青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

日曜ビッグバラエティ『空から村人発見!パシれ!秘境ヘリコプター』

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ヘリコプターに乗ったオードリー春日が山奥に住む人々の夢を叶えていく。テレビ東京が9月9日に放送した日曜ビッグバラエティ『空から村人発見!パシれ!秘境ヘリコプター』が実に素晴らしい番組だった。「全てのロケ、そして総合司会まで、2時間すべてをオードリー春日に託す」という英断を下したのは『空から日本をみてみよう』『家、ついて行ってイイですか?』を手掛ける高瀬義和プロデューサーだ。この『空から村人発見!パシれ!秘境ヘリコプター』はまさにその2番組の発想を掛け合わせたものである。ヘリコ(プター)に乗った春日が、遥か上空から地上を見つめる。ヘリコ(プター)は凄まじいスピードで都心から秘境集落へ。春日は言う。

庶民の暮らしがはっきり見える

よく見ると 人がいるね

当たり前のことなのだが、どんな場所にも暮らしはある。空から見ると豆粒のような人々。カメラはそこにグーッとフォーカスし、想像しえないような"生"の多様性を映しとっていく。

最初のVTRから人間が映ってたから
人間賛歌があったのよ
だからちょっとジーンときて

このオードリー若林の言葉が、この番組の魅力を的確にプレゼンしている。人間が"いる"ということを、ありったけの善良さで祝福している。自分の住む家を上空から見たいあまり2万円もする航空写真を買い集める夫婦、壁やテレビのない家で生活する弟と宮大工修行の兄、25年間に渡りランドマークタワーの写真を撮り続ける男、『コード・ブール』の映画に恋い焦がれる7歳の少女のひと夏の冒険・・・人間の生き方というのはなんて様々で、なんて豊かなのだろう。
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とりわけ痺れてしまったのは、「憧れ25年!横浜のランドマークに生きたい」のVTRだろうか。山梨の奥地にある家からかすかに見える横浜ランドマークタワー。その魅力に取り憑かれ、年代ごと、季節ごと、時間ごと・・・と25年間で1200枚の写真を記録する男性が登場する。彼が言うのだ。

うちから見えるってことは
むこうからも見えるはずなんですよ

本人は何の気なしに発した言葉なのだろうけども、彼の想い描くその視線の交差は、"人と人が生きていくこと"を的確に切り取っていやしないだろうか。細田守サマーウォーズ』を彷彿とさせる一族総動員の狼煙作戦も楽しい。苛立って舌打ち、と思いやのんびりとソフトクリームを舐める*1・・など、まさに人間が映っている。



とにもかくにも"いい顔"と嘘のない反応に満ちた、珠玉の人間バラエティである。オドーリー春日というキャスティングはまさに適任だ。春日は自意識というものをほとんど人前で見せない。それ故に、村人たちは存分にその"生"を発揮できるのだろう。春日はそれをただ静かに受け止める。オードリー春日というキャラクターは、若林の想う”父性”を託したものだ、ということを過去のエントリーに記したことがある。
しかし、上空から人々の願いを叶えていく春日の姿は、父性を飛び越え、徐々に”天使性”を纏わせているではないか。桃色の天使に再び会いたい。この番組のシリーズ化を、熱望してやみません。

*1:一抹の”水曜日”臭