青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

古沢良太『デート〜恋とはどういうものかしら〜』2話

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古沢良太という作家は、”共感”という甘い蜜に背を向けて、物語っていく。『リーガル・ハイ』の古美門研介を例に出すとわかりやすいだろうか。この『デート〜恋とはどういうものかしら〜』の主人公たちも、決して視聴者の共感を得るタイプではない。結婚は“契約”と言い切る依子。結婚を“寄生”と恥ずかし気もなく云ってのける谷口。おおよそ感情移入する事の難しいこの2人を主人公に据え、「フジテレビ月曜9時」という”ラブストーリー”の名門に殴り込む。視聴者への共感という保険などかけなくとも、ラブストーリーというのはかくも滑稽で愛おしいものなのだ、という事を古沢良太は提示しようとしているように思える。


前述した契約と寄生という理論。我々視聴者は、依子の父(松重豊)と同様にしてそれを理解する事ができない。つまり、2人のデートの動機を感情的に共有できないという事だ。「動機→アクション」という式の動機の部分が崩れ落ち、アクションすなわちデートだけが躍動する。だからこそ、まぶしく、そして可笑しい。


主題歌であるザ・ピーナッツの「ふりむかないで」の歌詞を思い出したい。

ふりふかないで お願いだから
いつも腕をくみ 前を向いて
きっとね 幸せつかまえましょう

”ふりむかない”で欲しい対象は、他ならぬこのデートの”動機”である。「いつも腕をくみ/前を向いて/きっとね/幸せつかまえましょう」における、"前を向いて"の箇所が、実に端的にこの作品の構造を歌い現わしているではありませんか。


衣装と音楽がいい。長谷川博己の似合いすぎているハリスツイードのジャケット。杏のアウトドアルックもキュートでした。ノローナのピンクのアウトドアブルゾンにノルディック柄のベスト。劇伴は住友紀人というバークリー出身の才人が担当しているらしい。プロポーズのモブダンスは広末涼子の「ダイスキ!」にのせて。ところで、谷口の理想の女性像である「ヘプバーンと原節子峰不二子メーテルを足して4で割った女性」って、そのまま依子じゃありませんか、3話にも期待!