青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

最近のこと(2019/03/01〜)


ここ最近のミューズは日向坂46なのです。メジャーデビューシングルの表題曲「キュン」がとてもかわいい曲でうれしい。今1番楽しみにしているテレビ番組は『ひらがな推し』で、3/17放送の「ヒット祈願駅伝」の"かとし"と"ひなのなの"の走りとお喋りにサトミツよろしく「ごめんねぇ」と涙しました。若林さんのおたけへの愛に嫉妬するかとしが大好物なので、もっと観たいものです。

オードリー史から眺める『ひらがな推し』について『EX大衆』にコラムを寄稿しました。良かったらお目通しくださいませ。本当におもしろいバラエティ番組だと思います。『EX大衆』のスタッフインタビューによりますと、『内村プロデュース』出身のディレクターが制作しているらしい。ミューズと言えば、長濱ねるさんの欅坂46卒業は、覚悟はしていたもののショックだ。ボーカリストとしての彼女にも心酔していてソロ曲「100年待てば」は私の中で永遠のクラシック。ユニット曲「バスルームトラベル」と「音楽室に片想い」は2018年、愛聴しておりました。職場の新入社員に「好きな女性芸能人とかいるんですか?」と言われて、「長濱ねる」と答えたら、「えっ、知ってるんですね・・・」と若干引かれた感じがあったので、これからは有村架純と答えようと思います。長濱ねるさんのへの鎮魂歌として、このエントリーを捧げます。

日向坂46、長濱ねる以外の最近のミューズは弘中綾香石田ゆり子で、インスタもこの2人の投稿のために登録しています。オードリー若林と弘中綾香の関係性が、SEKAI NO OWARIFukaseSaoriくらいエッチだと思います。石田ゆり子さんに憧れて、彼女が10年以上愛用しているというサンタ・マリア・ノヴェッラのポプリを購入してしまった。イタリアはフィレンツェ発祥の世界最古の薬局が作るポプリ。甘すぎずスパイシーで複雑な香りが素敵です。わざわざ東京駅の新丸ビルに入っている直営店まで匂いを嗅ぎにいったのですが、魔法使いの薬局とでも言うような店構えに圧倒されてしまい、それなりの値段なのに即決してしまいました。かねてから部屋を「タイムズスパレスタ」みたいな匂いにしたいと思っていたので、大満足です。帰宅してドアを開けた時が1番うれしいです。詰め替え用をお皿に入れて家の何ヶ所かに置いておくのが流儀だそうで、リビングと玄関と寝室に設置しました。3ヶ月くらい香りが持つそうですが、サンタ・マリア・ノヴェッラのポプリをリピートで買い足し続けられるくらいはお金を稼いでいきたいものですね。石田ゆり子さんが表紙の『&Premium』4月号にTVドラマの台詞について寄稿しています。野木亜紀子木皿泉坂元裕二の3人の脚本家の言葉について書かせて頂きました。非常に読み応えのある「言葉の力」特集でしたので、こちらもぜひ。あと、私立恵比寿中学にハマり直しています。
エビクラシー

エビクラシー

2018年は『エビクラシー』(大名盤)を本当にヘビーローテーションしました。ファミえんのライブ盤もよく聞いた。メンバー全員の喉の強さと声質の良さにほれぼれしてしまう。楽曲も強度があるものばかりだ。小林歌穂さんの歌声が心から好きです。あと、成長著しい安本さんは眩し過ぎて、観ていると「ごめんねぇ」と泣いてしまう。今年はひさしぶりにライブに行ってみたいです。最後に観たのは、調べてみたら7年前でした。ひょえー。



ひさしぶりの「最近のこと」の更新だというのに、永遠に女の子の話を続けてしまいそうである。そう「最近のこと」がすっかり消滅していました。心がとにかく忙しかったのです。しかし、私の日常はあいもかわらず続いていて、カレーを食べたり、サウナで蒸されたり、本を読んだり、ラジオを聞いたり、ヤクルトスワローズの試合を観たり、くしゃみをしたり、泣いたり、笑ったりしています。昨年の4月から入社10年目にして内勤から営業へ異動。辞めちゃうんじゃないかな、と自分で自分を心配していましたが、なんとか1年間勤め上げましたのでご報告です。来年度からは長野、山梨、新潟、富山、山形、宮城あたりを回ることになりました。各地の耳寄り情報、お待ちしております。もう心は完全に営業マンで、どれくらい染まっているかというと、ここ最近の関心は来週の送別会で最低2曲は歌わなければならないであろう3次会のカラオケの選曲だったりするのだ。「かっこいいジャンパー」と「あすなろサンシャイン」で決まりだね!かっこいい、まだ誰も着てないジャンパー、かっこいいことする時のためのジャンパー。



