青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ザ・なつやすみバンド『S.S.W(スーパーサマーウィークエンダー)』


ザ・なつやすみバンドが『サマーゾンビー』から1年の時を経て、夏の新曲をドロップ。なんと期間限定フリーダウンロード配信です。この夏のアンセムであり、バンド最大の異色作ではないだろうか。バンドのディスコグラフィーを参照にするならば、VIDEOTAPEMUSIC「ポリネシアン観光センター」のカバーが感触としては近い。シンセサイザーの音色を主体としたエレクトロな質感にアーバンなコード感、クラブシーンに出自を持つMC.sirafuの多様性がザ・なつやすみバンドのパブリックイメージを拡大させ、夏の夜を彩ります。

スパサマ スパスパサマサマ
アーイヤイヤイヤー ウーイエー

聞けば一発で口ずさめるサビのチャラさも最高である。Aメロのゆら揺らいだニュアンスのメロディを乗りこなす中川理沙の歌声、そしてフックに満ち溢れたアレンジの妙。このサウンドであえて打ち込主体でなく、生音のドタバタとした”いなたいリ”ズムで攻めていくのも、絶妙。終盤ではチェロやヴァイオリンなどの弦楽器の音色も混じり合い、新しいポップスの境地へ。楽曲は「サマーゾンビー」でもお馴染みの3人姉弟「はな せい おん」のキッズコーラスが重なり、幼児帰りしていくと言いますか、不思議な万能感を獲得していく。90’sを彷彿とさせる豊かなメロディーから、中盤のMTV全盛の80年代洋楽を彷彿とさせる早弾きギターソロと、楽曲の構成も時間を遡っていくようです。Dorian、STUTS、mantaschoolがそれぞれ担当した2~4曲目に収録されたリミックスも、徐々に幼児帰りしていくよう。子ども達の声に彩られたアンビエンストラックと化した「S.S.W (endless)」は過ぎていってしまったあの季節を永遠に閉じ込めてループしていくような輝きと切なさがある。週末の夏の夜のクラブ遊びから、幼き頃の夏休みがサラっと接続してしまう。

時が過ぎてもまだぼくらは夏のこどもちたち

というラインにもあるように、この『S.S.W(スーパーサマーウィークエンダー)』とは時間の不可逆性に抗うポップソングなのだ。「毎日が夏休みだったらいいのにな」という子どもから大人まで共通のボンクラ願望が、切実な祈りに変容を遂げる。音楽の魔法に耳をすませよう。

神様ウカウカしてるから 世界は終末みたいね

と「週末」を「終末」で踏み、更に「S.S.W」という響きを「スーパー・サマー・ウィークエンダー」から「シンガー・ソング・ライター」に変容していく様もお見事だ。

ベソかいて フラフラする いばらのような毎日を
謳歌するあなたは 誇れるS.S.W(シンガーソングライター)

人生とは歌で、僕らは毎日を歌っていくのだ。