青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

尾崎将也『まだ結婚できない男』1話

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結婚できない男』が13年の時を経て、まさかの続編である。主題歌は持田香織による「まだスイミー」、前作の主題歌「スイミー」のセルフカバーである*1。「スイミー」のようで、どこか違う。そんな楽曲に同調するように、劇中もまた13年前となんら変わらないようで、微妙に違うのだ。桑野(阿部寛)のガラケースマホに変わり、部屋にはAIアシスタントが導入されている。映像ストリーミング攻勢の影響なのか、レンタルビデオ屋には行かなくなった。コンビニにはあいかわらず通っているが、店員はギャルから外国人労働者に。金田のブログを読む代わりにエゴサーチを繰り返し、ネットでの誹謗中傷に心を痛めている。時代に合わせてしっかりと細部をアップデートしながらも、前作のテイストをしっかりと踏襲する筆致が心地よい。桑野のクラシックを聴きながらのエア指揮、橋の縁を触って渡る癖、牛乳と牛肉への偏愛、英治(塚本高史)の2000年代的ファッションといった、前作からの変わらない部分には思わずほくそ笑んでしまう。最大の違いはやはり早坂先生(夏川結衣)とみちる(国仲涼子)の不在だろう。一緒に道を歩んで行くように見えた早坂先生は桑野の元を去り、代わりにどこか雰囲気の似た女性弁護士(吉田羊)が現れる。みちるが住んでいた部屋に、やはり似た風貌の若い女深川麻衣)が引っ越してくるも、彼女は犬を飼っていない*2。この「変わらないようで、微妙に違う」というフィーリングは、今話の終盤においてグランドホテルとグレードホテルを間違えてしまういうドラマメイクにも繋がっている。


このドラマシリーズの素晴らしさは、やはり阿部寛の佇まいである。あの大きすぎる体躯。どんな場所にいても居心地が悪そうなサイズ感。冒頭の地鎮祭においても、明らかに1人だけ飛び抜けて大きく、神主に切木綿で頭を叩かれてしまう。阿部寛のあの189cmという高身長が、“はみ出し者”のメタファーとして機能している。キャラクター造詣もまた見事だ。ウディ・アレンがハリウッドで演じてきた無神経かつ神経症的なシティ派の男性像を、阿部寛テレビサイズに落とし込んでいる*3。とは言え、『結婚できない男』1話での、桑野がステーキを焼いて食べる所作だけで画面を数分を持たせてしまうサイレントコメディとしての優秀さや、

スパゲッティってのは直径約1.9ミリのものを言うんですよ。これはちょっと細いから厳密にはスパゲッティーニ。つまりあなたは、本当はスパゲッティーニ美味しいよ、と僕に言うべきなんです。

といった台詞のキレはやや鳴りを潜めているように感じたので、今後に期待したい。


50歳を過ぎて、お店で1人でしゃぶしゃぶ。この現代における都市生活者の孤独とブルースが浮き彫りとなる。だけで、留まらないのがこのドラマの素晴らしいところなのだ。そのしゃぶしゃぶを、桑野は実に旨そうに食べるのである。さらに、部屋で1人で流し素麺を堪能し、笑いながらこうつぶやくのだ。

(あと)50年くらい、1人で大丈夫だな

1人で生きていくのは、たしかに孤独で寂しい。しかし、悲しみ一辺倒にカテゴライズされてたまるものか。膨大な孤独な時間の中には、思わず笑みが零れるような瞬間が無数にあるのだ。そういったことを、このドラマは丁寧に描いている。1話のハイライトである桑野のスピーチの言葉を借りるのであれば、

