青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

最近のこと(2018/01/09~)

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本日発売の『美術手帖』2月号「テレビドラマ特集号」に畏れ多くも寄稿しております。このブログの「最近のこと」を熱心に読んでくださっている方、私が妙に坂元裕二の過去作ばかり観て、あげくに体調を大幅に崩している時期があったことを覚えておりませんでしょうか。この原稿です。私のようなペーペーが『美術手帖』のような雑誌に文章を載せていいものかと悩みに悩みましたが、他の人が書く「坂元裕二」論を読むのも悔しいに違いないぞと決心し、ヒーヒー言いながら書きました。ぜひともお読みください。

美術手帖2018年2月号

美術手帖2018年2月号

山田太一先生と同じ誌面に収まることができて、テレビドラマファンとして本当にうれしいです。ときに「ヒコ」ってペンネーム、気が抜けていて締まらない気がするので、誰かかっこいい名前ください。阿厳とかそういうやつ。



すっかり年が明けたことに慣れてしまった。2018年にもうしっくりきている。2017年のテレビについて書きそびれていたことがあった。たまたまついていた去年の日テレの24時間テレビの1コーナー。「目がほとんど見えなくなってしまったお母さんがある機械を使って、初めて子供たちの顔を見る」という企画をやっていて、機械を装着して子供を見つめたお母さんの第一声が「へぇ〜かわいいじゃん」(言い方もかわいい)だったのだ。それが軽くて新しくて凄く強いものに感じて、グッときてしまったのだ。誰か観ていた人いないだろうか。


火曜日。成人の日を含んだ連休明けで、私にとっては断食明けだ。とは言え、いきなり何でも食べていいわけでなく、プログラムによると「朝:酵素ドリンク 昼:酵素ドリンク 夜:薄く出汁を効かせた大根汁、きゅうり」とある。寺の修行僧だってもうちょい食っているだろうというようなメニュー。しかも、メインの食事が汁物だというのに、食前にミネラルウォーターを300ml飲み、その後に梅干しをほぐした白湯を300ml、さらに大根ときゅうりを食べた後に600mlをもう1セット飲み干せ、と書いてある。これはもう水攻めである。1582年、備中高松城の戦いである(がんばれ、受験生)。しかし、この水攻めがよかった。汚い話ですが、食事を終えるやいなや、腸の中のすべてが洗い流されるんじゃないかというような便通体験が待っていたのです。これはスッキリ。久しぶりに口にした固形物はたまらなくありがたいものだった。茹でた大根の甘く感じられること。きゅうりは麹味噌をつけて食べた。慎ましい食事をありがたがりながら、録画しておいたテレビ東京の新春ドラマスペシャル『娘の結婚』を観た。父親役を演じた中井貴一という役者の魅力だけで、ドラマは成立してしまう。中井貴一の名付け親は小津安二郎であるからして、彼ほど”娘の結婚”に心を痛める男やもめを演じるにふさわしい俳優は他にいないだろう。スーパーで一切れしか必要なくなった鮭を手にして泣くシーンは臭いが、ホロリときた。いいシーンはたくさんあるのだけど、全体的な印象はいまひとつ。一度解決した問題をこねくり回して使い過ぎだし、原田美枝子が何度も偶然を起こすのも意図的なのだろうけども、ちょっと首を捻った。中井貴一と波留の父娘のシーンにもっと尺を費やして欲しかった。中井貴一の作るハヤシライスが食べた過ぎて、きゅうりを齧りながら泣いた。中井貴一倉本聰の『ライスカレー』(1986)というドラマに出演していたが、確かにカレーというよりハヤシライスがよく似合う。2018年になって突如としてEliot Smithのリバイバルブームが私の中に巻き起こっている。

EITHER/OR

EITHER/OR

XO

XO

天使という形容が本当にふさわしいのはこのヨレヨレのジャンキーがつまびくギターの音色と歌声だ。



水曜日。この日もまだまだ回復食。朝と昼は酵素ドリンク。ちなみに酵素ドリンクはウィルキンソンなどの炭酸水などで割るとよりお腹も膨れてオススメです。夜はおかゆ、大根汁、きゅうり。きゅうりは色々調理して食べた。酢漬け、ナムル風、梅和え、昆布和え、茗荷和え。ざっと4本分は食べてしまった。世間ではきゅうりダイエットなるものが流行っているらしく、スーパーでも「売れています!」とシールが貼られていた。お風呂でロアルド・ダールの『チョコレート工場の秘密』を読んだ。

