言葉に導かれて、スナックのカラオケでTHE BLUE HEATSの「リンダリンダ」が流れる。

ドブネズミみたいに美しくなりたい
写真には写らない 美しさがあるから

このシーンにおける五郎(瑛太)は、「身体性は甲本ヒロトを模しているにも関わらず、節回しは長渕剛」という非常に器用なモノマネを披露している。この理解できる人もそう多くないであろう空滑りしたギャグは、実のところ『ハロー張りネズミ』というドラマのフィーリングを象徴している。この”モノマネ”と甲本ヒロト長渕剛が混ざり合った”2人で1つ”という感覚は、1話そのものだ。川田(伊藤淳史)からの「”死んだ娘は生きている”という瀕死の妻についた嘘を本当にする為に、娘に似た少女を見つけてきて欲しい」という依頼を受け、五郎とグレ(森田剛)は紆余曲折の果てに、”遥”という孤児を見つけ出し、死んだ娘のモノマネをさせる。そのモノマネの果てに、疑似の親子関係が混濁していき、本物の家族に変容してしまう。ここでは、子役の三本采香が1人2役でもって、遥と死んだ娘を演じ分けている。そして、この”2人で1つ”という感覚は、五郎とグレという2人の探偵バディものである『ハロー張りネズミ』の開始宣言にもなっていると言えよう。


疑似親子から本物への変容を支えるのは、焼酎をベースとしていないチューハイを例に出した

でもいいんじゃん、代わりだって
酔えるし、おいしいもん

という所長(山口智子)の台詞だ。同じくTBSの『逃げるは恥だが役に立つ』や『カルテット』などが打ち出した現代的テーマへの目配せとも言えなくはないが、「代わりでもいい、偽物でもいい」という感覚が、見事にドラマに落とし込められている。瑛太が吸う煙草が”電子タバコ”であるのも見逃せないだろう。


山手線に乗って、池袋で東武東上線の各駅停車に乗り換えてください
8つ目の「下赤塚」という駅を降りると
23区内とは思えない古くさい商店街があります
その外れにある探偵事務所ならば、
あなたの依頼を受けてくれるかもしれませんよ

本作の舞台は、”23区内とは思えない古くさい商店街”と評される板橋区下赤塚の商店街。つまり『ハロー張りネズミ』が描くのは、時代から忘れ去られようとしているものなのだろう。THE BLUE HEATS、長渕剛、『あぶない刑事』だの『ねるとん紅鯨団』だのを無邪気に引用してみせながら、昭和の探偵ドラマのフィーリングを蘇らせようとしている。それは「リンダリンダ」が言うところの”ドブネズミのような写真には写らない美しさ”であって、劇中の五郎の言葉を借りるのであれば、”人情とお節介”というやつなのだろう。これまで大根仁テレビ東京の深夜枠で手掛けてきた『まほろ駅前番外地』(2013)にしろ、『リバースエッジ 大川端探偵社』(2014)にしろ、同様の気概を感じたし、監督した劇場公開作『SCOOP!』(2016)も原田眞人『盗写 1/250秒』(1985)のリメイク。昭和のエンターテインメントのエネルギーを現代に召喚してみせるといういうのが、大根仁のライフワークなのだろうか。そういう意味では山口智子のトレンディな演技もハマっているし、どう考えても演技レベルが大根作品の求めるそれに達していないように感じる伊藤淳史のキャスティングも『とんねるずのみなさんのおかげです』のチビノリダーの記憶を求めてか。ちなみに、1991年に公開された映画版『ハロー張りネズミ』は未見なのだけど、五郎役は山口智子の夫である唐沢寿明が演じていたらしい。



まほろ駅前番外地』での瑛太/松田龍平の長身コンビが素晴らしかったのは言わずもがなだが、瑛太/森田剛の凸凹感もルックとして面白い。しかし、瑛太森田剛で探偵バディモノを大根仁が撮る、ということで今期最も期待している連続テレビドラマだったのだが、この1話の段階では、まだ面白味を掴み切れていないでいる。キャラクターが生きている感じがしないし、1話完結でやるには題材がエモーショナル過ぎて、尺の関係で内容がややペラペラに感じてしまった。マドンナ役の深田恭子登場で2話以降がどう変わっていくかに期待です。ところで、依頼が入ると、所長が床を3回ドンドンドンと叩き、階下のスナックにいる五郎とグレが登ってくるという設定、おもしろいのだけども、”ネズミ”というモチーフを考えたら、スナックが事務所の上にあったほうがハマったような。



