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青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

堀北真希の引退に寄せて~東京メトロ広告における堀北~


海鮮丼を食べようとしている彼女の写真に無性に惹かれてしまったのだ。シリーズで続いている東京メトロの広告である。これまで堀北真希という女優にさほど興味は抱いていなかったのだけど、今や彼女こそが芸能界における最後の聖域なのでは、と盛り上がっている。笑顔ではないのだけども、無表情でもなく、ただカメラ(=他者)の存在は確かに意識している、といった感じの何とも言えない表情がいい。彼女はそのカメラを構えた人間に対してそれとなく好意を抱いているのだけど、それを器用に表現しきれていない。というような物語が浮かんでくる深みのある表情だ。しかし、この表情は"広告"として考えると、どうなのだろう。同僚と思われる隣席の人の満面の笑みと対比してみると、堀北真希の異様な質感が伝わりやすいのではないだろうか。普通は臨席の笑顔が正しい(でも"普通"って何?)。しかし、何にせよ私はこの表情で、東京メトロ一連の広告シリーズの虜になってしまったのだ。

バッティングセンターでスイングする堀北などは名作の一つに数えていいだろう。野球の事はよくわからない。でも、小さい頃にお父さんがテレビでナイター中継を観ながら谷繁選手のリードを褒めていたのが妙に印象に残っていて、その名残なのか、谷繁はとうの昔に中日ドラゴンズに移籍しているというのに*1、何となく横浜ベイスターズを応援している。試合の結果や順位を気にしたことはないけども、優勝したという話は聞かないので、あまり強くはないチームなのだろうだな、とは感じていて、そこも少し気にいっている。そんな堀北。明日は絶対にホームランだ。

畔に佇む堀北も、また実にいい堀北である。友人と思われる女性たちと視線が全く交差していない。この人達は何が一体そんなに楽しいのだろうか。よくわからないけど、とりあえず笑っておこう。そういう堀北。もしくは、本当はもう存在していない、という”幽霊”としての堀北に想いを馳せるのもいいかもしれない。ちなみに、動画バージョンにはしっかりとストーリーが存在しており、こちらの妄想が介入する余地がないのでダメだ。仕事で失敗した堀北に、ランチに海鮮丼を奢ってくれるイケメンの上司などにはクソを喰わしておけばいい。待望の最新作はBBQの堀北だ。

正直、堀北にはBBQなんぞには参加して欲しくない。堀北は、人当たりが悪いとは言われないまでも、心を許せる友達は実は1人もいない。そうあって欲しい。

みんなといるのにいつも1人

これが東京メトロにおける堀北真希の魅力ではないだろうか。都市生活者の孤独を体現する堀北。このBBQ編もよく観てみれば、笑顔にはどうしたって陰りがあり、あまり楽しそうではない。誰とも交われていない、けど確かにそこにくっきりと存在する堀北。やはり信頼できるな、と僕は毎朝を堀北で通り過ぎて行くのです。



堀北真希の芸能界引退の報を受け、4年前に書いて、少し気に入っていた記事をリテイクした。『野ブタ。をプロデュース』(2005)など、いくつかの素晴らしい映像作品もあるわけですが、そのキャリアは質としてあまり恵まれたものではない。そう考えると、やはりこの東京メトロ広告が彼女の資質を最も体現した仕事のように思う。引退は少し寂しい。しかし、その幕の引き方すらどこまでも、儚く物語的で、グッときてしまった。山本耕史の前髪に光あれ。

*1:2017年現在はドラゴンズの監督を経て辞任までしているという時の流れ