チョコレート工場の秘密 (ロアルド・ダールコレクション 2)

チョコレート工場の秘密 (ロアルド・ダールコレクション 2)

ティム・バートンの映画でお馴染みのあの作品だ。イマジネーションの洪水に溺れる。しかし、柳瀬尚紀の訳は本当にファンキー。FORKばりの押印主義者である。押印主義って何か?知らねえ。身体を清めたところ、満を持して『anone』の放送開始。正座して鑑賞した。「二郎はもはやラーメンでなく、二郎というジャンルだ」というようなことが、坂元裕二とテレビドラマの間にも起きていて、その在り様は本当に唯一無二だ。二郎に対するラーメン大や豚野郎のように、そろそろテレビドラマ界にも坂元裕二インスパイア系が出てきてもいいところだが、それすら現れてこない坂元裕二の独自さよ。もしかしたら、シナリオコンクールなどでは坂元裕二っぽい脚本の習作で溢れていたりするのだろうか。まだ1話、どう転がっていくのかわからないが、田中裕子と瑛大がいるので大丈夫だろう。小林聡美阿部サダヲがいるのも落ち着くし、広瀬すずはやはりあの世代において群を抜いた存在感を持った女優だ。ときに、田中裕子はどことなく小沢健二に見えなくもなくて、小沢健二椎名林檎から『カルテット』を勧められて観て感激し、満島ひかりと「ラブリー」を歌った。これはもう坂元裕二×小沢健二の対談を望む。山田太一×小沢健二という素晴らしい対談が過去にあるわけで、誰かが暗躍すれば実現するのでは。観られなかったら悔しくて気絶してしまうので、トークショーではなく誌上対談にして欲しい。何の脈絡もなく、寝る前にglobe「Is this love」のMVを観た。

このミュージックビデオに制作費1億円かけたらしい。それはさておき、この曲がglobeで1番好きだ。



木曜日。本当はまだ回復食期間だが、いい加減飽き飽きだし、そんなにやわな胃腸じゃないわよということで、お昼に野菜煮うどんを食べました。糖質が美味すぎて震えた。思い切って、食事のあとに珈琲も飲んだ。カフェインも控えるように書いてあったので、1週間禁じていたのだ。断食をして1番よかったのは、食事に対して出会った頃のような気持ちを取り戻せたことだ。何を口にするにもときめいてしまうし、ごく自然にスキンシップも発生する(箸で裏返してみたり)。ふとした瞬間に誰か(食事)のことを想う、というのがこんなにも素晴らしいことだったとは。出会えたことに感謝。たった3日でこれである。たとえば、マンネリ関係の夫婦や恋人なども、1年くらい会うことさえも禁じてみたら、新鮮な気持ちで向き合えるようになるのだろうか。その1年をどう過ごすかは倫理が問われるところである。仕事の後、映画を観るために新宿へ。夜ご飯は「MUJI CAFÉ」で味が薄めのおかずで構成した定食を食べた。久しぶりの白米に感謝。食事を終えても、映画の上演開始までまだ時間があったので、オッシュマンズでチャンピオンのスウェットのアメリカ製と中国製の生地の質感の違いを考察して暇を潰した。アメリカ製は硬かったです。シネマカリテの小さなスクリーンで大九明子勝手にふるえてろ』を鑑賞。
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すでに絶賛の嵐を浴びている映画ですが、なるほどこれがもうすんばらしかった。松岡茉優の類稀な資質に、「大好き!」となってしまう。彼女なしには成立不可能な作品だろう。これが彼女の最初の主演映画作だなんて、出木杉くん。ある種の人間にとっては、太宰治の『人間失格』以上に、「私はヨシカ」となるのではないだろうか。最近流行りの応援上映、まじで興味ないと思っていたが、ヨシカの応援ならしたい。同期飲みや同窓会のシーンでは声を張り上げて「帰ろ!もう帰ろ!」と叫ぶのです。”こじらせ女子”と聞くと食傷気味な気持ちにもなるかもしれないが、この『勝手にふるえてろ』には既存の作品ではお目にかかったことのないやりとりや台詞に満ちている。爆発するほど満足した。そういえば、何年か前に星野源が「”こじらせ”という世間からのイメージに殺されそうになった」とインタビューで話していて驚いたんですが、こないだの復活「ドゥワッチャライク」で小沢健二がまったく同じようなこと(小沢健二の場合は王子様という偶像に)を書いていて、椅子から転げ落ちた。星野源はまじで小沢健二の後継者なのかもしれない。「邪悪、ヴォルデモート、あるいは田島カンナ」は名文でしたけど、散々そこにつけこんでお金稼ぎしてたのに・・・と思ってしまう。やることだけやっておいて、「やっぱりこういうのよくないよ」とか言い出すのはやめよう。帰宅して、時空の歪みの解消された『ハライチのターン』を聞いて、安心な気持ちで寝た。



