青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

長濱ねる1st写真集『ここから』

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<Aパート>

1日あればいいの
人生には 1日あれば
大事な大事な1日があれば

これは、坂元裕二が脚本を手掛けたテレビドラマ『Mother』(2010)において、田中裕子が発した台詞。長濱ねる(欅坂46)の1st写真集『ここから』があまりに眩くて、切なくて、胸が痛くなるので、思わず引用してしまった。つまり、「君みたいに素敵な女の子とこんな1日を過ごせたら、人生それでもう充分だよな」ということだ。この写真集は、長濱ねるとの疑似旅行体験に誘い、命を焦がすような一瞬の数々を披露してくれる。海岸で美しい夕陽を祈るように見つめる長濱ねるが側にいたら、「生きるということ」の意味がバチコーンと理解できてしまうのではないか。物議を醸している、やや過剰な性的表現もまったく問題なし。あの瑞々しい身体の前で何の文句が言えよう。谷川俊太郎が綴ったように、「生きるということ それはミニスカート すべての美しいものに出会うということ」なのである。命を焦がすような1日に三大欲求が含まれないなんて、ナンセンスだ。たった1日でいいのだ。その眩い輝きを纏った思い出こそが、その先に広がる人生の暗闇を照らし、時には心を慰める。この写真集を眺めていると、つくづくそう想わされてしまう。そして、旅の終わりには、彼女にはこう呟いて欲しい。”I'm ready for the blue” ブルーの準備はできてるの。


<Bパート>

あくまで想像でしかないが、長濱ねるという女性は、どう考えても高嶺の花であるにも関わらず、接した誰もが「おれのこと/わたしのこと、好きなのでは?」という気持ちを抱いてしまう存在なのではないだろうか。「なんだかやれそう」と想わせてくれるのである。

どうしたって沈んでいく船で
あいつはまだ宝の地図を描いてる
やれそう
なんとなくいけそう
やらせてよ もっともっともっと


シャムキャッツ「なんだかやれそう」

この世はでっかい宝島じゃい、とアドベンチャー心に火をつけてくれる魔性の女。あぁ、かどわかされたい。だけども、もちろんゴールには辿り着けない。『やれたかも委員会』の再現パートドラマの女優は、全て長濱ねるに演じさせるべきなのである。現代日本におけるファム・ファタールというのは峰不二子のような出で立ちでは決してなく、長濱ねるのような形をしている、そのことを肝に銘じておきたい。


<Cパート>

写真集のあとがきには、そんな風(媚びている)に見られてしまうのが嫌で、自分らしさを抑えていたという吐露が残されている。撮影に際して、故郷である五島列島に戻り、束の間であるが、よく笑い、よく喋る、人懐っこい自分を解放できたのだという。だからこそ、この写真集の長濱ねるは美しい。しかし、まったくをもって窮屈な社会である。そして、そこに自分も加担している(Bパートを読めば、それは明らかだ!)ことにも嫌気が差す。あらゆる自分らしさが許される世界を、"ここから"夢見ていこうとしようではないか。

長濱ねる1st写真集 ここから

長濱ねる1st写真集 ここから