長い人生、不安はあるけど、希望もある

というやつだ。孤独の中で、楽しんで悪いか!そう叫ぶ、このドラマを私は愛している。

*1:ちなみに編曲はクラムボンのミト

*2:ケンによく似たパグの強引な登場には、あだち充作品におけるパンチのやり口!と興奮いたしました

*3:この系譜の中に『最高の離婚』の瑛太がいる

『キングオブコント2019』 かが屋のコント美学

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かが屋のコントは美しい。コント内で鳴る扉のベルの音が複層的に響く。「会計を済ませたお客がドアを開けて店を出ていく音を、待ち人の到来と勘違いしてしまう」という複雑な心理描写をベルの音と表情だけで表現してしまうのだ。こういったコントを私は美しいと思ってしまう。暗転の度に「数時間前・・・」という影ナレを入れれば、あのSNS上でのカレンダーと時間軸を巡る不毛な議論も生まれなかっただろう。しかし、コントにおける不要な説明の省力が、かが屋が信じぬく美学だ。しかし、そこにあるのはただの美学だけではないだろう。どぶろっくの下ネタミュージカルによって焼け野原と化したスタジオの空気を一発で掴んだ賀屋のあの表情が、店内に流れる「蛍の光」のリプライズが繰り返されるたびに、どんどん哀愁を帯びていくというシステムは、影ナレがないことでより効果的になる。そういう計算がしっかり貫かれている。


普段は黒と白のシンプルなTシャツでコントを演じるかが屋が、晴れの舞台ではしっかりと衣装を纏っていた。ここにも美学は貫かれている。賀屋演じるプロポーズをする男には記号的にスーツを着せない。いつものデニムに少しだけ背伸びしてカッチリしたジャケットとシャツ。こういったこだわりが、わずか4分のコントの中のドラマに奥行きを生んでいく。加賀が演じる喫茶店で働く男はエプロンの下の長袖シャツを腕まくり。水仕事をこなすカフェ店員のリアリティがここにある。そして、長時間、大きなバラの花束を持ち続ける男の腕はしっかりと痺れる。痺れを散らすために腕をふり、その所作の延長で腕にはめた時計の時間を確かめる。こういった何気ない細部が、小さなドラマの中に世界をしっかり立ち上げている。


かが屋は、“恥らい”や“気まずさ”といった人間のコミュニケーションの中で生じる感情の機微を拾い上げることを得意とするコント師だ。しかし、コントの後味として、底意地の悪さではなく、人間が根源的に持つ“優しさ”のようなものがじんわりと残るのが、かが屋のカラーであり強みだろう。男はバラの花束を抱え入店し、「あとでもう1人来ます」と店員に見栄を切った。店員は「もうちょっとで来るから、がんばりましょう!」と男を何度も励ます。しかし、待ち人は来ない。この両者の、触れて欲しくはない気まずさが笑いを生んでいく。その点もさることながら、「待ち人が来ない」というお客の現象に、店員も共に胸を痛めたり、喜んだりしている。ここが素晴らしいではないか。人は、誰かの出来事を“わたしたち”の事として思考できる生き物なのだ。どんなにコミュニケーションですれ違おうとも、わたしは1人ではない。そんな優しい風を、かが屋のコントは運んでくれる。『キングオブコント2019』決勝進出おめでとうございました*1

*1:かが屋の2人に大きなイチモツを与えてあげてください

TBSラジオ『空気階段の踊り場』

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この番組には強烈な人間賛歌が迸っている。路上のアウトサイダーにインタビューをするという番組の初期を支えた名物コーナー「サラリーマン“じゃない”人の声」*1に、 “歯のない人”が頻繁に登場する。まるで何かが欠けた人の象徴のように。童貞、借金、不倫、離婚、無職・・・といったようなワードが飛び交う少し“普通じゃない”人々の醜態を笑い飛ばすといった趣旨のコーナーなのだが、それが露悪的に映らないのは、空気階段の両名もまたあきらかにピースの欠けた人間だからだろう。ギャンブルや風俗でこしらえた600万円の借金を抱え、新婚で子持ちながら家族と別居生活を続ける鈴木もぐら、高学歴引きこもりという経歴を持ち、仕送り総額1200万のマザコンという水川かたまり。しかし、そんな二人の不毛な罵り合いがどうにも愛おしく響く。「人間は凸凹であるが故に愛おしく、深く結びつき合うのだ」というのを体現しているコンビが空気階段であり、ラジオ『空気階段の踊り場』なのだ。


