水曜日のダウンタウン「MONSTER HOUSE」3話
これぞ、2018年のベストキスシーン。なんて醜く、なんて美しいのだろう。クロちゃんは「愛されたい」と叫ぶ獣だ。まるでこれまで誰からも愛されたことがないかのようだ。その欠落を埋めるようにして、どこまでも貪欲に愛を求めている。蘭ちゃん*1とのキスを成し得た時のあの狂おしいまでの歓喜、あれはもはや単なる性欲を飛び越え、自らの”実存”を初めて認識したかのような振る舞いではないか。
好きだよ、本当にもう・・・
俺は知らなかった
もう・・・本ッ当に
本ッ当わかってるようで
わかってなかった・・・
めちゃくちゃ好きだよ
忘れんなよ
忘れんなよ、俺
忘れんなよ
キスしたよ、忘れんなよ
観ていて、胸の奥がたまらなく苦しくなってしまった。多分、私たちもまた、クロちゃんと同じように寂しくてたまらないのだろう。本当は醜い存在なのだろう。「変な汗出るのはなんでしょうね」というたむらけんじや松本人志の言葉がそれを的確に表現している。獣になれない私たち。社会で適応していくために、私たちが必死で押し殺している部分を、解放し切っているのがクロちゃんという獣なのだ。
クロちゃんは人間の業を煮詰めたような存在で、誰もが持ってる「欲」や「みっともなかったりカッコ悪かったりする部分」が過剰に表に出ちゃっている人。だから、その一番の異常性は「他人からどう見られるか」を完全に無視できる所だと思う。だけど、それってどこか羨ましくあったりもする。
— 藤井健太郎 (@kentaro_fujii) 2018年11月14日
しかし、とんでもないシリーズが始まってしまったものである。「愚かで醜く、ゆえに愛おしい人間」という古来からあらゆるストーリーテーラーが言葉の限りを尽くしてきたテーマ。クロちゃんと藤井健太郎は、どこまでも敷居を下げながら、それを表現し尽くしてしまうのではないだろうか。
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*1:ミューズとしか言いようがない