青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

武藤彩未『IVE DNA 1980』


Shibuya O-EASTにて開催された『武藤彩未 LIVE DNA 1980』を目撃した。武藤彩未とは、アイドルユニットであるさくら学院の黎明期を支えた初代会長にしてスーパーエースさくら学院を卒業から1年4ヶ月ぶりの表舞台へのカムバックだ。会場は「おかえり」という温かい空気に満たされており、いいムード。武藤彩未は本当に美しい。


プロジェクトのコンセプトは、「BACK TO 80's」とのこと。松田聖子小泉今日子河合奈保子石川秀美堀ちえみ、斎藤由貴、浅香唯などの80年代女性ソロアイドルの楽曲のカバーから始まる。オフィシャルサイトによれば、リリース当時と同様の録音方法、当時のミュージシャンを多数起用する徹底っぷりらしい。確かに魅力的な記号ではあるけれども、そこまでして、「80年代」をトレースする意義というのは図りかねていた。単に他のアイドルや声優たちに「渋谷系」という「90年代」が食い尽くされてしまったからなのだろうか。しかし、ふと考えてみると、沖田修一の映画作品『横道世之介』(傑作)や宮藤官九朗のNHK連続テレビ小説あまちゃん』(なんと80'sHitsコンピ発売)など他分野においても、作中において同様に80年代が反復されている事に気づく。約20年間という時間の反復がもたらすものは何か。『横道世之介』において過去の世之介が構えていたカメラに想いを馳せても、『あまちゃん』におけるキョンキョン演じる天野春子から娘である天野アキに受け継がれる歴史を思い返してみても、それは、「過去」振り返った時に、あちらもまた同様にこちら(現在)を見つめている、という温かい視線の切り替し、その感動に他ならない。おそらくそれは10年では足りないのだろう。20年というのは「血」が巡るのにちょうどいい年月なのだ。


というハイパーこじつけはさて置いて、面白い試みだ。80年代のDNAを取り込んで新しく生まれた楽曲「彩りの夏」は、懐かしい旋律にストリングが豪華に鳴り響くなかなかの佳曲。どうかこのまま失速する事なく、藤井隆中川翔子が趣味の延長でやってのけた名盤「絶望グッバイ」や「綺麗ア・ラ・モード」(共に松本隆筒美京平コンビの楽曲)を超えていって欲しい。会場限定販売音源『DNA1980 Vol.1」『DNA1980 Vol.2』の2枚は

12インチLPサイズのジャケットで、シリアルナンバー&サイン入り、フォトと解説も充実で、4曲入り2500円というお値段でも、まぁ納得といった所でしょうか。

約束します、皆さんにたくさんの幸せを届けることを!

と力強く宣言した武藤彩未の今後を見守りたい。