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TBSラジオ『神田松之丞 問わず語りの松之丞』2018年9月16日放送回

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最近の何よりの楽しみと言えば、ラジオ『神田松之丞 問わず語りの松之丞』(TBSラジオ 日曜23:00〜23:30)を聞くことなのですが、9月16日放送回、これがもう衝撃的に素晴らしい。とにかく誰彼かまわず聞かせて回りたい衝動に駆られているのです。まずはTBSラジオクラウドにてぜひともお聞きください。

そうそう、先週ですね、グレーなマッサージのことを年中ブログに書いている「エステ猿」と間違えられたって話を延々とですね、30分使って言ってたと思うんですけど、ついつい先週言い忘れたのが、実は先週、「エステ猿」の話をした9時間前に・・・子ども生まれました。

という導入がもう最高かつ象徴的なのだけども、講談師・神田松之丞が"命"を語る。*1第一子誕生、産後の肥立ちで倒れる妻、胃が悪い母ちゃん、口が悪くて嫌われ者だった祖母、グレーなマッサージ、ストリップショーの女性器、吉岡里帆のおっぱい・・・生と性が入れ乱れながら、凄まじい迫力で駆け抜ける珠玉の話芸の30分。話は意図的に脱線を繰り返していく。爆笑問題高田文夫野末陳平吉田照美井上芳雄、蓮見アナと手当たり次第に悪意を振り撒いてみせたかと思えば、

うちのカミさんがねぇ、いいこと言ってたのが
「この子自身が自分の性別を決めるから、男の子か女の子かとかっていうのを人に聞かれた時にいちいち言わないで欲しい」
っていう風にカミさんに言われたの。で、俺一瞬、言ってる意味が分かんなくて。「え?」と思ったら、
「たとえば性同一性障害とか、男の子の体で生まれてきても、女の子の心があるとかいう時に、その子の性別はその子が決めるから、今、男とか女とかそういうのは言わないで欲しい」
って言われた時に、「お前ジェーン・スーより進んでるな」と思って。「22世紀の発想だ」と思って。

なんて風に誠実に照れながら、センシティブなトピックをスマートに忍び込ませていく。病院で出会った小市民の善良さを人情味たっぷりに描写してみせたかと思えば、身内を手厳しくこき下ろしていく。慎重に選ばれた言葉とスマートな語り口ゆえに、聞き辛さはまったくないのだが、どう考えても混濁している。それが、人間という生き物の"複雑さ"を掬いとることに繋がっている。「妻が倒れて混乱しているにも関わらず、たまの贅沢にと注文した出前の寿司を野菜室に入れてから救急車に乗った」という描写の秀逸さには思わず溜息が漏れた。この神田松之丞の語りには、ささやかな日常を営む人間の滑稽さ、愛おしさが詰まっている。

*1:ちなみに9月9月放送の"恋”を語る回も必聴。パトリス・ルコント的世界