営業車を走らせながら聞く、ラジオと落語が何よりの心の慰め。『伊集院光 深夜の馬鹿力』『アルコ&ピース D.C.GARAGE』『爆笑問題カーボーイ』『うしろシティ 星のギガボディ』『ハライチのターン』『おぎやはぎのメガネびいき』『三四郎オールナイトニッポン0』『オードリーのオールナイトニッポン』『山下達郎のサンデー・ソングブック』『神田松之丞 問わず語りの松之丞』(曜日順)は必ず聞くようにしています。『オードリーのオールナイトニッポン10周年全国ツアー』は抽選に外れに外れて、結局ライブビューイングで観たのですが、本当に素晴らしくて、目がずっとハートでした。




Gallipoli [輸入盤CD] (4AD0121CD)

Gallipoli [輸入盤CD] (4AD0121CD)

Tomb

Tomb

A SEAT AT THE TABLE

A SEAT AT THE TABLE

thank u, next [Explicit]

thank u, next [Explicit]

HOCHONO HOUSE<CD>

HOCHONO HOUSE<CD>

がんばれ!メロディー

がんばれ!メロディー

今年はこの6枚のアルバムがとにかく良くて、ずっと聞いています。Spotifyを解禁してしまい、CDを買う機会が激減してしまったのですが、柴田聡子の『がんばれ!メロディー』は買いました。「涙」という曲はもう全部のことを歌おうとしているのじゃないかと思ってしまうほどに凄い。

岡田拓郎のギターの音色も素晴らしい。あと、「ラッキーカラー」を聞くといつも泣いてしまう。

急に離れることのできないふたりのために 
毎日少しずつ広がる岸辺と岸辺に住み
いつか橋をつくろう

という歌詞がもう。ちなみ2018年のベストはダントツでayU tokiO『遊撃手』です。

遊撃手

遊撃手

このアルバムに何度も慰められたり、励まされたり、ワクワクしたりしました。

「あさがお」は2018年1番聞いた楽曲です。CDだけではなく、とても大きなアナログ盤やかわいいカセットも買いました。去年買って、楽しい気持ちになったアルバムは『遊撃手』だけなのでした。その他のベストソングはアリアナ・グランデ「thank u, next」、RYUCHELL「LINK」、乃木坂46「地球が丸いなら」にしておきます。



「thank u, next」は2019年もベストソングに君臨。りゅうちぇるの曲は前山田健一によるシンセとリズムマシーンの音色がノスタルジックで泣きます。歌詞も良いです。「地球が丸いなら」は沖田修一が手掛けたMVが最高に好き。3分過ぎからセオリーを無視して、カメラに視線を送りながら歌い出す瞬間に毎回ノックアウトされます。大園桃子さんの歌声も素晴らしい。



2019年の目標は友達を作る、ということで、さっそく前から会いたいと思っていたフォロワーさんにダイレクトメッセージを送ってみた。はてな『記録』というブログを書いているmiwaさんという24歳のボーイ。

渋谷の「エリックサウスマサラダイナー」でビリヤニを食べて、デニーズで5時間くらいお話ししました。話すことはいくらでもあるような気持ちになりました。待ち合わせはとても緊張して吐きそうでしたが、会ってみてよかったなと思ったので、人見知りしてないで、色んな人に会っていきたいと思います。そうですよね!?星野源さん。



