青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

岡田恵和『ひよっこ』10週目「谷田部みね子ワン、入ります」

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前週の別れのセンチメンタルさから打って変わり、よりコメディ色の濃くなった10週目。それでもチャンネルが切り替わるようにスパっと変わってしまうのでなく、乙女寮の愛子さんが物語に居残り、次の舞台であるあかね荘にまで足を運ぶ。その侵食具合が素晴らしかった。

「そう…よ…」
これ、あの大家さんのまね!

と愛子さんが大家の口癖を真似てみせる。『ひよっこ』では、こういった”まねっこ”がたびたび頻出する。例えば、あの乙女たちの愛らしき映画『ウエストサイド物語』や浅草のダンスホールでのナンパ男のなりきり、澄子が豊子を口真似するじゃれ合い。そして、みね子と鈴子が重要な交感を果たす時、何故かみね子の喋り方が鈴子にうつる。

分がっけどぉ・・・
あら、なまりうつっちゃったわ

こういった場面に流れる親密さ。誰かと誰かが向かい合い、互いに響き合ったという確かな感触。『ひよっこ』というドラマはそういった感触を積み重ね、連鎖させていく。


こんな娘がいてもおかしくないんだよね

みね子寝顔を眺めながら、愛子がつぶやく。すると、みね子は寝言で「お母ちゃん・・・」と漏らす。明らかに混線してはいるが、確かな母と娘の会話が成立してしまっている。しかし、愛子はその混線を丁寧にほどいてみせる。奥茨城への往復切符をプレゼントし、みね子を本当の母の元へ。

愛子さん、お姉ちゃんみたいだなって
お母さん代わりじゃなくって、東京のお姉ちゃんだなって

自分のことを差し置き、みね子の就職活動に助力する愛子の献身。それを受け、みね子はそれまでお世辞として発されていた”お姉ちゃん”という響きを、初めて実感を込めて送る。この「愛子-みね子」の姉妹の関係性は、「みね子-澄子」の間にも自然と継承されている。

こんなかわいい妹押しのけて
お姉ちゃんが行ぐわげないでしょ?

と石鹸工場の就職の枠を澄子に譲ったみね子。そして、田舎には姉の帰省を心から喜ぶ妹のちよ子がいる。

お姉ちゃん、私が作った卵焼き見てびっくりすっかな
楽しみだなぁ

奥茨城→乙女寮→すずふり亭、あかね荘と舞台を変え、別れを繰り返しながらも、誰かと誰かが響き合ったという感触は残り、また違う誰かに連鎖していく。