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最近のこと(2017/07/08~)

youtu.be
応援しているヤクルトスワローズがもうあまりにも弱くて、不機嫌極まりない毎日を過ごしております。そんな中、Lampだけが心の清涼剤で、最近はもっぱら『ランプ幻想』と『東京ユートピア通信』を愛聴している。

ランプ幻想

ランプ幻想

東京ユウトピア通信

東京ユウトピア通信

あの複雑な美しさだけが精神をなだめてくれるのです。



楽天市場はてなが運営している『それどこ』というサイトに、懐かしのテレビドラマについてのエントリーを寄稿させて頂きました。内容はズバリ「土9ジャニーズミステリー」についてです。お時間ありましたら、ぜひ。
srdk.rakuten.jp
胡散臭い話ですが、この記事は『未満都市 ぼくらの勇気』の新作放映が決まったら書いたのではなく、執筆中に新作放映が決定したのです。なんたる運命的タイミング。少し待てば、huluで観られたわけですが、海外の動画サイトにて中国語字幕つきで観て書いた、というがんばりだけ評価してください。



最近のことです。先週の土曜日。予定があったのに少し寝坊してしまって、慌ただしく家を出た。外はすでに30℃を超えている。心の準備ができていなかったが、もう夏なのだ。朝食代わりにセブンイレブンのアイスコーヒーを飲んだ。

アイスコーヒー発明したやつにノーベル賞やりたいねぇ

というのはさくらももこの漫画の台詞だっけ?と思いきや、岡崎京子の「夏の思い出」という短編だった。アイスコーヒーは日本発祥、というのを何かで読んだ気がする。ノーベルやんちゃde賞(©スチャダラパー)あげちゃいましょう。どんなに暑い夏でもホットコーヒーを飲んでいる人やかけそばを食べている人を見かけると、ただそれだけのことなのに、人間としての位の高さのようなものを感じる。生命の危機を省みないこだわりの貫き方なものに畏敬の念を抱いてしまうのか。しかし、そもそも冷たいもののほうが身体に悪いらしい。「冷房苦手で・・・」という人もまた、少し上の領域にいるような気がする。であるから、弱冷房車などはもう場としての徳が高すぎて、わたしくめなどには足を踏み入れられないほどです。しかし、仮に強冷房車が設置されたとしても、わざわざその車両を選んで乗ったりはしないだろう。暑がりでありながら、それなりに寒がりでもあるのだ。特に最近は肩が冷えてしまって、職場で冷房がきつい日は肩にカーディガンをひっかけて仕事をしている。おそらく、陰では「敏腕プロデューサー」とか「いしだ壱成の父」とか「トレンディドラマの申し子」など呼ばれていることでしょう。全部褒め言葉なので、悪い気はしないな。すっかり忘れていたけども、カーディガンを肩に巻くというスタイル、何年か前にリバイバルヒットしていた。街の若者はこぞって巻き、果てには「袖の捻じり方で差をつけよう」みたいな中尾彬な領域に達していたけども、流行りはわずか1年で廃れてしまったのでした。