休日はあまり遠くに出かけなくなってしまい、近所の銭湯でサウナに入って、散歩をして喫茶店に入って本を読むのが1番の幸せ。喫茶店がなければ、コメダ珈琲でもミスタードーナッツでも良いのです。先週の日曜日は銭湯で朝風呂、朝サウナ。サウナ利用者は他に誰もおらず、熱々の蒸気と鮮度の高い水を独り占めできた。銭湯を出たら昼の時間になっていたので、中華屋で焼きそばを食べた。花粉が気になったけどもいい天気だったので、自転車で街をブラつく。自転車をそろそろ買いかえたい。しっかり花粉に襲われたので、ときわ台という駅から少し離れた場所にある「珈夢居」という喫茶店でひと休みする。レトロな佇まいが前からずっと気になっていた喫茶店なのだ。3月に入って山川直人の漫画をすべて読み直していたので、勇気を出して入ってみた。さぞ気難しい店主がいるのだろうと恐れていたのだけども、とても物腰の柔らかいマスターでピンク色のシャツがかわいかった。マスターが書いたものかはわらかないが、メニューに書かれた珈琲の説明文がとても素敵であった。たとえばアイスドコーヒーは

通称アイス珈琲は、灼熱の国アルジェリア生れ、
ほどよい苦味と香りを活かした独特の淹れ方で、
珈琲の粉をたっぷり使った冷たい飲みもの。
フレッシュクリームをたっぷり入れてそのままお飲み物ください。

ときたもの。なんでことない言葉の端々にセンスを感じる。1杯目はロイヤルブレンド(絶品)にしたのだけど、思わずアイスドコーヒーも追加で注文、こちらも美味しい。珈琲の種類が豊富で、モーニングもやっているし、豆の販売もしている。いいお店をずいぶん見逃していたものだ。あまりに居心地が良く、セバスチアン・ジャプリゾの『シンデレラの罠』という傑作ミステリーの新訳を一気に読んでしまった。最後に、ここ最近読んでひどく感動した本たちをシェアしておきますね。

帰って来た桃尻娘 (講談社文庫)

帰って来た桃尻娘 (講談社文庫)

回復まで

回復まで

万象の訪れ《わが思索》

万象の訪れ《わが思索》

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)

新訳 チェーホフ短篇集

新訳 チェーホフ短篇集

いとしこいし 漫才の世界

いとしこいし 漫才の世界

やがて秋茄子へと到る

やがて秋茄子へと到る

えーえんとくちから (ちくま文庫)

えーえんとくちから (ちくま文庫)

私に付け足されるもの (文芸書)

私に付け足されるもの (文芸書)

グヤバノ・ホリデー

グヤバノ・ホリデー

杉浦茂マンガ館 (第2巻)

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我らコンタクティ (アフタヌーンコミックス)

我らコンタクティ (アフタヌーンコミックス)

おとうさんとぼく (岩波少年文庫)

おとうさんとぼく (岩波少年文庫)

土曜日はお楽しみ (岩波少年文庫)

土曜日はお楽しみ (岩波少年文庫)

ぼくと「ジョージ」 (岩波少年文庫)

ぼくと「ジョージ」 (岩波少年文庫)

おとうさんがいっぱい (新・名作の愛蔵版)

おとうさんがいっぱい (新・名作の愛蔵版)

チョコレート戦争 (新・名作の愛蔵版)

チョコレート戦争 (新・名作の愛蔵版)

あとは向田邦子全集と夏目漱石全集(古本屋でまとめて買っためちゃくちゃ分厚くて重たいやつ)を寝る前にチビチビ読んでいます。本当はオススメした本が1年間分溜まっているのですが、グッと堪えようと思います。



ブログで日々のことを定期的に書き記しておくと、「なんてことない毎日でも色々考えながら生きているんだな」と実感できたところがよかった。わたしたちは思考する生き物なのです。また復活させたいとは思っているのですが・・・仕事でのできごごならいくらでも書きたいことはあるのだけども、そうはいかないのが悩みどころ。とにかくコツコツと立て直していきたいと思っています。