どんなに歪でブサイクでも、彼らは懸命にダンスを続けている。TBSクラウドにて、初回から聞くことが推奨されるでしょう*2。ネタで勝ち取ったラジオ枠にて、ほぼ無名の状態から、劇場でのランク昇格や人気番組への出演などが逐一報告され、芸人として少しずつランクを上げていく様を追いかけることができる。だけでなく、初回放送では素人童貞であった男が、初の恋人を得てプロポーズ、そして父になる様までもが記録されているのだ。アウトサイダーたちが少しずつこの社会でサヴァイヴしていく様が生々しく刻まれた一級の青春ドキュメンタリーとして楽しむことができる。水川かたまりによる号泣プロポーズや鈴木もぐらと銀杏BOYZの関係を綴った「駆け抜けてもぐら~僕と銀杏の青春時代~」など伝説的な回も多いが、もぐらの家族を巡るエピソードの哀愁、頻繁に登場する岡野陽一とのクズ兄弟の競演、かたまりがもぐらの体臭を罵倒するだけの回、かたまりがもぐらの足を洗ってあげるだけの回など、聞き所は随所にちりばめられていますので、お聞き逃しなく。今後メディアで大きく活躍していくであろう空気階段の存在が、この不寛容な現代に一石を投じることになれば、と願います。

*1:同じTBSラジオ森本毅郎・スタンバイ!』内のコーナー「サラリーマンの声」のパロデイ

*2:かく言う私も其口です

最近のこと(2019/07/01~)


the 1975 - i always wanna die (sometimes) {tradução}
この夏はあまりいいものではなかった。その決算として、巨大台風の通過とともに体調を著しく崩す。出張先のホテルに引き籠もり、熱にうなされながらひたすらに眠り続けていた。季節の変わり目にいつも風邪をひく。身体も季節に添うようにして、生まれ変わろうとしているのだろう。風邪が完治した時の身体の調子の良さというのは格別で、あれを味わえるのであれば、たまには風邪をひくにも悪くないと思える。風邪の気分を盛り上げるべく、ポカリスウェットとイオンウォーターを3本ずつ飲んだ。ヘルトーム・シュミットによるパッケージデザインを崇拝しているので、スポーツドリンクはアクエリアスではなく絶対にポカリスウェットを飲みます。そんな愛するポカリスウェットに苦言は呈したくないのだけど、イオンウォーター安藤さくらのCMがなぜかわからないが苦手だ。イオンウォーターは飲みやすいのだけども、ノスタルジアを刺激するステビアをぜひとも復刻して欲しい。ステビアという語感も好きだ。


猛暑に体力も精神もやられてしまったのか、慢性的に憂鬱な気分に襲われていた。そんなブルーの隙間を縫うように、カレーとサウナをはめ込み、なんとか夏を生き抜いた次第だ。2019年のマイベストカレーは上板橋「八花仙」のスパイシーチキンとポークビンダルの二種盛り、高田馬場「ブラザー」の鯖キーマ。もしくは、490円の奇跡と断言したい「松屋」の創業ビーフカレー。“ごろごろチキンカレーシリーズ”を超えました。定番化を切に願います。『マツコの知らない世界』で登場した「崖っぷちの人間を救うのはドライカレー」「カレーは、明日目覚めなくていいという覚悟で食べる」といった金言は胸に刻んだ。出張先のホテルでついつい観てしまう番組ランキング1位が『マツコの知らない世界』だ。2位は何故か『人間観察バラエティ モニタリング』なのだが、おもしろいと思ったことはない。カメラの存在を意識していないはずの『モニタリング』よりも、カメラに映されていると自覚している『ドキュメント72時間』のほうが、明らかに「人間が映っている」という感じがするのは何故なのだろう。“まなざし”を意識することではじめて、人は人らしく為るのだろうか。ちなみに、2019年の『ドキュメント72時間』のベストは、「東京・阿佐ヶ谷 金魚の池のほとりには」だ。


この夏、印象的だったサウナでのととのい。

成増(東京都)「ヒルトップ」
巣鴨(東京都)「ニュー椿」
川口市(埼玉県)「ひろいサウナ」
須坂市(長野県)「湯っ蔵んど」
中野市(長野県)「ぽんぽこの湯」
松本市(長野県)「林檎の湯屋 おぶ〜」
南都留群(山梨県)「桜庵」
富山市富山県)「スパ・アルプス」
妙高市新潟県)「神の宮温泉 かわら亭」

