青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

Magic,Drums&Love『Love De Luxe』

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2013年、住所不定無職という4人組が『GOLD FUTURE BASIC,』という大傑作アルバムを放つ。

GOLD FUTURE BASIC,

GOLD FUTURE BASIC,

ポップミュージック史に燦然と輝くはずのそのアルバムは一部のポップフリーク(貴方や僕)に熱狂的に歓迎されるも、世の中からはプイっと無視されてしまう。本当に信じられないことに。その後、ひっそりと姿を消してしまう住所不定無職。その中心人物であり希代のメロディメイカーであったザ・ゾンビーズ(の2ndが好き)子ちゃんが悪魔と契約でも交わしたのだろうか、「性別すら越えたっつう事?」(©スチャラダパー)てな感じに、Fa$tta Money Talkとして魔界転生。住所不定無職のメンバーを呼び集め(ヨーコちゃんを除く)、更に撃鉄のベーシスト田代タツヤと謎のソウルマンWhite Fire Shirohiを加えて、Magic,Drums&Loveという新バンドを「魔法とドラムと愛」の元に結成。通称はマジドラ。カジヒデキからの寵愛やNegiccoのアルバムへの参加などでご存知の方もいらっしゃるかもしれない。
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わお、現代の米米CLUBみたい。軽薄でアダルティ。ちなみに左から2番目の悪魔のような出で立ちの男がFa$tta Money Talkだ。あぁ、麗しきザ・ゾンビーズ子ちゃんの面影やどこに。サポートドラマーとFUNK O'ney"The Diamondのベースプレイ、White Fire Shirohiの歌唱力が加わり、住所不定無職時代に比べ、バンドのフィジカルは各段に向上された。結成から1年の期間を経て、ついにリリースされた1stアルバム『Love De Luxe』がまた抜群にいい。『GOLD FUTURE BASIC,』においてもその芽を見せていた宇宙規模なファンキーマナーはより研ぎ澄まされ、Daft Punkの『Random Access Memories』(2013)以降といった感じのアーバンメロウなディスコソウルを基調としたサウンドを更に展開させている。勿論、住所不定無職が持ち合わせていたジャンル横断のハイブリット感覚も健在、ちっとも懲りてない(fuckin' copyright!)サンプリングセンスも炸裂しております。デビュー7インチのVAN McCOYとEarth, Wind & Fireのどストレートなオマージュには腰を抜かしたものです。
youtu.be
この「”Fushigi ” Tonight」はさらに「ときめきトゥナイト」でもある。作詞方面でもオマージュは止まらない。個人的に1番グッときたのは③「Miami」だろうか。「Juxtaposed with me」だとか「ルージュで窓にキスマーク」だとか、何やらポップミュージックフリークの記憶を刺激するフレーズを散りばめながら、音楽が孤独な旅人を慰める様を描写する。極めつけはこのコーラスだろう。

I'm at the airport. because I listen to this song.
LETTERS, LIGHTS, TRAVELS ON THE STREETS
So sweet so lonly heart

(10年前の僕らは)胸をいためて「僕らが旅に出る理由」なんて聞いてた!まさに魔法的な編み込み。



Magic,Drums&Loveのライブ動画はもうみんな観たかしら。
youtu.be
「アニソン?」などと揶揄された住所不定無職はもういな。メインを張るYURINA da GOLD DIGGERは堂々たるボーカリストっぷりである(ドラム叩きながら、ここまで歌っちゃうのだ)。新ボーカストWhite Fire Shirohiの歌声は、ソウルマナーでありながらも”真っ黒”と言うよりは、そこはかとない"藤井フミヤ"感と言いますか、程良いセクシーさがいい塩梅。そう、『Love De Lux』には洗練された夜の匂いが煌めく。住所不定無職が持ち合わせていたチャイルディッシュで破滅的なアマチュア精神を愛していた身としても少し寂しくもあるのですが、安心して欲しい。
youtu.be
このTHE CLASHのパンククラシック「Train in Vain(Stand by me)」のカバーを挙げるまでもなく、Magic,Drums&Loveもまたアナーキズムを隠し持ったバンドだ。なんたって、パンクの魂を乗せて走り出した列車は次の楽曲で「KISS KISS」(大名曲!!!)では今世紀最大級のラブストーリーを運ぶ”Love Train”に変貌している。この自由さをアナーキーと呼ばずに何と呼ぼう!



Fa$tta Money Talkはゾン子時代から一貫して、自身のバンドを「Rock'n Roll」と公言してやまないわけですが、ここで”Rock'n Roll"というのは、矢沢永吉でも内田裕也でもなく、はたまた

JAKAJAAAAAN!!!!!

というギターの響き(住所不定無職の1stシングルのような)でもなければ、ガチャガチャとしたガレージサウンド(住所不定無職の1stアルバムのような)の事ではもない。近いのは山下達郎が自らの音楽を”ロックンロール”と呼ぶ時のフィーリングだろう。Fa$tta Money Talkの言葉を借りるのであれば、歴史に名を刻む偉大な音楽家への憧れの”エクスプロ―ジョン”、その時に放たれるエネルギーをロックンロールと呼ぶのだ。であるから、今後Magic,Drums&Loveや住所不定無職(こちらも活動は継続予定らしいので再開が待たれる)が揺れるビートでラップを始めても、ディープなハウスビートを打ちこみ出しても、それらはロックンロールと呼ばれる事だろう。

ボクはキミのビートルズになりたいっ!!

と叫んでいた活動初期から変わらぬ、Fa$tta Money Talkの音楽への無限の愛、ロックンロール。それこそが、我々を虜にする魔法なのである。



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