青春ゾンビ

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Sufjan Stevens『Silver & Gold Songs For Christmas, Vol. 6-10』


Sufjan Stevens(スフィアン・スティーヴンス)の5枚組BOXセットのクリスマスアルバム『Silver & Gold』が素晴らしい。誰もが知っているクリスマスナンバーからオリジナルのクリスマスソングまで全58曲2時間47分。シールやポスターや分厚い歌詞カード、コード表などの特典もうれしい。しかも5枚全てに素晴らしいジャケット付き。所有欲をそそります。そのメロディー、コード、曲構成、ボーカル&コーラスワーク、チェンバーな楽器の音色センス、アレンジの多様性、どれをとっても天才的で頭がクラクラしてきます。58曲といっても1分台の曲もたくさん収録されているので聞きやすい。子どもたちの合唱曲だったり、オルガン1本だったり、ハープでの演奏だったり、キャッチーでチープな電子音のインストだったり、とにっかうもいい感じなのだ。そして、何よりクリスマスソングの持つ圧倒的な幸福感!


Sufjan Stevensは2006年にも5枚組のクリスマスアルバム『Songs For Christmas』を発表しているわけで、これで10枚のクリスマスアルバムは製作していることになる。ちょっと偏執的なまでのクリスマスへの執着。日本だと資本主義の副産物という感じが強く、いまいちピンと来ないのだけど、キリスト圏におけるクリスマスというのは本当に特別な行事なのだろう。そして、それは「家族」というキーワードに密接である。自身の音楽においても語られるSufjan Stevensの孤児であったという出自(玄関の牛乳ポストに捨てられていたらしい)を想うと、本質的な意味での欠乏を埋めるかのような行為なのではないか。なんて勝手に想像して、ちょっと涙腺が緩む。またクリスマスソングを作り続け歌い続けるというのは、育った国や自身の家庭の歴史を記録していくかのようなものでもあって、アメリカの50州のそれぞれを歌うアルバムを1枚ずつ作ろうとしたり、自伝的な楽曲を作り続けたりしている彼の活動にしっくりと馴染む。

そうそう、8枚目『Infinity Voyage』のジャケットにはガンダムの偽者みたいなロボットの右下に何故か日本語で「クリスマス永遠旅行」とある。泣ける。クリスマスはたった数日間で終わってしまう強烈なファンタジーなのだ。そのファンタジーの放つ多幸感を、圧倒的な躁感でもって、永遠に閉じ込めようとする。その様は、小沢健二の『LIFE』にあったそのヴァイブスのようであって、強烈な祈りなのである。あぁ、全ての人に平等にクリスマスが降り注ぎますように。

今年1、2を争う名盤。5枚組なので普通に買うと4200円くらいですが、amazonだと約3000円で買えます。オススメ。

Silver & Gold

Silver & Gold