HAPPLE『ハミングのふる夜』リリースパーティライブを観るため、灼熱の渋谷へ。会場である7thFLOORは入口からもう冷房がキンキンに効いていて、気も効いているな、と思った。HAPPLEもザ・なつやすみバンドも久しぶりにライブを観るので、とても楽しみにしていたのだけども、想像以上にグッときてしまった。ニューアルバム完成の充実が迸るHAPPLEのライブ涙もの。溢れるソウルとハーモニー。『ハミングのふる夜』は、「predawn」や「手紙」といったライブでお馴染みの名曲が格になるのかと思いきや、いい意味でアルバムのピースに収まっていて、驚いてしまう。個人的なイチ押しは鍵盤の斎藤さんがリードボーカルをとる「Talk To Sea」と、ラストを飾る「ファンファーレ」「主題」の2曲。土岐さんのMCは相変わらず抜群だ。何度も書いていますが、土岐さんのおどけているのだけど、どこか物哀しい感じが私は本当に好きだ。あと、前から思っていたのですけど、サポートの和田大樹さんは本当に天才肌のミュージシャンですよね。音色のデパートだ。新編成のザ・なつやすみバンドの演奏もとっても素晴らしかった。「ファンタジア」のメロウなニューアレンジもナイスだったし、コーラスワークもより研ぎ澄まされていた。そして、みずきちゃんのドラム!「S.S.W(スーパーサマーウィークエンダー)」でのタイトなプレイなんかもう大興奮でした。すごく久しぶりだったので、あれも聞きたい、これも聞きたい、という気持ちになったので、次のワンマンライブには足を運びたい。


ライブ後に、紀尾井町に移動して「エリックサウス」でエリックミールスを食べた。あと、スパイシーなソーセージ。
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ビリヤニへの欲求をグッとこらえる。なんせエリックミールスはバスマティライスがおかわり自由なのです。インドの高級米バスマティライスはしみじみ美味いぞ。インドカレーにはナン、という固定概念から卒業できる。『ゆとりですがなにか』でもありましたが、中国人は焼き餃子食わないし、インド人はカレーは米で食う。これが真実なのだ。でも、中国人の知り合いは「日本の焼き餃子はまじで美味い」って言っていました。帰宅して、シャワー浴びて、プロ野球中継でヤクルトの大敗を見届ける。36歳のベテラン左腕石川が降板してベンチで涙を流していた。ヤクルトスワローズ石川雅之というところがあるので、観ていて胸が痛い。まもなく『ハロー張りネズミ』の放送が開始するので、瑛太熱を加速させるべく『最高の離婚』と『それでも、生きてゆく』を乱れ観て、胸がいっぱいに。最近の瑛太の顔がパンパンなの気になる。鶴瓶の番組で「顔の肉が落ちにくくなった」と言っていたけども、あれは役作りじゃないのか。『64』の時とか、むちゃくちゃシャープだったのに。鶴瓶のあの番組、数回しか観てないけど、いつも鶴瓶が「こいつむちゃくちゃええ奴やねん」「おれ、こいつむっちゃ好きや」「こいつおもろいやつやでぇ」と言っている気がする。何と言うか、鶴瓶に”ええ奴”と思ってもらわないといけない、この世界の窮屈さのようなものを感じてしまう。私は絶対に鶴瓶に気に入ってもらえない人間だ。みんな気づいてないかもしれないけど、"鶴瓶に気に入ってもらえない"ということはこの世界における死なのだ。



日曜日。ちょっと早起きてして、近所の銭湯で朝風呂&朝サウナ。陽光差し込む浴槽で身体を温めるその行為の甘美さたるや。たらこスパゲッティくらい好きだ。家に戻り、すっかりととのった身体と精神を横たえながら、クーラーの効いた部屋で『タッチ』を読む。これぞ至福なり。続きの巻を取りに行くのが面倒くさくなり、そのまま夢見心地に少しまどろむ。目が覚め、スティーヴィ―・ワンダー『Songs in the Key of Life』