金曜日。朝起きて、もう週末か、とうれしくなった。冷え込みは強まっている。書評家の豊崎由美さんが坂元裕二ドラマは佐藤正午の小説を彷彿させるというようなことをTwitterで呟いていたので、すぐにも影響受けやすい私はさっそく本屋で『鳩の撃退法』を購入した。

鳩の撃退法 上

鳩の撃退法 上

タイトルからして最高にイカしている。上巻の半分くらいまで読んだのですが、グイグイと引きまれるおもしろさ。作中に登場する『ピーター・パンとウェンディ』(石井桃子訳)を古本でゲットしたい。最近、児童書を文庫じゃなくて単行本で集めたい気持ちが高まってきているので、児童文学に強い古本屋がありましたら、ぜひとも教えてください。帰宅して、お風呂で『ぐりとぐら』でお馴染みの中川李枝子×大村百合子のデビュー作『いやいやえん』を読んだ。
いやいやえん (福音館創作童話シリーズ)

いやいやえん (福音館創作童話シリーズ)

何がおもしろいのか言語化しがたいが、どうにも心惹かれる不思議な1冊で永遠のマスターピース。中川李枝子×大村百合子の作品はやはり『いやいやえん』と『そらいろのたね』がとりわけ好きだ。
そらいろのたね

そらいろのたね

どちらも宮崎駿がアニメーション化しているらしいのだけども、まだ観たことなくて、口惜しい。お風呂から上がり、野木亜紀子の待望のオリジナル脚本ドラマ『アンナチュラル』1話をリアルタイムで観る。

これが本当におもしろくて、たいへん興奮しました。『anone』と『アンナチュラル』の2本が同時に観られる今期はテレビドラマファンにとって忘れられないクールとなりそう。『anone』のエントリーがエモ過ぎたので、『アンナチュラル』は軽いテイストにしようと試みたのだけども、最後にエモが顔を覗かせた。エモに寄り過ぎないいい文章というのを模索している。深夜までかけて、Netflixで『DEVILMAN crybaby』を最後まで鑑賞する。おもしろかったが、高校時代に原作の『デビルマン』を読んだ時と同じくズーンとなった。しかし、何故か手放せずに今でも本棚にある。『デビルマン』と『漂流教室』は私にとってそういう漫画だ。『DEVILMAN crybaby』は「悪魔の正体は現代生活に不満を持つ人間である」というのがデマではなく実は本当のことである、というような描き方をしている。序盤ではとりわけ性的なフラストレーションに特化していたのだけど、後半に進むにつれその演出は薄れていく。ちょっと中途半端に感じてしまった。そういうシーンを書きたいからNetflixを選んだというのではなく、Netflix(=地上波じゃない)であることを強調したいがために性的描写を強めたという印象になってしまう。セクシャルマイノリティの組み込み方なども、とってつけた感がある。とびきりおもしろいアニメーションであることは否定しないのだけども。



土曜日。想定していたよりずいぶんと早起きしてしまったので、ロアルド・ダールの『魔法のゆび』

魔法のゆび (ロアルド・ダールコレクション 3)

魔法のゆび (ロアルド・ダールコレクション 3)