『R-1グランプリ2019』岡野陽一のイノセンス

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2019年の『R-1グランプリ』の興奮もすっかり覚めやった中*1、敗者復活から勝ち上がった岡野陽一(元・巨匠)が披露した1本のコントが頭にこびりついて離れない。それは「鶏肉をもう一度大空に飛ばしてやりたいんだ」という奇天烈な内容で、当然のように客席からはこの日1番の悲鳴が上がった。『水曜日のダウンタウン』がかもめんたる野生爆弾くっきーを擁して「悲鳴-1グランプリ」を開催し、お笑いコンテストにおける観客の悲鳴を揶揄してみせたのには思わず快哉の声を上げてしまったものだが、岡野のコントへの"悲鳴"という反応はどこか正しいようにも感じた。何故ならあのコントには、わたしたちが目を背けているうしろめたさや違和感のようなものがゴロリと横たわっているからだ。わたしたちが当たり前のように口にする鶏肉は、かつて空を飛ぶ鳥だったという事実*2。「このチキンソテーって殺される前は空を飛んでいたんだよな・・・」そんなことをレストランで口にする人間は、たちまちこの社会から阻害されてしまうだろう。わたしたちの食事に殺戮が介入していることは、皆が頭の片隅ではわかってはいるけど、口にはしない。それがこの社会の暗黙のルールなのだ。しかし、岡野が演じるおじさんは濁った目で言う。

かわいそうだろ
人間のエゴでよ

決めたんだよ、俺は
鳥側につくよ

こんなに風船つけても飛ばないんだぞ
命って重いよな

海に刺身を返しにいくんだ

このすべての生命への隔たりのない愛は何なのだ*3。人間の社会性に囚われずに、「俺は鳥側につくよ」と言い切れるその発想は、サイコパスと言うよりも天使的イノセンスと評したい。ヴィム・ヴェンダースは天使をサラリーマン風のおじさんとして描いたが(R.I.P. ブルーノ・ガンツ)、岡野は朝からパチンコ屋に並んでいそうなおじさんを天使に仕立てあげた。ときに、「子どもにやたらと話しかけるおじさん」というモチーフを岡野は巨匠時代から好んで取り上げてきたが、もはやそんなおじさんも絶滅危惧種である。大人が子どもに話しかければ通報されない世の中だ。岡野はいつも、消え去りそうな小さな者の側に立つ。



また岡野という芸人の優れたバランス感覚が随所に見受けられるコントだ。たとえば、悲鳴が上がる内容を、ピクサーの『カールじいさんの空飛ぶ家』的なマジカルさで包み込んでみせる手腕。また、空に浮かすために少しでも軽くしようと皮を引きちぎり、「明日だな、これは」とポケットにしまうおじさんは一体何なのだ。もはや鶏を空に返すのでなく、"空に飛ばす"という行為そのものに執着している、そんな狂気を添えることで、文学や詩の領域にある愛のコントを台無しにしてみせるのである。ちなみに審査員の投票結果は友近の1票のみ。コメントでも軒並み審査員からスルーされるなか、「私はどうでしたか?」と無理矢理カットインしてきた岡野が愛おしくてたまらなかったのであります。



関連エントリー
hiko1985.hatenablog.com

*1:個人的にはマツモトクラブ、ルシファー吉岡、おいでやす小田のコントが素敵に感じましたが、粗品も松本リンスもセルライトスパ大須賀もおもしろかったです

*2:ちなみに、ニワトリは空を飛ばないだろ、というツッコミは野暮天。そもそもニワトリの祖先から飛行能力を削ぎ落とすように品種改良していったのも人間だ

*3:最も近いのは梅図かずお作品ではないだろうか

『オードリーのオールナイトニッポン10周年全国ツアー in 日本武道館』

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たまらなく不安な夜には、いつもラジオが流れていた。ラジオはわたしたちの夜に忍びこむ。「さびしいのはおまえだけじゃない」と。武道館とライブビューイング会場に駆けつけたのは2万2千人のリトルトゥース。その1人1人にオードリーとの"夜"があるのだと想うと、それだけで胸は一杯になってしまう。しかし、そんな感傷に簡単には浸らせてはくれないのがオードリーだ。武道館という大舞台であろうと、特別なことはしない。「内輪ウケを全力でやりにきてます」と、いつも通りの"夜"を展開させるのだ。そんな照れ方こそが、オードリーなりのリスナーへの信頼で、愛情のように想える。