Songs in the Key of Life

Songs in the Key of Life

を大音量で聞きながらウットリと部屋の掃除をして、電車で高田馬場へ。ランチにまっことひさしぶりにとんかつを食べる。「ポップカルチャーととんかつ」をキャッチとしたブログを書いているにも関わらず、最近はとんかつを全然食べられていない。これはもうシンプルに胃腸の衰退と言っていいでしょう。でも、「ポップカルチャーととんかつ」はおさまりがいいので変えたくない。日曜日は「とん太」も「成蔵」もお休みなので、「いちよし」を訪ねた。数年前にオープンして、リーズナブルな価格帯で人気を博しているとんかつ屋だ。ロースかつ定食680円、ヒレカツ定食880円なり。
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価格帯や店の佇まいからして、御徒町の人気店「山家」の系列なのでしょうか。リーズナブルなわりにしっかり美味い。塩なんかで気取って食べずに(そもそも置いていない)、ソースをダバダバかけて辛子をベッタリ塗って食らい、米をワシワシとかき込もう。腹ごなしにくそ暑い中を早稲田大学まで歩く。キャンパスに足を踏み入れるのは久しぶりで少しテンションが上がってしまった。構内にある演劇博物館で『テレビの見る夢 − 大テレビドラマ博覧会』と『山田太一展』の展示を観た。入場無料とは思えぬ充実。楽しかったなー。『ロングバケーション』や『男女7人夏物語』の映像に釘付けに。大竹しのぶ前田敦子が似ているということ、みんなもっと騒いで欲しい。ぼくのりりっくのぼうよみ与沢翼も似ている気がするが、それは別に騒がなくていい。しっかし、山田太一先生の原稿、むちゃくちゃ興奮したな。会場に『岸辺のアルバム』と『早春スケッチブック』がマッシュアップで流れていて、至高空間でした。『ふぞろいの林檎たちⅡ』のティザーポスターがクールで、部屋に飾りたいと思った。


帰宅して、またしてもこりずに野球中継。昨夜の石川の涙効果なのか、ヤクルトの選手は全員気合が入っていた。特に坂口と藤井のガッツ!それでもあと一歩及ばず延長引き分け。最下位は受け入れたので、後半戦は廣岡、奥村、渡邊といった若手野手をガシガシ起用して欲しい。そして、原樹理や星といった若手ピッチャーは大切に使って欲しい。中5日で無理して回すようなチーム状況じゃない。もはや今季は、寺島が2軍のブルペンで147キロ出した、とかそういった小さい情報に喜びを見出している。Twitterで岸政彦が「文芸誌で保坂和志一派扱いされて批判された、保坂和志なんて読んだこともないし名前も知らないかった」というような感じでキレていたのだけども、文芸誌にされたこと以上に、保坂和志に失礼なことをしてないか、と釈然としなかった。お疲れなのかもしれない。18枚目シングルの選抜発表が気になるので、夜更かしして『乃木坂工事中』をリアルタイムで。スタジオでやる時点でそうなのだろうとは思ったが、大園さん・与田さんの3期生Wセンターという新しい布陣。過去の乃木坂46のシングルで、Wセンターが功を奏したことがあっただろうか。どうせなら思い切って1人にセンター背負わせて欲しかった。そして、別に応援しているわけではないのだけども、ここで寺田蘭世さんが選抜から外れたのは2期生にとってほんとしんどいことなのでは。個人的には伊藤・井上がなんとか先発に入っていたので、とりあえず良かったです。



月曜日。1日中眠いし、外に出ているとそれだけで気持ち悪くなる気候。帰り道に「王将」で餃子定食を食べた。隣のサラリーマンが店員さんの「他にご注文はよろしかったでしょうか?」とか「以上でご注文お揃いでしょうか?」といったマニュアル通りの接客に「ないから、そう注文したんだ!」とか「これで全部だよ!」と終始声を荒げていた。というのも、彼の注文は餃子1人目オンリー。それが後ろめたくて、ずっとイラついていたようだ。それを後ろめたく思うなら、はなからよせばいいのに。どうしても1皿だけ食べて帰りたい気分だったなら、「いやー1皿だけなんだけどいいかな?」と底抜けに明るく振る舞えるべきだろう。それができないのであれば、冷凍食品の餃子を家で焼くべきなのだ。それとも家で餃子を食べると母ちゃんに怒られるのかな。帰宅して、宮藤官九郎脚本のスペシャルドラマ『ゆとりですがなにか 純米吟醸純情編』を2週分まとめて観る。それなりにおもしろいのだけども、どうしてもこのドラマをそこまで特別に思えないでいる。役者の演技の質も、個人的な趣向からはかなり外れる。過剰もしくは物足りない。太賀が大々的に発見された、というのがこのドラマ最大の功績だと思っている。



