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衿沢世衣子『うちのクラスの女子がヤバイ』2巻

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今しかない無用力をもう少しアピールしようかと思った

コントロールも習得もできないし
ある日 突然消えちゃうってのも悪くないかもね
私たちの無用力

あぁ、なんて完璧な”思春期”のメタファーか。思春期特有の身も心も収まりが悪いゴワゴワとした異物感、それらが”超能力”として放出されるというのは、スティーブ・キングの『キャリー』といった古典からのお決まりの筆致なわけですが、それらが何の役に立たない所か、害にもならないだなんて!よりリアルに僕らの思春期って感じ。例えば、今巻に登場するキャラクターの無用力は、「悪さを企むとお好み焼きのにおいを発する」ですよ。なんて意味がないSFなんだ!しかし、こういった細部を”豊かさ”というのです。クラスが着々と進めている文化祭の出し物がプロレス興行なんだけど、それがドラマとして一切前に出てこない所とか、1巻で活躍したおにぎりのミクニさんがだいたいいつも机に突っ伏して寝てたりとか、ページの隅までもが愛おしい。1巻のエントリーにて今作のそこはかとない髙橋留美子ぽさを指摘しましたが、2巻は冒頭から、かわいいものを見るとモフモフのぬいぐるみに変化してしまう無用力。やっぱりどことなく『らんま1/2』じゃん。



さて「うちのクラスの女子がヤバイ」というタイトルに反して、クラスの男の子達は、女子の突拍子もない無用力に困惑しながらも、その事象をネットに書きこんだりするのでなく、スッと受け入れてサッと手助けする。多分僕らが上手にできなかったであろう、正しき思春期のボーイ&ガールのコミュニケーションがここには描かれている。そして、今巻ラストでは、ヤマモト君の突然の引越に、繋がらない携帯電話。そしてロックソングに込められた点子アンダーソン*1の恋心、と胸震えるようなラブストーリーの断片が。3巻が待ち切れないぜ!



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*1:このネーミングの元ネタはケストナーの『点子ちゃんとアントン』ですね!