信越地域の名施設に出会えるのは出張体制の旨味。どの地域も水質が優れた施設が多く、これから気温が下がってくると更に凄いことになるんじゃないかとワクワクしています。長野はまさに「水が合う」と言いますか、居心地が良い。第二の故郷、BUMP OF CHICKEN的に言えば、「涙のふるさと」と化している。60歳くらいで、長野に移住したいくらいです。長野駅周辺に行くとついつい寄ってしまうスポットは「ヤマとカワ珈琲店」「ライスハウスabab」「信州蕎麦の草笛」「平安堂長野店」です。あと、長野・山梨限定というセブンイレブンのホットスナック「ポテサラちくわ天」がめちゃ美味い。


生活の中心にはラジオがある。今、最も愛おしいのは、『空気階段の踊り場』だ。水川かたまりにはいつも笑っていて欲しい。今年のキングオブコントはさすがに決勝進出していることでしょうから、むちゃんこ期待している。すでにして単独のチケットがまったく当たりません。4月からの佐久間宣行と霜降り明星のラジオも、すっかり生活の一部に。『オードリーのオールナイトニッポン』は、むつみ荘からの放送の回が素晴らしくて、強く印象に残っている。「記憶を場所に宿るのだ」というようなエピソードの連打。セックスの振動でサンタ人形がクリームに倒れたケーキを見て、「ファーゴだ」と思ったという若林のエピソードの美しさ。誰も書いていない”シーン”だと思った。オードリーと言えば、日向坂46がセットで思い出されてしまう。『立ち漕ぎ』はもちろん買いました。

日向坂46ファースト写真集 立ち漕ぎ

日向坂46ファースト写真集 立ち漕ぎ

とてもいい写真集だと思います。ラジオと『ひらがな推し』(現『日向坂で逢いましょう』)で繰り返されるキン肉マンネタを全力で楽しむべく、『キン肉マン』をジャンプコミックスで買い直し、読み直してしまった。死んだバッファローマンの両腕が時空を超えて、テリーマンの胴体に繋がるところとか、中学生の頃に読んだ時とは違う箇所で感動している自分に気づいたので、文章化したいのだがいつになることか。間もなくリリースされる3rdシングル「こんなに好きになっちゃっていいの?」は、欅坂46「二人セゾン」に並ぶ!とまでは言わないが、名曲と呼んで差し支えない。

日向坂46 『こんなに好きになっちゃっていいの?』
楽曲、衣装、振り付け、照明、美術・・・すべての要素が文句なしの名作MVではないでしょうか。世界観もハッタリが効いていて、楽曲のマジカルさを引き立てている。ときに、心ある人間が皆一様に、松田好花への推しを表明している気がする。かくいう私は、加藤史帆・佐々木久美・上村ひなの・松田好花の四項で揺れている。しかし、センターの小坂奈緒さんが、あだち充をこよなく愛するという情報を知ってからというものその存在がむやみやたらに気になって仕方ないのです。一方で、欅坂46からは長濱ねるが卒業。卒業の日に放送された『長濱ねるのオールナイトニッポン』、正直まったくおもしろくなかったけど、全部聞きました。「Isn’t She Lovely?」をバックに流しながらの「さよなら、またね」という別れの挨拶はとても良かったです。

こちらのエントリーをわたしからの鎮魂歌として刻みます。そして、乃木坂46からは桜井玲香が卒業。『真夏の全国ツアー2019 FINAL』を映画館のライブビューイングで見届けました。「自分じゃない感じ」のダンスかっこよかった。桜井玲香さんのおかげで本当に楽しい時間を過ごしてきたので、感謝の念しかありません。大仰なミュージカルとかもいいんですが、いつかあの演技力と声を”小さな物語”で発揮して欲しいと祈っています。

そして、このエントリーが繋いでくれた三者の縁がインタビュー記事に結実しました。「CINRA.NET」でのロロ三浦直之とEMCの対談です。

余裕がれば、もっとやれることがあったはずで悔いも残るんですが、とりあえず形に残すことができてよかったです。このインタビューに備えてのファミレスでの顔合わせの時の会話が縦横無尽ですっごい良かった気がしていて、そちらも録音しておけばよかった。Enjoy Music Clubの新曲「東京で考え中」「HEY HEY HO」、ロロ『はなればなれたち』の公演も素晴らしかったですね。江本祐介の『Live at Roji』も愛聴した。「ワゴンR」は掛値なしの名曲。ここ数年の江本祐介のメロディーメイカーとしての充実を早くまとめ上げて欲しい。