火曜日。ポレポレ東中野堀禎一の『憐 Ren』を観に行こうと決めていたのだけども、残業で間に合わず。仕方ないので近所のシネコンのレイトショーで『メアリと魔女の花』を観ることに。上映までちょっと時間があったので、サブウェイでサンドウィッチを食べて、長嶋有『問いのない答え』を読み進めた。

問いのない答え (文春文庫)

問いのない答え (文春文庫)

すごくおもしろい。『メアリと魔女の花』は残念ながらおもしろくなかった。なんでだ、と思う箇所はありすぎて、口を噤んでしまう。『借りぐらしのアリエッティ』でもやっていた、主人公が髪を結う演出はいいな、と思った。宮崎駿がラストにもう1本作ってくれるのまじでありがてぇ。エンディングで流れるSEKAI NO OWARIの新曲「RAIN」がすっごくよかった。
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バンドの持つメロディの強度が戻ってきている。作曲のクレジットはメンバーが3人が記されていたので、もうむちゃくちゃ気合い入れて作ったのだろうな。

ファフロツキーズの夢を見て起きた

というような歌詞のハッタリのきかせかたもいい。ストリングスアレンジは小林武史が担当しているらしい。もう1回聞きたい!と思って、グーグルで検索したら、SEKAI NO OWARIって入れると、候補に「レイン」のみならず「ライン」と出てくるのだけども、小さな子らが頑張ってローマ字読みで検索したのだろうか。そうだよな、RAINを普通に読んだら「ライン」だよな。



水曜日。まっこと暑い。もうすぐ学生は夏休みなのだろうか。

ちびまる子ちゃん』1巻の記念すべき1話が、1学期終わり(=夏休みの始まり)に大量の荷物を持って下校する描写から始まるの、改めて素晴らしい感性だと思う。あの漫画のおかげで、朝顔とか道具箱持って帰るの本当に億劫だったこと、そんな今にも忘れてしまいそうな小さな出来事を今でもありありと思い出せる。仕事後、ポレポレ東中野で『魔法少女を忘れない』を観た。
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実に6年ぶりの鑑賞だったが、やはり凄く良い映画だと感じた。みんなから忘れられていく元・魔法少女の名が劇中で執拗に呼ばれるのだけども、その名が「未来」というのがいい。映画館を出たら、ヤクルトがシーズン二度目の(しかも前半戦だけで)10連敗という大記録を達成していた。奥村と上田が活躍しているのが救い。「富士そば」で冷やしキツネ蕎麦をすすり、帰宅。『タッチ』全26巻を久しぶりに読み終えて、フルフルと感動に震えた。終盤の須見工の試合の素晴らしさ、そして、その後の完全に山場を終えてしまった物語のチルアウト感。ライバル新田と西村も充実したキャラクターであるし、ヤクザ監督・柏葉英二郎の挿話も最高。浅倉南を好きというと童貞扱いされるし、あだち充ファンほど『タッチ』を過小評価するきらいがあるが、やはり大傑作だと思いました。南ちゃんは確かになかなかひどい女ですが、ユーモアのセンスがあるのがいいですよね。
youtu.be
ceroの高城さんがTwitterで呟いていたカート・ローゼンウィンケルの楽曲が素晴らしかったので、思わず今年出たニューアルバムを購入した。
Caipi

Caipi



木曜日。仕事帰りにサウナに行こうと策略するも挫折。やる気が出ない一日であった。カレーが食べたい。溜まっていた録画少しずつ観始める。『ひよっこ』は優子さんが結婚するわ、みね子に彼氏できるわで、長く視聴している分、娘が嫁に行くような気分です。優子さんと結婚したやつ、まっじでどこの馬の骨じゃ。画面にも出てこないとは失礼な!日テレの『過保護のカホコ』(脚本は遊川和彦)が結構おもしろかった。高畑充希時任三郎黒木瞳が良いです。とりわけ、漫画のようなキャラクターのカホコを演じる、大きな黒目の高畑充希がハマっている。ああいうキャラクターを嫌味なく演じられるのは凄い。期待していたTBSの『ごめん、愛してる』は冒頭10分でタルくなってしまい、停止中。画がださい。ヤクザとかチンピラじゃない長瀬智也が観たい。『フリースタイルダンジョン』の晋平太のダンジョン攻略、感動しました。観始めたら、いきなり攻略されて、モンスターも解散するらしい。いきなり、クライマックスみたいなところから観初めてしまったようだ。満島ひかりがゲストの『旅猿』の1週目も観ました。落ち着きがない満島ひかりがとびきりかわいかった。

