古沢良太『デート~恋とはどんなものかしら~』4話
これは傑作回と呼ぶにふさわしい。テクニカルかつエモーショナル。「完成度の高すぎるサンタコスプレ」だの「『バガボンド』と『天才バカボン』」だの、小ネタも冴え渡っている。それでいて、サブカル的閉塞を抱かせない抜け感の良さ。あくまで「月9」である。物語は、開始2話でプロポーズというハチャメチャな邪道から、ラブストーリーの王道へ、少しずつ少しずつ舵をとっている。上手くできない人達が当たり前の事に試みる。-1から0にむけての一歩が放つ熱量というのはかくも人の心を掴む。
脚本構成は実に緻密だ。細部がクライマックスの”夜明け”(あのわざとらしいほどの照明の素晴らしさ)にむけて収束していく。冒頭に響く、母(風吹ジュン)の適当な松任谷由美「恋人はサンタクロース」の鼻歌。それが今話のトーンを決定づける。谷口(長谷川博己)の発する「コウトウユウミン(高等遊民)」という響きを聞いて以来、我々の脳裏に住みついてやまなかったユーミン登場のおまけつきである。
恋人はサンタクロース 背の高いサンタクロース
この歌詞の通りに、背の高い3人(ちなみに長谷川博己は183cm、松重豊は188cm、杏は174cmだ)はそれぞれサンタの役割を全うする事となる。ちなみに「真っ赤なお鼻のトナカイさんは~♪」と赤い付け鼻をつけて歌った依子は、後にサンタクロースとなる谷口をトナカイさながら、かついで運ぶ羽目になるのだ。今話において歌は、行動の起点になる。そして、もう1つの起点が、依子の”肩凝り”だ。仕事中であろうとも、マッサージ機を手放さない。そんな彼女の為に、鷲尾(中島雄翔)は最新型のマッサージ機をプレゼントに用意し、谷口は(結果的に)「肩たたき券」をプレゼントする事になる。そもそも、谷口は肩凝り持ちにはふさわしくないネックレスをプレゼントとして用意していた。それを、母が「肩たたき券」にすり替えたのである。かつて息子(=谷口)からもらったクリスマスプレゼントに。この脚本で感動的なのは、”母の粋な計らい”ではない。かつて誰かに向けた”優しさ”が、色褪せる事なく、また別の形で、違う誰かに届いてしまう。その奇跡のような現象そのものだ。また”肩たたき”という運動が、筋肉のみならず、「クリスマスなんて大嫌い!」と言ってのける主人公2人の心の凝りをもほぐす事となる点も素晴らしい。