  • 作者: ロアルドダール,クェンティンブレイク,Roald Dahl,Quentin Blake,宮下嶺夫
  • 出版社/メーカー: 評論社
  • 発売日: 2005/12/01
  • メディア: 単行本
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を読みながら朝風呂に浸かる。そして、『美味しんぼ』を観た。最近、ちょこっと空いた時間にNetflixで『美味しんぼ』のアニメ(デジタルリマスター版!!)を観るのにはまっている。面白いし、山岡さんの声かっこいいし、夕方みたいな気持ちにさせられるし、最高です。心の処方箋にしたい。突如のデジタルリマスターに、一部のマニアの間で評価の高いサントラの再発、2017年の『美味しんぼ』リヴァイバルは一体何だったのだろう。ちなみに、『美味しんぼ』はamazonプライムにもあります。さらに、amazonプライムには『彼氏彼女の事情』、Netflixに『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』が登場。これはTSUTAYAも潰れていくわけである。お昼頃に横浜へでかける。まずは、中華街で「愛群」で牛バラ飯と青菜炒めとシューマイを食べた。
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美しきかな、牛バラ飯。横浜中華街でやっと行きつけの店を見つけることができてうれしい。あとは美味いゴマ団子の店を探し当てようとウロチョロしていたら、通りの外れにある古びたお店の店主に話しかけられる。「他のお店は朝に一度揚げるだけだけど、うちは1時間に1回揚げてるんだよ」「他のお店のはカチカチだけど、ウチのはプニプニ、触ってみて」「こし餡を使ってるの今はウチだけ、他は全部つぶ餡、でもつぶ餡はオススメしない」・・・・何故わたしがゴマ団子を求めているのがわかったのだろう。テレパシーと目と目で通じ合えたなら、というやつか。実際、このお店のゴマ団子はとても美味しかった。店の名前や性格な場所を確認し損ねてしまった。夢じゃないといいのだけど。かねてからの疑問なのですが、中華街ってなんで天津甘栗だけ売り方が異様に強引なのですか。肉まんとかゴマ団子は全然、押し売ってこないのに。天津甘栗だけ過酷なノルマが課されているのだろうか。世界の秘密に一歩近づいたところで中華街を後にし、眼鏡屋を少し巡った。ここのところ、質のいい眼鏡への執着が再び湧いてきている。OLIVER PEOPLESなどは別格として、私が学生の頃は、高価で感度の高い眼鏡と言えば、アランミクリ、Japonism、9999などが主流だったような気がする。しかし、今はどのショップにもあまり置いていない。特にアランミクリなどはすっかり時代遅れのブランドになってしまったらしい。確かに流行りのデザインもすっかり変わった。知らない内にOliver Gold Smithの新作を発表するラインも立ち上がっているではないか。かっこいい眼鏡は何本だって欲しい。上質な眼鏡は平置きされていると本当にかっこいいのだけども、かけてみると途端に色褪せていく。最高の眼鏡を探して、険しい道は続く。横浜駅ジョイナスの地下で「オギノパン」が販売されていたので、先日たいへん感銘を受けたオランダブールを購入した。さらに看板商品のアンパンと明太コッペパンも買った。あとで、食べてみたところ、やはりオランダブールが飛びぬけて好きだ。表面のゴマがちょっと焦げるくらいの勢いでトーストして食べて欲しい。損はさせません。日本大通りに移動して、KAATでロロ『マジカル肉じゃがファミリー』を観劇した。まっこと素晴らしかった。ひさしぶりのロロフルメンバー集結ということで、とにかく舞台上が華やかで目のやり場に困るほどに贅沢。全員が良かったが、とりわけ板橋駿谷の母が最高。台所で母が夕飯を作っていると家族がメニューを聞いてくるシーンが何気ないのだけど、凄く好きだ。「オムライス?」「正解~」といったやりとり。舞台上にケチャップの匂いが香り立つ。もうほんとやりとりがいちいち良くて、こんなの他に誰も書けない!って興奮した。一見地味なのだけども、ラディカルでポップ。あまりに楽しい演劇体験だった。ネタバレになるので、まだ書かないでおくのだけども、劇中で私の大好きなJ-POPナンバーが二度流れる。ウキウキしてしまった。何度だって観たいのだけども、横浜に赴く敷居は高い。この日放送の『ゴッドタン』の「西野VS劇団ひとり」、めちゃくちゃおもしろいので、TVerでの視聴推奨です。



日曜日。本棚が欲しくなる。安くて丈夫な家具を売っているお店が八王子のほうにあるというので、車を借りて訪ねてみた。そこで「タイムズ」のカーシェアリングに登録してみることにした。タイムズの駐車場に置いてある車を借りられるシステムなのだけども、ネット上の手続きだけでOKで気軽だし、分単位でも借りることができる。たしか15分以内は無料なので、そんな使い方はしないだろうが、ちょっと先のコンビニまで車を使うこともできる。調べてみると家の周りにはカーシェアに対応したタイムズ駐車場が複数あった。これは結構便利な気がするので、ちょっとの期間使ってみようと思う。遠方のサウナに行くのにも使いたい。しかし、最近は車を所有したい欲もムクムク湧いている。スピッツ槇原敬之などを流しならが家具屋までドライブし、本棚を2つ購入。配送料は高くついたが、それでも割安だった。届くのが楽しみである。帰りにスーパーに寄って、安くなっていた牛肉を買い、葱と炒めて食べた。『西郷どん』に瑛太が出てきた。いい瑛太だった。