映画館にはあまり行けていない。ここ数か月で印象に残っている映画は『天気の子』『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』『トイ・ストーリー4』で、まだ観られていないけども、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は絶対好きだから早く劇場に駆けつけるべきなのだが、3時間近い尺に膀胱との相談が終わっていない。しかし、『天気の子』よかったな。小栗旬と本田翼も好きになってしまった。数ヶ月間、書いていなかったので長い文章を構成して書くという能力をリハビリしながらなんとか完成させてこのエントリー。

「まだ書けた」と胸をなでおろした次第なので、ぜひお読みください。


金曜ロードショーで放送していた『千と千尋の神隠し』『崖の上のポニョ』が圧倒的過ぎて、2回ずつ観た。それでも飽き足らず製作ドキュメンタリー『ポニョはこうして生まれた。』もDVD5枚分(12時間30分!!)をチビチビと全部観ました。宮崎駿と過ごす夏だった。『学校の怪談2』と『学校の怪談3』をスクリーンで観られたのもうれしい出来事だった。和製『ストレンジャー・シングス』として楽しむのが今の気分らしい。2の前田亜紀、3の米澤史織は私の初恋のようなもの。このシリーズに異様に肩入れしてしまうのは、役者陣がほぼ全員同い年だからかもしれない。


舞台は五反田団『偉大なる生活の冒険』の再演が印象に残っている。前田史郎と内田慈のカップル、良かった。犬飼勝哉『ノーマル』もおもしろかった。胸にトローンと宙吊りになったままだ。浅井浩介という役者の素晴らしさを再確認した。巷で非常に評判の高いIakuという正統派劇団の公演も観に行ったのだが、どうも体に合わなかった。前田司朗的なもの、が演劇を観る際の物差しになってしまっている気がする。


音楽はたくさん聴いた。ライブは鎌倉molnでの図書館のワンラマンライブ、山田敏明のソロデビューアニバーサリーライブなどが心に残っている。サブスクリプションのおかげで話題のリリースものにしっかり耳を傾けることができる。最近は

Men I Trust『Oncle Jazz』
Whitney『Forever Turned Around』
(Sandy)Alex G『House of Sugar』
Hi,how are you?『Shy,how are you?』

の4枚が心の琴線を捉えていて、車でずっと流しています。とりわけ、Men I Trustは「これぞ、私の聞きたいPOPS!」というツボを押さえてくれている。

Men I Trust - Numb
MVも素晴らしい。冒頭の黄色のイメージの応酬、すごい鮮烈。楽曲でグッときたのは、佐藤優介のCD-Rからのリード曲「Kilaak」でしょうか。あと、OMSBの「波の歌」だ。この2曲もMVが素晴らしいので、チェックお願いします。

けもの『めたもるシティ』
けもの『LE KEMONO INTOXIQUE』
松田聖子ユートピア
三浦透子『かくしてわたしは、透明からはじめることにした』

旧譜はこの4枚。けもののすばらしさをいまさらながら確認しました。

けものMV 「おおきな木」
第1期のSPANK HAPPYに並ぶソングライティング。そういえば、FINAL SPANK HAPPYのアルバムも楽しみだ。『天気の子』の劇中歌でも活躍中の三浦透子が2017年にリリースしたカバーアルバムはスピッツサニーデイサービス、フィッシュマンズなど、いかにも選曲の中に、ELTやglobeのカバーが忍び込んでいて、これがいい。とくにglobeの名曲「Precious Memories」のカバーが実に秀逸で、何回も繰り返し聞いている。本家はこれでもかとエモーショナルな歌唱なのだが、三浦透子はクールな歌唱で解釈することで、歌の切なさが際立っている。

オフィスビルすりぬけて
今日も 一日が終わって
クーペタイプの疲れたシートに座って
カーステレオからslow dance
そして切ない love song
時々 ふっと思い出す
Mm precious memories


