青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

満島ひかり×丸山健志『ラビリンス』(MONDO GROSSO)

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密集した高層アパートに微かに覗く”空”からカメラが下降していくと、地上に満島ひかりが佇んでいる。何やら神話めいた*1で、どこか郷愁を湛えながら天を仰ぐその姿に、”天使”的なニュアンスを嗅ぎ取ってしまうのは容易い。しかし、彼女は天に帰還することはなく、何かを決意したように、地上でステップを刻み始める。複雑にこんがらがったこのラビリンス”迷宮”で。


MONDO GROSSOの14年ぶりの新曲「ラビリンス」のミュージックビデオだ。振付を監修したのはジリアン・メイヤーズ。その冠には「あの『ラ・ラ・ランド』に出演した」とあるので、音楽とモーションが寸分の狂いなく連動したミュージカル的なダンスを思い浮かべるのだけども、その予想はいい意味で覆されてしまう。満島ひかりは楽曲のリズムに支配されない。ループし続ける音符の隙間をくぐり抜けるように自由なテンポで舞う。それは、何からも束縛されないダンスだ。更に、カメラ一台のワンカット長回し撮影*2ということで、そのダンスにはカットがかからない。すなわち、この映像には”死”がない。満島ひかりはあらゆる束縛から解放され、この街をサヴァイヴし続ける。時にはカメラの先の我々を挑発しながら!その躍動にたまらなく胸を撃たれてしまうのです。


そして、ロケーションの圧倒的な素晴らしさ。鰂魚涌と思われる香港の街並は、猥雑に入り組んでいるからこそに魅力的だ。雨上がりなのだろうか、地面はしっとりと濡れている。オリエンタルな街の灯りが地面に反射し、溜息が漏れるほどに、美しく滲む。満島ひかりが、それまでよりも幾分か早いステップで回転しながら路地を駆け抜け、辿り着いた飲食広場。その地面に吸い込まれている光の輝きは、もはや祝福としか思えまい。この僅か5分とちょっとの映像の中に、生きていくことの困難さと、それ故の美しさが封じ込められているように思う。ラスト、満島”ひかり”は車のライトに照らされ、そのまま光に包まれて画面から姿を消す。あまりにもパーフェクトである。この映像によって、満島ひかりという女優の存在がまた一つ、格上げされてしまった。まさに天使。
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*1:ポーズジョジョ立ちもしくは脇の匂いチェック立ち

*2:満島ひかりのメイクを担当した方がSNSで「ゲリラ撮影」と投稿していたのを見かけたが、それが本当であれば、監督(乃木坂46欅坂46でお馴染みの、我らが丸山健志だ!)は神に愛され過ぎている!!