青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ナカゴー『ダッチプロセス』


どこまでもバカバカしいが、同時に非常に真面目な劇団だ。モスバーガー王子店の店長が突然大きなハンバーガーになってしまった、という導入のナンセンスさに興奮。しかし、「こういった不条理な出来事が巻き起こる演劇の行く着く先は3.11のメタなんだよなぁ」という杞憂も。「その注文の仕方はモスの黄金律だね、これだけ頼んで飲み物がコーラなのも潔い」「店長はモスバーガーを頼んでもいつもモスチーズバーガーを出してくれた」というような台詞が光る前半は楽しいだのが、後半はやはり震災以降の空気である。ハンバーガーを食べると体内を「悪いハンバーガー」にのっとられてしまう。食の危険。挙句には「どうして今まで安全、安心と思っていたのかわからなくなった。外に出るのが怖い」なんて台詞が飛び出す。あくまでコミカルな語り口なのだけど、ずっしり重かった。「外に出るためには”生”への執着を捨てるんだ」となるんだけど、そうすると今度は極端に無気力になってしまう。「いや、でも生きてればジョニー・デップに会えるよ!」とか言って何とか生きていいくのにちょうどいいバランスに調整していく。だからタイトルが「ダッチプロセス」なのか。ダッチプロセスというのはバンホーテンさんが発明した現在のココアのスタンダードな製造法で、それが簡単に言えば酸性とアルカリ性を調整して中性にしてまろやかにする、って事なんだそうです。