大林宣彦『青春デンデケデケデケ』
この『青春デンデケデケデケ』は大林の狂ったフィルモグラフィーの中において、かなり真っ当な青春映画に仕上がっている。もちろんイカれた文法の演出は健在なのですが、直木賞を受賞した原作小説の”爽やかさ”が、それに汚されずに光っている。いや、むしろ大林の「慌ただしい画面転換」「妄想の具現化」「観客への語りかけ」といった独特な演出が、青春マインドをより増幅させている。主人公ちっくん(林泰文)と白井(浅野忠信@ピチピチでかわいい)の部室での出会いのシーン。
「なあ、わしとロックバンド作ろ!」
「作ろ、作ろ。あんたの顔見たときから、わしゃそう言お思っとった」
目まぐるしい程のスピートの切替しで撮られる事で、思春期時代の運命の相手との出会い、その興奮が、見事に浮かび上がっている。
デンデケデケデケというのは、The Venturesの「PIPELINE」におけるあのギター奏法の音のオノマトペ。”青春”が音に託されている、もうそれだけで最高じゃないか。ラジオで流れるベンチャーズを聞いて、「エレクトリック・リベレーション(電気的啓示)を受けた!」と勃起(エレクト)して立ち上がる四国の高校生ちっくん。彼がロックに目覚め、友人達とのバンド生活に明け暮れる3年間の高校生活。恋に友情に家族、そして、初めて触れる”死”の感触やボンヤリとした将来への不安。葛藤なんてものはほとんど描かれていないにも関わらず、「青春の全てがここにある」と言い切ってしまいたくなる。バイトに海水浴に合宿に文化祭・・・果たせなかった想いが具現化されている。要は『けいおん!』の男の子版(それも1960年代の田舎の)なのだろう。青春時代の有限性をはっきりと描きながらも、デンデケデケデケという音が青春を永遠として確かに刻んでいく。
これから先の人生で、どんなことがあるのか知らないけれど、いとしい歌の数々よ、どうぞぼくを守りたまえ
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