cero『Yellow Magus』
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「Yellow Magus」の圧倒的な名曲ぶりよ。歌う事とは語る事だったのだ、と想わせてくれる高城晶平のボーカルも素晴らしい。*2ポップさを保ちながら、ブラックミュージックで日本語を躍動させ、かつ物語を紡ぐという驚異的なソングライティングを披露している高城・荒内のコンビには未来しかない。とは言えこれまでceroに漂っていた「親密さ」のようなものは確実に薄れているように思う。生活感漂うメンバーの親しみやすい人格が消滅し、語り部に徹している為だろうか。メロディーはよりプログレッシブな方向に針路を取っているし、リズムもやはりミナス周辺を想わせる複雑さ、気を抜けばすぐに振り落とされてしまう。いや、振り落とされるも何も、『MY LOST CITY』において我々を乗せた船自体が今シングルにおいては破壊されてしまった。まるで、それぞれの足で進め、付いて来い、と言っているようだ。
歌詞においても2曲目「我が名はスカラベ」では他者の糞を集め食料とするフンコロガシが題材に取り上げてられ、3曲目「ship scrapper」では、「かつて夢や恋乗せた海の幻を 喰いものに 喰いものに 変えちまえ!!」と歌う船舶解体師についてのナンバーだ。これは
夜盗のように僕らは遊ぶ
cero「あののか」
ではないが、過去の遺産からの引用のセンスばかり称えられてきた自身をどこか自虐的に言及しているように思う。しかし、曲の終盤においてはスカラべはその足元そのもの(星)を転がす事に辿り着き、解体師は船で拾ったナイフで新しい景色を切り取っている。やっぱり前しか向いていない。「8points」はかなり昔からのレパートリーのはずが、レコーディングバンドの8人編成とリンクしているのも驚きだ。とにもかくにもYellow Magus(東方の三賢者)ことceroに先導されながら、必死に付いていく所存です。
*1:実際の参照点はジャズピアニストロバート・グラスパーだそうだ
*2:この曲難し過ぎてちょっと下手くそに聞こえますが、とても歌の上手い人です。