「早速だけど苦情言っていい?」と始まった最初のフリートークは、若林と春日の父親のイラストがプリントされた特注パーカーについて。カメラに映し出される白いパーカー、若林の父の頭上には"輪っか"が乗っている。「俺の親父が3年前に隠れたんだけどね」という番組の恒例のやりとりが、このライブにおいても導線になっている。若林のトークゾーンでは、父の納骨場所で揉める家族問題を解決に導くため、青森でのイタコ巡りの旅道中を展開。一方、春日は『FRIDAY』で報道されたことをきっかけに、狙っている女との関係がグッと進展し、両家の顔合わせまで行ったことを報告。更に「ヒロシのコーナー」ではその狙ってる女であるところのKさんがサプライズで登場した。このライブに通底しているテーマは、ずばり"家族"だ。であるから、バーモント秀樹、ビトたけし、松本明子、梅沢富美男といったゲストによる盛り上げもさることながら、やはりこのライブの白眉はラストの30分漫才と言えるだろう。この10年のオードリー史をさらいながら、最終的に春日をイタコとして若林の父の魂を呼び寄せるというフリーキーでバカバカしい漫才は、徐々にまるでレクイエムのようなエモーションをまとっていく。春日の肉体に親父の魂を入れて会話がしたいと言う若林。
hiko1985.hatenablog.com
↑のエントリーでは、旅先で繰り広げる若林と父の脳内対話が、漫才における春日の口調と相似していることから、「”オードリー春日”というキャラクターは、若林の父を体現したものなのではないだろうか?」という妄想を展開したわけだが、その推測が美しく補完されていく。やはり、若林のファーザーコンプレックスは、春日コンプレックスと同義なのである。春日の肉体に、自身と父の魂を入れて親子水入らずで会話したいという若林の発想の強烈さこそが、オードリーの漫才の根幹に想えて仕方がない。

隣のキューバ人の家族の旦那がビニール袋一杯に海水を溜め込んで、嫁と子供にバレないように背後から近づいている。ピッタリと近づくと一気にビニール袋を頭の上でひっくり返し、ザザーっと海水をかぶる嫁と子供。家族は悲鳴を上げて爆笑している。しょうもないなー、と呆れながら目をつむる。でも、そんなことがやっぱり楽しいんだよなと納得させられて幸せな気分になる。家族って楽しいんだろうな。

というように、"家族"という関係性に強く惹かれながらも恋人と破局した若林。そして、もしかしたら本当の"父"になるかもしれない春日。『オードリーのオールナイトニッポン』が放送された10年は、ひたすらに自意識と葛藤していた青春が夕暮れを迎え、おじさんとして家族や社会と向き合っていくドキュメントでもあった。青春のその先へ、魂を放り投げよう。未来はいつも100%楽しいから。ライブ終演後のわたし(そして、わたしたち)は、とても静かに、高揚していた。

Netflix『TERRACE HOUSE OPENING NEW DOORS』

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想いを寄せる安未とのドライブデートが上手くいかなかった雄大。得意の料理で挽回しようと、スーパーへの買い物に安未を誘うも、やんわりと断られてしまう。何もかもが期待どおりに運ばすにふて腐れる雄大は、場の空気を悪くしていく。その子どものような振る舞いを、年上メンバーの貴之から諭されるやいなや、「ギスギスした感じはなくせる」と空気を読まずに安未のいるプレイルームに突入していくも、愛想をつかしている安未はその場から立ち去ってしまう。

貴之「失敗したな」
雄大「失敗でした?」
貴之「来るべきじゃなかったな、雄大は」
雄大「なるほど。でも、ここに来れるくらいのスタンスなんだなってのはアピールできましたね」
貴之「アピール??」

雄大は精一杯の強がりをみせるも、堪えきれず泣き出し、何故かピースサインで涙を拭う・・・6話「First Snowfall」から7話「I Erased Hime From My World」にかけて映し出されていた一幕。何を見せられているのだろうと思いつつも、これで一気にテラスハウスシリーズに引き込まれてしまった。身に覚えがあるような、ないような、一人の人間の情けなさ、みっともなさ。テラスハウスには、映画やテレビドラマからは削ぎ落とされてしまうであろう、実に"小さきものたちの鼓動"が息づいているのだ、と確信した。それらは決して物語にはなりえない。しかしだからこそに、豊かな"生"の証のようなものだ。


初めてテラスハウスシリーズに触れて驚いたのは、参加メンバー達は必ずしも恋愛に重きを置いていないということだ。『あいのり』のように、告白がゴールではなく、メンバーたちは恋愛を成し遂げようが、遂げまいが、あらゆる理由で勝手気ままに卒業していく。視聴者が求めるような全うな恋愛ストーリーは実に稀で、ほとんどのメンバーが物語とは呼べないような断片を散蒔いては、テラスハウスから去って行くのである。この「脱・物語性」がゆえに、テラスハウスは様々な人間の唯一無二の"個"の煌めきを映しとることに成功しているのかもしれない。


