青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

古沢良太『デート~恋とはどんなものかしら~』5話

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あの素晴らしき邪悪な依子(杏)のアヒル口が復活。武内英樹の演出回は、バイクでの疾走だとかサイボーグのたなびくマフラーだとか、映像の感度が高まる。カットの繋ぎのリズム感も見事にロマンチックコメディ然としてい、ウットリしてしまう。"赤"を基調にした衣装、美術もお見事だ。ラブホテルをチェックする赤ペン、天狗のお面、血のしたたるスッポン料理の数々、それを食べ火照る頬、まむしドリンクとうなぎパイのパッケージ、依子のバイクを止める信号。これらの"赤"の連なりは、実は1話から徹底されている。依子のロングコートやアウトドアジャケット(3話では巧に会う予定ではなかったので服は赤くない)、中華街の門、プロボーズ時のレッドカーペット、殴られた巧の顔面の痣、真っ赤なお鼻、サンタクロース、肩たたき券、鍵についたリボン、そして、サイボーグ009と003・・・誰かを想う事の色である"赤"が画面に託され続けている。極めつけは、依子が部屋の真ん中で勤しむトレーニングボールの色もまた"赤"であり、彼女はいつだってそれを必死に振動させている。


終盤の依子のスクーター登場シーン。4話において、サンタクロースの完璧なコスプレ姿でスクーターにまたがる彼女に対して巧(長谷川博己)は

そんなわけない スクーターが同じだけだ
通り過ぎろ 通り過ぎろ 通り過ぎろー!

と拒絶するわけだが、5話における、サイボーグ003の恰好でのスクーターにまたがる彼女の姿は希望として描かれる。その反復と差異。また、依子に重要な変容が見てとれる。「中華街でも観に行きますか」と言えばただじっと中華街を眺め、「潮風はいつも心を和ませます」に対して「潮風はプラクトンから発生するイオン化合物が含まれているからでしょうね」と返していたあの依子が、急いでいるのにも関わらず(おそらく)法定速度を守って登場した自分を

遅くなってすいません009
調べた所、どうやら003には加速装置が備わっていないようなので

と表現する。物事を合理的にしか捉えられなかった彼女が「巧の世界」に歩み寄っている。巧の言う通り、人生って何かちょっと楽しいのかもしれない。巧の不器用ながらも真摯な想いが、途切れ途切れの留守番電話という形で、特別な聴覚を備える003(依子)に届く。あまりに感動的なプロットではないか。コミュニケーション不全で恋愛不適合者の2人が、普遍的で美しくて楽しい恋のために、身体をサイボーグに改造してまで、立ち向かう。5話にして完全にこのドラマに心を持っていかれました。今期ダントツNo.1だ!!


余談。3話で『カリオストロの城』に触発されルパンとして依子を救出した巧の唇を奪うのが峰不二子国仲涼子)なのとか、いちいち気が効いてますね!