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ジョルジュ・メリエス『月世界旅行』


ジョルジュ・メリエス月世界旅行』とそのカラーフィルムの修復、そしてメリエスの栄光と挫折を追ったドキュメンタリー『メリエスの素晴らしき映画魔術』の2本立てをイメージフォーラムで観賞。マーティン・スコセッシの『ヒューゴの不思議な発明』に詳しいが、映画黎明期において「物語の導入」「SFXの導入」「SF映画の制作」と偉大なる功績を残したメリエスだが、時代の流れに取り残され、失意の中、自作のフィルムをほとんど焼却してしまった。そんな中、ついに発見された『月世界旅行』のカラーフィルムを20年の歳月をかけて修復する人々の一連のドキュメントは実に感動的だ。最新のテクノロジーでアナログの手触りを蘇らせるという、やや倒錯した現象にグッときてしまう。最新のSFXを見慣れた目でもっても、メリエスの作品群を観ていると「魔法だなぁ」と臆面もなく言えてしまう。特にモノクロフィルムに1コマ1コマ手作業で色を塗ったカラー作品の流麗さは、まさに動く絵画で、昨今の作品からは決して味わう事のできない魅力がある。ドキュメンタリーでメリエスの魅力を嬉々として語る面々がミシェル・ゴンドリー、ジャン・ピエール・ジュネというのも、モロに影響を受けている感じが微笑ましい。そして、その修復されたカラーの『月世界旅行』ですが、もちろん素晴らしい。

パブリック・ドメインが切れているので、YouTubeで(違法でなく)観る事ができるのですが、復元されたカラーフィルムを暗闇の中、スクリーンで観るのはまた格別です。しかし、新しく付けられたAIRによる音楽が個人的には不要に感じた。せっかく20年もかけて修復した映像の力をもっと信じてあげてもよかったのではないだろうか。