青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

グレッグ・モットーラ『宇宙人ポール』


サイモン・ペッグニック・フロストのコンビの脚本・主演に『スーパーバッド 童貞ウォーズ』監督のグレッグ・モットーラを迎えた今作。いやぁ、素晴らしかった。エドガー・ライトの『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』にいまいち乗れなかったので、私が好きなのはサイモン・ペッグニック・フロストの2人なのかも知れない。


SFオタクの英国人2人が、コミコンへの参加とエリア51などのUFOスポットを巡るドライブ、という長年の夢の実現を企てアメリカに訪れる。そこでポールと名乗る宇宙人を車に乗せる事になるのだが・・・とおいうお話。アメリカンロードムービーの体裁を持ちつつ、スピルバーグ諸作(本人の声のカメオ出演も!)、『STAR WARS』『エイリアン』・・・王道のSF映画愛に詰まったオマージュの連続。さらに、ポールのアメリカ気質なギャグの連発で駆け抜ける至福の104分だ。このポールは宇宙人でありながらアメリカ文化に浸った、というよりも影響を与えまくった人物として劇中で描かれており、つまりはグレアム(サイモン・ペッグ)とクライブ(ニック・フロスト)が憧れた”アメリカ”そのものでもあるわけだ。「エイリアン」のダブルミーニングも上手い。


先述したオマージュの元ネタがわからなくても、この映画に通底するマインドは素晴らしい。コミコンに参加したグレアムが「今まで生きてきた中で1番楽しいかもしれない」とか言い出す時点で泣けるわけですが、とにかくギークな彼らの純粋な思いが報われる、信じ続けたUFOが彼らに到来してくれる。ポールを車に乗せてかかるTod Rundgren「HELLO, IT'S ME」が泣ける。

ハロー僕だよ
長い間僕たちのことを考えていたんだ

また、かつて地球に不時着したポールを介抱した少女は誰にも信じてもらえなくても「宇宙人はいたのだ」と信じ続け、60年の時を経てポールとの再会を果たす。その対比として登場する敬虔なクリスチャンであるルースはポールと遭遇する事で、信仰が揺らぎ、自己が解放されていく。つまり、我々ボンクラの(映画愛でも漫画愛でもアニメ愛でも何でもいいんだけど)純粋な想いが、神への信仰に打ち勝つ映画なのだ。ごめんなさい!神様より好きです!(©THE BLUE HEARTS)である。