青春ゾンビ

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古沢良太『デート~恋とはどんなものかしら~』3話

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何気なく発した言葉が、現実の事として実現されていく。例えば、”SEX”PISTOLSを話題に盛り上がった2人はベッドで情事にふける事となるし、鷲尾(中島裕翔)が好きな女性のタイプを尋ねられ、「真面目で芯の通った人」と答えると、それは依子への想いとして昇華される。一方で

君にストーカーするのなんて、あの何でもいちいち首を突っ込んでくる熱血バカぐらいのもんだろ!
今日もその辺にいるんじゃないのか?

という鷲尾に対する谷口(長谷川博己)の皮肉もまた現実のものとなるのだ。余談になるが、鷲尾の想い人は依子なのか、はたまたその父か!?中島裕翔と松重豊が己の刀を突き合わす”剣道”というメタファー。裸で汗をふく無駄なサービスショットも気になる。そして、忘れてはならないのが、羽海野チカの話題で盛り上がった2人がフレームアウトしながら発した『海の近くの遊園地』という作品名である。同人時代の羽海野チカの代表作であり、『SLAM DUNK』の藤真と花形を主人公に据えたBL漫画だ。


最も重要な言葉の実現は

帰って『カリオストロの城』を観るんだ

という谷口の台詞で、それが今話における「救出劇」のモードを決定づける。谷口の愛する映画や小説や漫画の世界が、彼の肉体に、現実に落とし込まれ始める。”現実世界”というのは、彼が思っているよりもずっと面白い場所なのかもしれない。さて、「発される言葉が本当の事になる」というルールに従うのであれば、冒頭で係の者が発した「連絡先カードを交換したらカップル成立となります」もまた有効なのであろう。「交際終了に関する通達」はめでたく破棄である。このドラマにおいては、記された言葉よりも発される言葉が強い。


依子の眼帯を谷口に譲り渡すくだりの見事さ。2人は痛みと視線を共有する。そして、眼帯を外した依子は、視野と考え方が広がる事で再び谷口をパートナー候補に昇格させる。一方、眼帯を付けた谷口は、その視界が狭まる事で、闇雲だったパートナー探しの対象を再び依子に絞る事となる。こういった構造も、眼帯の受け渡しに含められている。