- 作者: 大橋裕之
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/05/23
- メディア: コミック
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八百屋のみいちゃんにも
お医者さんちのあっこちゃんにも
静かに夜は来る みんなの上に来る
という矢野顕子の名曲「ごはんができたよ」における、あの突き放したような優しさが作品全体に通底しているのがたまらない。
好きな話がたくさんある。「夢で逢えたら」がいい。『ドラえもん』の傑作「夢はしご」や「ドリームプレイヤー」またはクリストファー・ノーランの『インセプション』を基に、『デビルマン』的な終末戦争なイメージを並行させながら、冴え渡らない人々の日常を切なく可笑しく愛おしく描き切っている。何たる跳躍力。『音楽と漫画』で注目された事もあり、そのジャンプ力にばかり目がいきがちだが、そのジャンプに辿り着くまでの構築力が凄い。そして、言葉の選択の鋭さ。「ディランの埋蔵金」とか「おばあちゃんお年玉ありがとう!」と最高。ラストに収められた「音楽」も最高。彼らの奏でた「まちのあかり」という曲はやっぱりマリリンモンローズの「シティライト」みたいにへったくそで温かい歌なんだろう。
そんな大橋裕之の仕事の多くに参加している奥田亜紀子が読み切り作品「神様」を発表。『アフターヌーン』7月号に掲載された。
上の画像の1カット目で「奥村さんの茄子」(『棒がいっぽん』収録)期の高野文子を想起すると思うのだけど、ズバリ、高野文子の系譜にある人だと思う。萩尾望都の『半神』の要素もある。しかし、必ずピカピカの奥田亜紀子のオリジナリティを磨き挙げて世に大きく名を広めるであろう。市川春子の「虫の歌」が『アフターヌーン』に読み切りとして掲載された時、あまりの衝撃に切り抜いて保存していた友人がいたけど、今作「神様」もそういう作品だ。読み切りがまとまって単行本になる頃が楽しみであります。