青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

仙台ドライブ紀行

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音楽を聞きながらドライブをして、そのゴールとしてロロ『BGM』の仙台公演を観る。ロードムービー劇である『BGM』を観た者ならば、誰もがひらめくであろうこのすばらしくてナイスチョイスな思いつきを、実行に踏み切ることにした。しかし、先週末からの体調不良をズルズルと引きずっており、コンディションは極めて悪い。不安である。「朝の5時に起き、6時には出発してしまおう」という皮算用は、寝坊によってもろくも崩れ去った。5時起きとわかっているのに、昨夜遅くまで『おじゃMAP』の「香取・草彅の2人旅」の録画を観直してしまったのだ。奇しくも、こちらもロードムービーだった。私の頭の中で、ロロの『BGM』と「香取・草彅の2人旅」はほとんどイコールで結ばれた。


起きたら既に朝の6時半である。加えて体調もやはり悪い。「いっそ家でゆっくり寝ていようか」という考えも少なからず、頭をよぎったが、なんとか自身を奮い立たせる。急いで支度をするも、出発は7時半にズレこんだ。レンタカー屋のおじさんは予約時間に遅れたにも関わらず、嫌な顔一つせず親切だった。カーナビに目的地の劇場「せんだい演劇工房10-BOX」の住所を入力してみると、到着予定時刻は12:20と算出された。開演時間は12:30であるから、1回でもトイレ休憩を挟んだら、ほぼアウトということである。かなり危険な賭けだが、「予定時刻に間に合わない」というオチも、実に『BGM』という公演の内容に沿っている。そんなよくわからない慰めを胸に、ギャンブルスタートを切った。


到着見込み時刻が開演時間にギリギリということは、休憩をとれないのはもちろんだが、少しの判断ミスも許されないということだ。高速道路のドライブというのは、僅かな進路変更のミス一つで、簡単に数十分単位のロスが発生してしまう。常に神経を張り巡らさねばなるまい。しかし、BGMにはこだわりたい。まずはマイブームが訪れているカーネーションを聞いた。最新アルバム『Suburban Baroque』と名盤『Parakeet & Ghost』の2枚だ。

Suburban Baroque

Suburban Baroque

素晴らしい演奏と歌声、そして詩情。気分はすっかりご機嫌である。走るは『BGM』の冒頭と同様に、常磐自動車道。劇中に登場する守谷サービスエリアに後ろ髪を引かれつつ、車は一目散に北を目指す。ときに最近は、長嶋有『愛のようだ』と近藤聡乃『A子さんの恋人』の影響で、日産ラシーンと日産ジュークに夢中なのである。
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こちらは1番人気"ドラえもんブルー"のラシーン。この日も、その2台が走っていやないかなとずっと道路に目をこらしていたのだが、一度も姿を現さなかった。ここ最近の道路はフィットとプリウスばかりで、ロマンというものがない(どちらも、いい車ですけども)。


さすがに膀胱の限界が訪れ、聞いたことのない名前の小さなパーキングに止まった。到着予定時刻に変動はなく、間に合うかはまだ五分五分の状況である。ブログやTwitterで「仙台までロロ、観に行きます!」と意気揚々と宣言していたので、開演時刻に姿がないのはちょっとバツが悪い。遅刻のフラグを立てておこうと、現状をツイートしておくことにした。すぐさまロロ主催の三浦くんが「ヒコさあああん!お待ちしております!!」というリプライをくれた。そのリプライを神木隆之介の声でもって脳内で再生し、最後の気力を振り絞る。すると、カーナビが示す到着時刻がみるみると縮んでいく。これが神木くんの神通力である。最終的に予定より30分早く仙台に到着することができた。BGMはカーネーションからSMAP、Enjoy Music Club、槇原敬之と続き、到着間近にHAPPLEの傑作アルバム『ハミングのふる夜』を聞いた。

ハミングのふる夜

ハミングのふる夜

アルバムのラストナンバー「主題」にこんなリリックがある。

ボクらは思い出の中にも生きていて
確かな呼吸をし続けている

あまりにロロ『BGM』にふさわしいではないか。会場に着くと、hi,how are you?の原田くんがいた。「今日は江本さんのお母さんも来てるんすよ」と教えてくれた。「それだけでもう胸熱す」などとあいからわず適当なことを言っていて、ほっこりした。数時間の運転を経て観劇する『BGM』は、車のシートに座る感触が身体に残っていて、まるで泡ノ介やBBQのドライブに同乗しているような質感を、より強く覚えた。登場人物らに強い”愛おしさ”を感じたのだ。はるばる来て、よかった。ときに、この公演の感想、書ける気がしないのだけども、仮に書いたとしても、漏れてしまうであろうものとして、泡ノ介(亀島一徳)の「ピカチュウ」のイントネーションと、午前二時(島田桃子)の「何か音楽かけて・・・とてつも似合うやつ」という台詞が凄く好きだったことを、記しておきたい。あと、泡ノ介たちが披露する予定だった劇中劇がジャルジャルっぽくて最高だった。


