青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

インド料理”ビリヤニ”の衝撃

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この夏、サウナとポケモンと並び私の心を占領しているのが”ビリヤニ”である。ビリヤニ、何とも愛嬌のある響きだが、これまで耳馴染みのない言葉だった。きっかけは愛読しているはてなブロガ―U次郎さんの日記でした。何やらビリヤニというのは主にインド周辺の国で食べれているお米の炊き込み料理のことらしい。誰が決めたのやら「世界三大炊き込みご飯」に松茸ご飯、パエリアと共に選ばれている。これが美味い、とにかく美味い。おそらくイメージとして最も近いのは、惜しくも「世界三大炊き込みご飯」から漏れてしまったピラフだろうか。でも、全然違う。ビリヤニは、お米とグレービー(カレー)ソースを交互に層状にして煮込んで作る。「カレーと層状にして煮込む」のです。あぁもうこの字面だけで美味そうではありませんか!お店によって異なるのだろうけども、ニンニク、タマネギ、ショウガにナツメグ、クミン、ローリエ、シナモン、コリアンダー、ミント、ギー、メース、カルダモンなど、中には聞き慣れないようなスパイスが多数使用され、一見は単純な炊き込み料理でありながら、実に複雑な味覚のハーモニーを展開する。スパイスの魅せる旨味というのは、出汁文化にどっぷりであった私のような人間にとって、新たな扉をこじ開けられるような体験だ。ビリヤニを夢中で頬張りながら「世の中にこんな旨味が存在したのか」と唸っているのであります。私の中に蠢いていたチャーハン欲は、現在全てビリヤニに注がれている。



インド料理屋に行くと「基本のチキンカレーは食べたいし、いやいやサグカレーも食べたい・・・」といった風にカレーの事で頭が一杯になってしまうわけですが、そこを少しの冷静さと勇気でもってメニューの隅々まで目をこらしてみれば、確かに”ビリヤニ”の項目が存在する事を発見できるだろう。コマ目に調理できない事、炊き込み技術の難易度、などがネックとなり、日本でビリヤニを取り扱っているインド料理はまだ少ない、と書かれたネット上の文献を見かけた。確かに事前予約が必要な店も多いようだが、ここ数年で隠れたブームが訪れているようで、取扱店は増えている印象。しかし、ビリヤニという料理は本場インドでも定義が曖昧のようで、当然日本で出されるビリヤニにもそのクオリティのばらつきは大きい。例えば、私のビリヤニデビューであるこちら。
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長粒種のお米ではあるようなのだけども、粘り気が強く、米というよりは茹でた麺のよう。味は単調で、すぐに飽きがくる(にも関わらず量は異様に多い)。もしかしたら一切炒めずに炊いただけの本格式なのかもしれないのだけども、どうにも私の口に合わなかった。ビリヤニ道への入口で躓き、心が折れかけたのだが、何とか再びファイティングポーズを掲げた。次に挑戦したのは近所にあるインドカレー屋。何度も訪れながら、今まで気にした事もなかったが、ここにもビリヤニはメニューに存在していた。カレーは文句なしに美味い店なのだが、ここのビリヤニはこちら。
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美味しい事は美味しいのだけども、”これじゃない”感が凄い。そもそもこれは日本米では。粘度が強く、味もチキンライスのよう。あまりに日本人の口に寄せられ過ぎても醒めてしまう。難しい食べ物だ。そして、3軒目にしてやっと出会えたのがこちらのビリヤニ
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ケララバワン」のチキンビリヤニだ。漫画家・流水凛子の旦那さんが経営している練馬の人気店。いやはや、衝撃を受けてしまった。口に運ぶ度に広がる風味、旨味。「これがビリヤニか!」と虚空に向かって叫んだ。アクセントのパクチーが舌にも目にもうれしい。カレー以外のインド料理が大変充実していて、ドーサにパパドゥ、どれを食べても最高に美味い。
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あまりに美味さに翌日のランチにもこの店に訪れてしまった。ビリヤニのスパイスにはそんな中毒性もあるのかもしれない。二日目はこの店の名物であるらしいシーフードビリヤニを注文*1。エビ、カニ、ホタテなどの魚介の濃縮された旨味をスパイスが更に引き立てる。舌は喜びの舞を踊り、脳内に快楽物質が飛び散る。あぁ、美味しい。おそるべし、ビリヤニ。まだ一合目に辿り着いたばかりのビリヤニ道、その奥深さに今から震えが止まりません。インド料理屋に行ってカレーを頼まない、という行為のなんと甘美なことか。みんな食おうぜ、ビリヤニ

*1:トップにある写真がそれです