青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

筒井武文『孤独な惑星』


1枚のガラスを挟んで、部屋とベランダが、それぞれ独立した空間として立ち上がる。それを完璧な構図で、外から中からカメラを定めて映し出す、その手さばきはエドワード・ヤンの諸作すら想起された。そして、そこに漂う圧倒的なエロティシズム。立ち上がった空間は、東京のマンションの1室の出来事であるはずなのに、完全に外部から孤立した宇宙空間のようである。これぞ、映画のマジックだ。そして、そこで鳴っているはずのない音が聞こえてくる、嘘。こういった映画のつく嘘を私は愛している。録音と共に照明も素晴らしい。光源の配置の的確さ。映画を観終えた後、マンションの灯り1つ1つを愛しく思える。会話の秀逸さとそれを支える2人の役者のかわいらしさも素晴らしかった。