青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

トニー・スコット『アンストッパブル』


列車が走ってそれを止めるだけの映画なのに何故だろう。この映画の画面からは妙な神々しさが漂う。列車が走り、それを止めるという運動は何を意味するのか。本作を見ていると、「勤続28年」「90日後に解雇」「仕事を始めて4カ月」「19歳の娘が誕生日」「30日息子に会えない」と、とにかく時の具体的な数字が会話に散りばめられている。しかも主人公2人はその時の流れにすっかりまいってしまっている。暴走する列車は「容赦のない時の流れ」のメタファーなんだろう。列車のクリーチャー然とした撮り方も、神の化身と考えられる。つまり、あの列車を止めるという運動はクロノスをカイロスに組み替えてしまうことを表すものなのだ、と言ったら言い過ぎでしょうか。つまり、「街を救う」とか「働く事の意義」とかそういう映画じゃないんですよ!「人間ドラマの面が薄い」とか言ってくれるな、って話なんですよ!トニ―・スコットはそこはどうでもいいから適当に作ったんですよ、多分。100分というのも素晴らしい。必見です。