坂元裕二『往復書簡 初恋と不倫』

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男女がキスをしている後ろで車が燃えている写真を見たんです。ラブストーリーでも男女だけで成立するわけじゃない。社会で起きている色んなことが作用するし、逆に男女の間で起きていることが社会にも作用している。

これは、是枝裕和との対談(『世界といまを考える 1』に収録)において坂元裕二が語った言葉だ。なるほど、近年の坂元裕二のテレビドラマは、ややもすれば社会派と呼ばれるような題材を常に取り入れている。『わたしたちの教科書』ではイジメ、『Mother』では幼児虐待、『それでも、生きてゆく』では少年犯罪、『最高の離婚』では離婚率の上昇、『Woman』では生活保護・冤罪、『問題のあるレストラン』では女性差別、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』では若年層の貧困・震災・・・作品によっては物語のバランスを崩すほどに過剰な負の描写に注力することもある。

ネロはお父さんもお母さんもいなくて、いじめられたり、だまされたりして、最後には死んじゃうのよ。犬も一緒に。何のためにこんな悲しいお話があるの?


それでも、生きてゆく

フランダースの犬』を読んだ少女の身体を借りて、坂元裕二は自身に問いかけている。何のためにこんな悲しいお話があるの?何のために書くの?坂元裕二がこの度献上した書籍『往復書簡 初恋と不倫』は、そんな自己言及への回答のような作品であるように思える。手紙やメールのやりとりだけで構成された物語。テーマは初恋と不倫。そういったトピックから連想されるようなトレンディでロマンチックな物語、はここにはなく、やはり世界の抱える”痛み”が描かれる。金槌を手にした少年の淡い初恋が陰惨な高速バス事故と結び付き、インモラルな不倫はロシアの自動小銃とアフリカの地雷へと拡散していく。この不帰の初恋、海老名SA/カラシニコフ不倫海峡という2編の物語は”たった一つのこと”を執拗に訴え続けている。何度も何度も言葉を変えて。

誰かの身の上に起こったことは誰の身の上にも起こるんですよ。川はどれもみんな繋がっていて、流れて、流れ込んでいくんです。君の身の上に起こったことはわたしの身の上にも起こったことです。

関係がないなんてことはないと思いました。

ありえたかもしれない悲劇は形にならなくても、奥深くに残り続けるんだと思います。悲しみはいつか川になって、川はどれも繋がっていて、流れていって、流れ込んでいく。悲しみの川は、より深い悲しみの海に流れ込む。

世界のどこかで起こることはそのまま日本でも起こりえる、と実証されました。メキシコで起きている問題は、日本の食卓に影響を及ぼすのです。

この世界には理不尽な死があるの。どこかで誰かが理不尽に死ぬことはわたしたちの心の死でもあるの。

それはつまり「わたしたちはこの痛ましい世界の一部である」ということ。この世界の痛みは、いみじくも全てが根底で繋がっていて、それに対して無関係でいることは誰にも許されない。かなたの地の戦争や地雷はおろか、すぐ隣にあるはずの、震災や貧困や差別にすら、「経験したことがないから自分にはわからない」と遠ざけてしまう。「実感が湧かない、共感できない、興味がない」と常に無関係や無関心を装うとする。そんな”わたしたち”に警鐘を鳴らす。

なぜ、わかろうとしないのだろう?
そこで傷ついているのは、すべて”わたしたち”だったかもしれないのに。

口にしてしまえば、まるで道徳の教科書のようなそんな指摘に、なんとか確かな重みと質感を宿そうと、坂元裕二は筆を費やしている。ここでの坂元裕二の態度から想起されるのは、やはり岡崎京子である。