懐かしくても会えずに
どこにいるかも理解らずに
偶然街ですれ違っても気付かずにお互いの道を目指してる

特別な時間を共有したはずの2人がすれ違っていく。小室哲哉が90年代に書き散らしたこの種の“哀しさ”が原体験として刷り込まれている世代であるから、新海誠の物語にもまんまと琴線を揺さぶられてしまうのだろ。小室哲哉の日本人への影響は、村上春樹のそれよりも根深い気がしている。


2019年のヤクルトスワローズは圧倒的な最下位で、監督とヘッドコーチの辞任で幕を閉じる。そんな中でも、高卒2年目村上宗隆の早すぎる覚醒、期待している廣岡、塩見、中山、濱田、梅野、高橋といったが若手が順調(?)に育ったシーズンであった。一方で、ヤクルトの魂とも言える館山、畠山(と三輪)の引退。大引も退団してしまうらしい。2015年のV戦士たちがどんどんいなくなってしまう。館山と畠山は私の中で本当に特別な選手なのだが、引退試合のチケットを押さえることができなかった。でも、行ったら大泣きしてしまうだろうな。


水は海に向かって流れる(1) (KCデラックス)

水は海に向かって流れる(1) (KCデラックス)

夢中さ、きみに。 (ビームコミックス)

夢中さ、きみに。 (ビームコミックス)

最近の漫画とは言えば、何はなくともこの二作だろう。田島列島の待望の新刊は何回読み返してもおもしろい。作中でも言及されているとおりレヴィ=ストロースの『親族の基本構造』や交換や交感といった“構造”が物語を下支えしていて、なおかつ細部を敷き詰める会話のセンスもずば抜けているという、ほぼパーフェクトな1冊。続きが気になる。和山やまの『夢中さ、きみに。』も素晴らしかった。”まなざし”がドラマを駆動させている。『動物のお医者さん』の頃の佐々木倫子を彷彿とさせるタッチ、さらにあらゆるキャラクターに松田龍平の魂が根付いている感じがする。こちらも言葉のセンスがずば抜けている。


18日までほぼ全巻を無料で開放していた『進撃の巨人』を貴方は読んだか。

進撃の巨人(29) (講談社コミックス)

進撃の巨人(29) (講談社コミックス)

リアルタイムでは3巻くらいであまりの暗さに挫折してしまったくちの人間なのですが、このたび休日を捧げ一気読みしました。もう、鼻血が出るほどおもしろかった。近隣諸国との衝突など不穏なこの時代が要請する物語を真摯に、かつ全力でエンターテインメントとして描き切っている。緻密なプロットと物語のドライブ感(展開がまったくモタつかず、ササっと処理されていくのが現代的だと思った)は圧巻の一言です。この10年で、『鋼の錬金術師』級の漫画を読みそびれていたという損失。未読の方、まだ間に合いますよ!というか、これはコミックスで揃えるべきです。


暑くてどこにも行く気がせず、休日は喫茶店で本を読んでいる。ここ最近で読んで(読み直した)、印象に残っている本。

若い読者のための世界史

若い読者のための世界史

鳥類学フィールド・ノート

鳥類学フィールド・ノート

二週間の休暇〈新装版〉

二週間の休暇〈新装版〉

夏物語

夏物語

太宰治の辞書 (創元推理文庫)

太宰治の辞書 (創元推理文庫)

女生徒 (角川文庫)

女生徒 (角川文庫)

八月のフルート奏者 (新鋭短歌シリーズ4)

八月のフルート奏者 (新鋭短歌シリーズ4)

オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)

オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)

みゆき(1)

みゆき(1)

じんべえ 1 (Big comics special)

じんべえ 1 (Big comics special)

ゴンブリッチの『若い読者のための世界史』がおもしろくて、勉強になったので、ばかみたいに分厚くて重い『美術の物語』も思い切って購入した。『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和』が20周年らしく、「ベストオブギャグ総選挙」が開催されていた。読み直してみて、「第78幕 明男~この胸の中にまだ生きている~」と「第115幕 新撰組ー池田谷事件ー」に投票しました。