終演後は、出演者やスタッフとの面会で賑わっていた。「忙しそうだし、時間をとらせたところで、たいして弾んだ話できないしな・・・」と、持ち前の気さくさでもって黙って帰ろうとするところを、劇中のラストシーンよろしく後ろから午前二時(島田桃子)さんが声をかけてくれ、何とか三浦くん(≒神木隆之介)や江本さんに挨拶することができた。危うく、遠路はるばるコミュニケーション障害ぶりを露呈するところであった。三浦くんとは互いに存在を認識し合って5年ほどの年月が経っていると思うのだけども、実は5分以上の会話をしたことがない。しかし、私は三浦くんをソウルメイトだと思っているし、腰を据えて話してみたいことは山ほどある。SMAPのことやサウナのこと、はたまた元・阪神タイガース桧山の生涯打率についてとか。でも、そうしないことにある種の美しさのようなものを感じてもいる。


劇場を後にする。時刻はすでに15時。体調が悪いとは言え、朝から何も食べていないので、さすがにお腹が空いた。しかし、火傷跡にできた口内炎があまりにも凶暴で、熱いものが食べられないのである。泣く泣く牛タンを断念し、国道沿いの回転寿司屋で食事を済ませる。海が近いから旨いだろう(別に全てのネタが東北の海のものじゃないから本当は関係ないはず)、というプラセボ効果は抜群だった。しかし、体調がよくないので、ナマモノはまずかった。すぐに具合が悪くなる。予定では「汗蒸幕のゆ」で韓国式のサウナを楽しもうと思っていたのだが、もう運転する気力がないので、寿司屋から1番近かった「スーパー銭湯極楽湯 名取店」で休憩することに。わざわざ仙台まで来て、全国チェーンのスーパー銭湯に。しかし、この施設はそう悪くはないのだ。いかんせん混み過ぎなのは難だが、2台ストーブのサウナは大汗仕様だし、水風呂は16℃ほどに冷えている。外気浴スペースには10台ものデッキチェアが配置されていて、まどろみ放題。とは言え、総合点では平均的なスーパー銭湯と大差はないので、また来ようとは思わない。仙台でサウナに入りたいというのであれば、「サウナ&カプセルホテル キュア国分町」をオススメする。1週間以上体調を崩していたので、久しぶりのサウナ。寝不足も相まって、3セットこなしたあたりでフラフラに。デッキチェアで寝そべっていたら、そのままかなりの時間をうたた寝してしまった。浅い眠りの中で、テレビから乃木坂46が新曲を披露している歌声がかすかに聞こえてくる。土曜日の夕方だから『MUSIC FAIR』だろうか。そういえば、恵俊彰の声が聞こえる気がする・・・とか思ったが、調べてみたら『MUSIC FAIR』の司会は恵俊彰鈴木杏樹体制からいつの間にか軽部アナ仲間由紀恵に変わっているらしい。じゃあ、あの時私が聞いた恵俊彰の声は?それはきっと思い出の中の恵俊彰だ。私たちは”今”という時間だけを生きているわけじゃない、思い出の中にも生きていて、その2つが交錯しながら、未来を形作っている。そして、なんでかわからないが、恵俊彰は未来永劫嫌われ者だ。


極楽湯を後にし、その向いにの大型スーパーに入店した。そこで暮らす人の生活に根差したご当地ものをゲットしようという魂胆。サンドウィッチマンがこよなく愛することでも有名な「定義三角油揚げ」のパック詰めされたものを購入。アイス売り場ではブルボンの「ルマンドアイス」を見つけた。何故かいまだに関東圏では買えないのだけども、東北では大々的に売り出していた。
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入口のベンチに座って食べた。本当にルマンドがそのままアイスになっていて、感動はするものの、あまりにそのまま過ぎるような気がしないでもない。そして、ハウス食品から出ている「シチューオンライス」のルーを買った。これは今思い返しても、わざわざそれを仙台で買う理由が皆目見当がつかないが、買った。チキンフリカッセ風を買った。頭がフラフラで正常な判断ができなかったのだ。
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*このあとスタッフが美味しくいただきました


ツルハドラッグで、口内炎用の薬を買い、栄養ドリンクを飲んで、いざ帰路へ。しかし、走り出すやいなや、あまりの眠気に命の危険を感じ、サービスエリアで1時間休憩とることに。お土産に永遠のマスターピース萩の月」をゲットした。帰り道は常磐道ではなく東北道であった。個人的には常磐道のほうが、旅情があって好き。ガラガラで単調、灯りも極端に少ない高速道路は眠気を促進させる。またしても死の恐怖を覚えたので、福島県あたりのサービスエリアでシートを倒して軽く眠ることに。気が付いたら、4時間ほど経っていて、時刻は夜中の3時だった。車の中で『オードリーのオールナイトニッポン』をリアルタイムで聞くのを楽しみにしていたのに。そろそろ本腰を入れて帰路に着かぬと、レンタカーの返却時間が近づいている。歯ブラシセットを買って、歯を磨き、顔を洗い、気合いを入れ直す。睡眠の甲斐あり、車は快調にスピードを上げる。夜は徐々に白みだし、視界も良好だ。早く家に帰って横になりたい、その一心で、ハンドルを握る。しかし、体調が悪かったとは言え、体力が落ちたものだ。10年前は一晩眠らずに運転するなんて朝飯前であった。歳はとった。しかし、若さというのは体力だけを指すものでない。車をどこまでも走らせよう、そういった心持ちにこそ宿るのではないか。そんな風に考えながら、「未来はいつも楽しい」と唱え続けた。
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