青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ジェームズ・マンゴールド『ナイト&デイ』


『ミッション・インポッシブル』シリーズとスクリューボール・コメディを混ぜこぜにして、少女漫画をスパイスに加えて、ロマンティックに仕上げた快作。整合性なんて全くない無軌道な展開だけど、そこに突っ込んでこの映画を楽しめないのはもったいない。そんなもの関係なしに楽しめてしまうのが映画の魔法の1つだ。おそらく整合性のなさで1番の槍玉に挙げられるのが時間軸のジャンプによる時系列の矛盾であろうけど、この映画でもっとも感動的なのはそこだ。『ナイト&デイ』というタイトルは、何個か意味が含まれているんだろうけど、やっぱり最後に流れるメロディであり、トム・クルーズの携帯の着信音でもあるThe Kingsmenの「Louie Louie」(甲本ヒロトが1番好きなロックンロールナンバーでもある)のリリック

Three nights and days I sail the sea.
I think of girl constantly

昼も夜も好きな女のために飛びまわる男。時間の流れを超越するかのように駆けつける。その運動は、またトム・クルーズキャメロン・ディアスという2人のスターに襲いかかる時の流れへの反抗と肯定でもある。この映画を見て、まず目がいくのはトム・クルーズキャメロン・ディアスの老けっぷりではないだろうか。特にキャメロン。しかし、2人が時間をジャンプして時の流れを超越していけばいくほど、その老いが気にならなくなる。というよりキャメロンはどんどんキュートに、トム・クルーズはどんどん王子に変容していくのだ。それが実に感動的。キャメロンの黄色いドレスにブーツ姿は最高だ。


そして、最後マグガフィンであるものの物語のキーである半永久エネルギー体は見事に爆発する。あの爆発は永久を否定し、時が流れていくことへの肯定なのだ。また、ずっとトム・クルーズ主体だった運動が徐々にキャメロン主体になっていって最後逆転してしまうのも今っぽくてよい。まぁ、そんなことは置いておいても久しぶりに心からワクワクハラハラする映画だった。練られた発想のアクションシーンの数々と、その映像としての見やすさ。赤であるバイクに大量の牛が突進してくるくださらなさよ。