オーガ(ニ)ズム

オーガ(ニ)ズム

阿部和重の新刊『オーガ(ニ)ズム』が9月26日に発売される。小説の発売日を待ち望むなんていうのは、本当にひさしぶりの感覚だ。なんせ、「神町サーガ」がついに完結するとうのだから。この間、カフェでミワちゃんとネットに掲載されていた『オーガ(ニ)ズム』のあらすじを確認して、ゲラゲラ笑い合ってしまった主人公は阿部和重で、彼が世界を破滅させる陰謀を阻止する話らしい。そして、神町に首都機能が移転され、アメリカ大統領のオバマが来日するという導入。絶対に最高傑作じゃん。『シンセミア』『グランドフィナーレ』『ピストルズ』も読み終え、体制を整えております。


その他に、この夏で書き残しておきたいことと言えば、世田谷文学館で開催中の『原田治 回顧展』が良かったこと。「一保堂」のいり番茶をリピートしていること。パピコの「大人の濃厚ジェラード ピスタチオ」が傑作だったこと。上越名物である「小竹」のサンドパン」のすばらしさ。伊藤園の「生オレンジティー」のブームが1週間だけ巻き起こったこと(私の中で)。「午後の紅茶」のCMで深田恭子が運転しているランドローバーディフェンダーがかっこいいということ。カレーと紅茶は本当に”合う”ということ。『いろはに千鳥』『相席食堂』『テレビ千鳥』がおもしろいこと。トム・ブラウンのグラブルのCM(ピアノマン布川)。『クロノ・トリガー』と『クロノ・クロス』のサントラがSpotifyで解禁。『まだ結婚できない男』が楽しみ。街裏ぴんくの漫談「ヒップホップジョナサン」(10回観た)です。

街裏ぴんく 漫談 「ヒップホップジョナサン」

みそさざい『しあわせジョン』


2019年6月から@misosazainfoというアカウントでTwitter上で掲載されている『しあわせジョン』という漫画にすっかり魅了されている。こんなにかわいくていいのか、というほどにジョンがかわいい。心の栄養ドリンクです。心が弱っている時に読める漫画というのは貴重で、みつはしちかこ『はーいアッコです』やけらえいこあたしンち』を読むような幸福感がここにはある。
あたしンち 1

あたしンち 1

つまり、どこかの新聞の日曜版などに掲載される国民的クオリティーを既に獲得しているということだ。線や構図も美しく、作者の”ミソサザイ”という方は何者なのだろうと調べてみるも、大阪で活動るイラストレーター/デザイナーであるという情報しか出てこない。


犬を飼い始めた吾郎という青年のお話なのだが、犬は当たり前のように二足で歩き、言葉を喋る。そのことに驚く者は誰もいない。この”異”をすんなりと受けるいれる優しい世界観は、藤子不二雄イズムの後継者とも言えるかもしれない。この『しあわせジョン』は、『ドラえもん』や『オバケのQ太郎』をはじめとする”居候モノ”の現代版である。そう言えば、吾郎ちゃんは大人になったのび太のようだ。


ジョンたちの暮らしぶり、住むアパート、喫茶店、公園といった町並みのヴィジュアルはどこかノスタルジックだが、これは現代のお話なのだ。タピオカや生食パンなども登場する。そして、何と言っても、現代人を象徴するキャラクター”ふしあわせトム”の存在。社畜のネコである。社会に疲弊しながら、ブツクサと文句を吐き、ひたすらに孤独を抱え込むトム。


この「休日」という作品のブルースには思わず声が漏れた。お前は私だ、と多くの人がトムに肩入れをするのではないだろうか。この時代において、「しあわせって何?」と聞かれても、もはや共通の大きな答えはない。考えている内に虚無に飲み込まれてしまうだろう。であるならば、夕食が唐揚げだったこと、休みの日にパンを買って帰ること、友達にスイカをもらったこと、雲の形がクジラみたいだっこと、焦げたハンバーグが美味しかったこと・・・そういった小さな出来事を、”しあわせ”なのだと胸を張って言うことで、幸福をこちら側に引き寄せてしまおうではないか。そんな強い志を、このほのぼの居候ギャグ漫画から感じるのです。