青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

SMAP解散騒動によせて

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ポップカルチャーの原体験がSMAPだったからなのか、自分がこの歳になってもあらゆるポップカルチャーの喜びを享受しながら楽しくやっていけているのは、やっぱりSMAPのおかげなのだな、といったある種の敬虔さを伴った感謝の気持ちを彼らに抱いている。だからまぁ、わりと盲目的にファンです。キムタクの選択は常に正しくてかっこいいのだ、と信じています。


ジャニーズ、フォーリーブスからの筋金入りのジャニオタを母に持ち、私自身も幼い頃から少年隊と光GNEJIが流れる環境で育ってきました。ちなみにこの環境はKAT-TUNデビューくらいまで続きまして、往年のジャニーズJr.メンバーなどの知識に関してはそんじゃそこいらの女の子より詳しいです。90年代に入りますと当然のように、我が家は若き木村拓哉旋風に巻き込まれます。常にSMAPの音楽や番組のテープが部屋には流れていて、私にとって音楽とはSMAPの事だった。今でもそれはそんなに大袈裟な文言ではないな、と思っていて、あの5人(ないし6人)のユニゾンはこの国の大衆音楽とイコールである。当時、ヘビーローテーションで流れていたのは『愛ラブSMAP!』(テレビ東京)や『アイドルオンステージ』(NHK)といった番組で、そこで披露されるパフォーマンスをいつも楽しみにしていた。とりわけ印象的だったのは、12枚目のシングル「Hey Hey おおきに毎度あり」で念願のオリコン1位を果たした後の「がんばりましょう」「たぶんオーライ」「KANSHAして」といった歌謡ファンクの名曲を連発していたあの季節の無敵感でしょうか。もう本当にはちきれんばかりにセクシー。「どんないいこと」「胸騒ぎを頼むよ」といったブラック・コンテポラリー(まだR&Bという言葉は浸透していなかったのだ)なバラードもまたバッチリだったのだ。あぁ、時代を追って書いていると永遠に終わらなそうである。それから現在までずっと彼らは私のヒーローなのです、という形で省略してしまっていいでしょうか。尖っていたのか何なのか「カラオケは絶対に歌わない!」と頑なに拒否するティーン時代を過ごしていたのですが、ある日「SMAPならどう?」と振られて、「す、SMAPなら」と易々と歌い出した高校生3年生の私のエピソードはかわいいので記させて下さい。ちなみにその時歌った、私の生涯初カラオケナンバーは「朝日を見に行こうよ」です。

いつかこの桟橋まで 朝日を見においでよ
あの日口ずさんだ 歌が聴こえるでしょう
そうさ戻っておいでよ 時がずっと流れても
この朝日は変わらないよ いつでも待ってる


SMAP「朝日を見に行こうよ」

解散報道や謝罪会見にはひたすら胸を痛め続けました。あの謝罪会見をして「SMAPも我々会社員と同じだったのか」という論調があるのだけど、果たしてそうでしょうか?あの5人が自分を犠牲にしてまで続けたいと思ったのはSMAPという国民的スーパースターなんですよ。あの騒動は社会の縮図とかそういう陳腐な枠に収まらない話だと思うのです。あの謝罪会見のグロテスクさは目を覆うものがあったが、そんな事はメンバーも承知だろう。彼らが生活に困っているという事はないだろうし、事務所の圧力があったとしても、それなりに芸能界でやっていける能力もあるはずだ。だが、彼らは独立の道を断ち、あの謝罪会見を選んだ。どれほどの覚悟があそこに秘められていたんだろう。あの屈辱を受け入れてでも、彼らが続けたいと願ったのがSMAPというスーパースターなのだ。魔法がとけてしまった?いやはや。

笑顔抱きしめ 悲しみすべて
街の中から消してしまえ
晴れわたる空 昇ってゆこうよ
世界中がしあわせになれ

こう歌われるSMAPの最重要ナンバー「オリジナルスマイル」を”あの”2011年の紅白歌合戦で披露する。あの瞬間から、SMAPはこの国の芸能史において誰も突入した事のない領域に突入したと考えておりまして、その魔法はちょっとやそっとじゃ溶けないのです。負けるなSMAP! 〜Never give upでございます。



ここからは余談になるのですけど、謝罪会見後に、テレビ放送史に燦然と輝く名企画『SMAP×SMAP はじめての5人旅』(2013年放送)をYouTubeで観直しました。それはもう夢のように幸福で、本当に劇薬を飲んでしまったんじゃないかというくらいに心臓が痛くなる代物でした。私が観たいSMAPが全部詰まっている。始まるやいなや木村クンが「とりあえず、コンビニ行かね?」って提案するのですけど、さすがと言いますか、欲しい画を瞬時に理解してらっしゃる。そうなのです、当たり前の事をするSMAPが観たいのだ。コンビニで買い物するSMAP、場末のお好み焼屋で乾杯するSMAP、遊園地ではしゃぐSMAP、高速道路を運転するSMAP、プリクラを撮るSMAP、温泉に入るSMAP、カラオケを楽しむSMAP etc・・・国民的スーパースターである彼らから失われた時間、もしくは誰にも知られる事なく流れている親密な時間、それらが画面の前に立ち上がってくるあの得も言われる胸のざわめきは、まるで世界の秘密に触れたような気分にさせられます。カラオケの時の吾朗さんの「この歌詞やばいよね!?」とか中居クンの号泣、剛&慎吾の全編に溢れる弟感にもやられましたが、個人的には、冒頭の

木村「だぁから、なんでワイパー動かすんだよ」
中居「乗ってみろよこれ、だってウインカーこっちなんだもん」

というツートップお兄さんのなんでもないやり取りに完全に心臓が止まりました。今は魂でこれを書いています。