とは言え、この最新シリーズである『TERRACE HOUSE OPENING NEW DOORS』の序盤は、つば冴と至恩というカップリングによる、スポーツ群像劇と少女漫画を掛け合わせたような起承転結のある美しい物語が用意されていて、それがたまらなく視聴者を魅了するのも確か。だが、この2人の物語で私が最も心奪われたのは、こんなシークエンスだ。つば冴の実家は蕎麦屋を営んでいて、メンバーが蕎麦を食べるシーンが何度か挿入される。初めて店を訪れるメンバーはデフォルトと言える冷たいお蕎麦を注文するのだが、つば冴は必ず温かいお蕎麦を食べている。小さい頃から蕎麦を食べてきた彼女なりのこだわりなのだろう。つば冴と仲を深めた後に、他のメンバーと店を訪れた至恩が温かい蕎麦を注文するのだ!!もしかしたら、「このあいだは冷たいのだったから、今日は温かいの」くらいのことなのかもしれない。しかし、単なる深読みと言われようとも、カメラに映らなかった2人の会話を想像してしまうではないか。蕎麦の注文が冷から温に変わる、この実に些細な事象に、人と人が触れ合って変化していく様が刻まれている、これが私にとってのテラスハウスだ。寮長と呼ばれる31歳の男が、20歳の女の子に惹かれていくなかで、少しでも若く見えるようにと、ご自慢の髭を剃り落すシーンで、落涙した。"個"の煌めきというのは、他者と関わって初めて生まれる。貴方が愛した人は貴方の中に息づき、その逆もまたしかり。そうやって、営みは続いていくのだ。



定点カメラを軸とした一つ一つのショットの美しさ、スタジオメンバーの底意地悪くもエンタメとして成立しているいじり芸、翔平さんの人の良さ、俊亮によってか垣間見えた新世代のジェンンダー観の希望、優衣が体現する人間という生き物の複雑さ・・・などなど言及したい点は山程あるのだけどまとまらないので、またの機会としたい。この軽井沢編は残すところ4話で終了だそうだが、「テラスハウス、もっと早く観ておけばよかった・・・」と後悔させてくれるに相応しいシリーズでした。

くりはらたかし『たんぽぽふうたろうと7ふしぎ』

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今、1番素敵な絵を描く漫画家/イラストレーターはクリハラタカシさんなのです(断言)。やわらかい線で紡がれる所作の中に、生きることの喜びが詰まっています。くりはらたかし名義の新作絵本が発売されました。さすらいのたびびと"たんぽぽふうたろう"が"おおだぬき"を退治するお話。物語に絡んでこないチューじろう、首根っこ掴まれるマメだぬき、おむすびを運ぶおばあさん・・・とモブキャラのかわいさにも細かく言及していきたくなってしまうのですが、おおだぬきとふうたろうの追いかけっこ、その転がるような疾走感がこの絵本の白眉です。カメラアングルとコマ割りの秀逸さ、講談調の歯切れのよいテキスト、何度も声に出して読み返したくなること必至。お母さんもぜひお子様にすすめて上げてください*1。タイトルにもある「もののけがはらの七不思議」はこうである。

①小石をなげいれると 岩が ふる いけ
②手を たたくと おじぎを する スギの木
③のぼると いちばん したに とばされる かいだん
④なでると くびが とぶ じぞう
⑤ふりかえると そこに いる ダルマ
⑥ふむと けむりを はく カエル
⑦かぜも ないのに ゆれる 草

なんともばかばかしくてかわいらしいではありませんか。この"無用の長物"とでも言うようなものたちが絡み合い、そこに"在る"意味を為していくカタルシス。ページをめくるたびに、瞬間、瞬間の煌めきのようなものを感じてしまうのです。



ちなみに、今年1番読み直した漫画はクリハラタカシの『冬のUFO・夏の怪獣』です。

冬のUFO・夏の怪獣

冬のUFO・夏の怪獣

「ひろしとみどり」永遠に読んでいたい。もうすべてが大好きなのだ。発行は信頼のナナロク社から。未読の方はぜひ手に取ってみてください。

*1:Ⓒエキセントリック少年ボーイのテーマ