青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ひめだまなぶ『クルマごっこ』

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姫田真武(ひめだまなぶ)の作るアニメーションの中で、この『クルマごっこ』が1番好きだ。各地の映画館で作品上映前に流れていたようで、ゲリラ的に遭遇したこのアニメーションと歌が、頭から離れず困ったという人も少なくないのではないだろうか。そんな方もご安心、2017年に入って、YouTubeに作品がアップロードされたようなのだ。
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わずか2分20秒の短編だが、楽曲とアニメーションの制作を兼ねる、ひめだまなぶの底知れ才能が迸っている。あまり意味のないことだが、アニメーションのあらすじを書き起こしてみよう。

右折も左折もできないペーパードライバーのぼく。(曲がったことが大嫌いというわけではないのだけども)曲がらず済むよう、真っすぐな一本道を作ることにする。完成したその道を、ぼくみんなを乗せてドライブに出かけます。何も遮るものがないその道を、猛スピードで飛ばします。100キロ、200キロ、100万キロ・・・そのあまりの速さに、乗車していたお父さんも、お母さんも、お姉ちゃん、おじいちゃんも、おばあちゃんも、みーんなみんな吹っ飛んでしまう。でも、ハンドル握ったぼくは吹っ飛ばない。「誰もいなくなってしまい、寂しいな・・・」とふさぎこむも、すぐに「スピードの出し過ぎには気をつけよう」と、反省の思考に至ります。どんなにスピードを出しても、ハンドルを握っているぼくは吹っ飛ばない、のだけども、洋服や髪の毛は風圧に耐え兼ね吹っ飛んでしまう。「すっぱ裸で恥かしい!」と赤面するも、「誰もいないから恥ずかしくない」ということに気がつきます。せっかく裸になったのだし、「お風呂に入ろう!」とハンドルを離したぼくがいよいよ吹っ飛んで、お風呂場にポチャン。そこには、先に吹っ飛んだ家族や友人が揃っていて、みんな裸でバンザーイ。

"ぼく"の思考は分裂気味で、物語にも整合性がない。絵柄は不気味だし、色彩感覚はサイケデリック、まるで子どもの頃に見た悪い夢のように不安な気持ちにさせられる。しかし、一方で内容自体はとことんポジティブだ。全体を貫くチャイルディッシュな万能感も心地よく、「誰にだって、なんだってできるのだ」というようなフィーリングを与えてくれる。フリーハンドの鼻歌のようでいて、ポップスとしての強度を兼ね備えた楽曲も相まろ、強い中毒性を放つあまりにもオリジナルな傑作だ。


あまりに強烈な個性で、その出自が掴みきれないわけだが、『クルマごっこ』のドライブシーンにあるアニメーション作品へのオマージュが閣員できる。

ちびまる子ちゃん?わたしの好きな歌? [VHS]

ちびまる子ちゃん?わたしの好きな歌? [VHS]

ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』(1992)において、湯浅政明が演出を担当した「1969年のドラッグ・レース」(大瀧詠一)だ。「ひめだまなぶのルーツは湯浅政明か!」と思わずハタと膝を打ってしまう。いや、もっと辿っていけば『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』と関係が深い、さくらももこ、たまに辿り着く。さくらももこやたまの持つ、デフォルメ力、コミカルと叙情のバランス、童謡性は、ひめだ作品と強く共鳴している。ひめだまなぶは、音楽とアニメーションの融合という分野において金字塔を打ち立てた『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』の志を引き継ぎ、現代において更新しようとしているアーティストと言えるのではないだろうか。この『クルマごっこ』以外にも傑作揃いのひめだアニメーション、ぜひチェックしてみて頂きたい。紛れもない若き天才なのだ。


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