わたしはどうしても、はじめのことに立ち返るのです。団地で溺れたわたしと同い年の女の子のこと。
わたしだったかもしれない女の子のこと。

坂元裕二は書き、岡崎京子は唯一の小説集の中でこう書いている。

いつも一人の女の子のことを書こうと思っている。
いつも。たった一人の。ひとりぼっちの。一人の女の子の落ちかたというものを。
一人の女の子の落ちかた。
一人の女の子の駄目になりかた。
それは別のありかたとして全て同じ私たちの。
どこの街、どこの時間、誰だって。
近頃の落ちかた。
そういうものを。

そして、その小説集のタイトルである、「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」という感覚は、この『往復書簡 初恋と不倫』全体に貫かれている”うしろめたさ”のようなものとイコールであるように思える。

ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね

ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね



坂元裕二は、悲痛な物語を書く一方で、「それでも、この世界で生きてゆくのだ」と思えるような喜びを書き足すことを忘れない。すると”悲しい話”は驚くようにクッキリとした輪郭を形づくり、生々しくわたしたちの心に訴えかけてくる。喜び、それは例えば、食べること。海老名サービスエリアのしょうゆラーメン、ぶりの照り焼き定食、トマトとバジルのイタリアンハンバーグセット、鯵の素揚げ、ポーク餅、冷凍チキン、バニラアイス、亀田製菓・・・と悲痛な物語の中で、必要以上に印象的に描写されていく食べ物の数々。『カルテット』において、”死“の存在を間近に感じながらも、かつ丼をモリモリと食べ、”生きていかなくちゃ”と決意した女たちを思い出すだろう。


もしくは、恋をすること、あるいは、言葉を交わすこと。この『往復書簡 初恋と不倫』は、通常の小説とは異なり、地の文がなく、全てが手紙もしくはメールのやりとりで構成されている。つまり、あの唯一無二と言っていい、坂元裕二の会話の感性がいかんなく発揮された作品であるのだ。どこまでも平行線を辿りズレながら、ときにカチリと噛み合ってしまう会話。すべてを分かち合ってしまったかのようなその交感に立ち会うこと、それこそ世界を生きる喜びと言えるのかもしれない。


そして、坂元裕二ファンとして見逃せないのは、この『往復書簡 初恋と不倫』には、これまで発表してきた連続テレビドラマ作品のマテリアルがそこかしこに散りばめられている点だろう。金槌を握った少年、ガストのハンバーグ、フレール・ジャックの鼻歌、ボーダーかぶり問題、公園のトイレの前で弁当を食べるOLなどなど、愛おしき登場人物たちの顔が浮かんでは消えていく。とりわけ感動的なのは『不帰の初恋、海老名SA』におけるこのくだり。

これから先、こんなに好きな人はもう現れないと理解していたからです。これから先、どんな出会いがあっても、どんな別れがあっても、どんなに長生きしてもこんなことはもう一生ないってわかったからです。そのくらい玉埜くんのことが好きでした。その気持ちは今も減っていません。増えてもいません。変わらず同じだけあります。これからのことも、これまでのことも全部その中に存在してる。そんなわたしの初恋です。


で、ここからが後日談です。わたしの初恋はどうなったか。わたしの初恋は、わたしの日常になりました。例えば長めで急な階段を降りる時。例えば切手なんかを真っ直ぐ貼らなきゃいけない時。例えば夜寝る前、最後の灯りを消すとか。日常の中のそんな時、玉埜くんと繋いだ手を感じているのです。支えのようにして。お守りのようにして。君がいてもいなくても、日常の中でいつも君が好きでした。

ここに息づいているのは、間違いなく『カルテット』における世吹すずめの魂であろう。そう、あの心震える8話だ。
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私の好きはその辺にゴロゴロしてるっていうか
ふふっ、寝っ転がってて・・・
で、ちょっと ちょっとだけがんばる時ってあるでしょ?
住所を真っ直ぐ書かなきゃいけない時とか
エスカレーターの下りに乗る時とか
バスを乗り間違えないようにする時とか
白い服着てナポリタン食べる時
そういうね 時にね その人が いつもちょっといるの
いて エプロンかけてくれるの
そしたらちょっと頑張れる

またしても、満島ひかりの言葉を思い出してしまう。坂元作品において、全ての人物は輪廻するように繋がっている。



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