青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

岩井俊二制作総指揮『DOCUMENTARY of AKB48 to be continued 10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう?』


この映画の最大のトピックは「制作総指揮:岩井俊二」であろう。岩井俊二ファンの「仕事選べよぅ」という声も耳にしたが、これぞまさに岩井俊二案件だ。岩井俊二の変態的少女趣味、処女幻想、少女漫画チックな画づくりはアイドルグループの映画と抜群の相性を見せている。岩井俊二が監督を務めたAKB48の「桜の栞」を見てもわかるはず。

カメラマンの篠田昇が生きていれば、本作も総指揮でなくきっと監督を務めたに違いない。


ドキュメンタリーの内容としては、「これぞ神話だ」と思った。劇場にお客7人というスタートから紅白出場、2010年はシングルチャート1位、2位独占、テレビ、雑誌で彼女たちを見ない日はない。彼女たちの今の煌めきを否定することはできない。しかし、彼女たちは劇中で皆一様に

このブームは必ず去る。もしかたら今年に終わるかもしれない。
それでもまた一から劇場でやり直すって気持ちが全員にある

と語っている。刹那とその覚悟が香りたち、彼女たちの煌めきの秘密を垣間見ることができる瞬間だ。


そして、テレビでは拝むことのできない美しい光線が彼女たちを照らしている。特に小嶋陽菜があまりに光に愛されていて美しい。柏木由起、宮澤佐江指原莉乃北原里英岩井俊二推し??)への光線もよい。板野友美のパートが異様に精彩を欠いているのはロケ地のチョイスミスもあるが、岩井がの好みではないからではないか、と勘ぐりたくなる。


その他、雑感。チームKの秋元・宮澤・大島の3人の関係性が漫画のようで実に美しい。上にも書いたが岩井俊二の北原推しっぷり。「桜の栞」で何回彼女が写るか数えてみて欲しい。そして、映画の中でも彼女のパートのみ本当に映画なのだ。演出の凝り方も抜きんでてる。そして、前田敦子の「ここにいない感」の凄さ。儚い。一人だけインタビューが夜のシークエンスだったり、黒い服の着用などなど。「ここにいない人」として撮られているように感じた。AKBリーダーの高橋みなみ、というエモ過ぎる存在。彼女が神話を作っているのだ。


また、現在崩壊しつつある共同体の強さを魅せつけているのも、この映画の美しさであろう。

喜び(悲しみも)を他の誰かと分かりあう、それだけがこの世の中を熱くする!

というのは本当に本当のことなのだ。若い女の子が泣き、笑い、躍動するパトスを目に焼き付けろ。