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青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

岡田恵和『ひよっこ』6週目「響け若人のうた」

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みなさーん、『ひよっこ』は6週目も好調です、朝ドラって本当に素晴らしいものですね(←私の中の増田明美が文体を侵食している)。いや、本当に東京編に突入してからの充実度はどうかしています。おもしろくない日がないし、6人娘はずっとめんこい。赤いコート、喫茶店、クリームソーダ、甘納豆、銭湯、洗い髪の乙女、恋バナ、ラムネ、西部劇、コッペパン、アーコディオン、ロシア革命、フレンチトースト、大き過ぎる上着、屋台のラーメン、初めてのお給料、まかないののり巻き、ビーフコロッケetc…こういった細部の数々だけでも思わずにんまり。物語は初日から実にエモーショナルに幕を開ける。みね子(有村架純)は父が暮らしていた出稼ぎ現場を訪ね、その残像に想いを馳せる。時を同じくして乙女寮では、庭先に集まった仲間達がみね子の一日の行方を気にかける。また、素敵なお洋服を諦めたみね子、「みね子はこんなのが好きじゃないかな」とブラウスを裁縫して届けるお母ちゃん。その素敵なブラウスはみね子を赤坂の"すずふり亭"に導く。こういった"誰かが誰かのことを想うこと"の密やかな交感が、『ひよっこ』というドラマの根元だ。



そして、コーラス部。余談にはなるが、幸子(小島藤子)の恋人でありコーラス部の指導者である高島を演じているのは井之脇海黒沢清の傑作『トウキョウソナタ』(2008)のあの天才ピアノ少年である(音楽が2つの作品を繋いでいる)。週のタイトルは「響け若人のうた」、なるほど『ひよっこ』にはたくさんの音楽が流れている。コーラス部が歌うのはロシア民謡だ。

響け若人の歌 高なれバイヤン
走れトロイカかろやかに 粉雪けって


黒いひとみが待つよ あの森越せば
走れトロイカ今宵は 楽しいうたげ

辛い日々が続き、どんなにボロボロに疲弊してしまったとしても、"がんばって"乗り越えれば、またいつか楽しい時間が訪れる。そんな祈りが込められているようのようなロシア民謡で、夜は徐々に熱を帯びていく。

お父さん まさに楽しい宴です
みんなで歌うって楽しいんですね~こんなに
みんなちょっと顔がポーっとほんのり赤くなっていて
乙女寮の乙女はかわいいな~と思いましたよ

本質的には"孤独"であるはずの人々が、何かを為し得ようと"一つ"になる時に生まれる高揚感。それは東京オリンピックを機とした日本の高度経済成長の空気感ともリンクしているし、みね子と同郷の巡査(竜星涼)が発した

同じ茨城だからほっとけないです
絆っていうものですか

という台詞とすら結びつくだろう。



茨城の奥地にて、たまたまラジオでキャッチしたビートルズの音楽にすっかり打ちのめされてしまった宗男おじちゃん。みね子からの手紙を受け取った宗男がぽつりと零す。

みね子ぉ〜がんばれぇっ!
ビートルズの情報、何かあったらよろしくな
この空は、東京にもリバプールにもつながってんだなぁ

先週放送の感想で「みね子たちが作っているのがトランジスタラジオであるのがいい」というようなことを、RCサクションと絡めて書いたのだけども、岡田恵和の念頭にあるのもやはり、忌野清志郎であったようだ。この回が放送された5月9日は奇しくも、清志郎のロック葬『忌野清志郎 AOYAMA ROCK'N ROLL SHOW』の開催日。そこで弔辞を読んだのは甲本ヒロト

僕はいつでも 歌を歌うときは
マイクロフォンの中から
ガンバレって言っている
聞こえてほしい あなたにも
ガンバレ!!


THE BLUE HEARTS「人にやさしく」

やさしい歌が好きです。忌野清志郎甲本ヒロト、そして峯田和伸。『ひよっこ』はロックンロールである、というようなわけのわからないことを口走ってしまいそう。アンテナさえ磨いておけば、会いたい人には必ず会えるし、想いは届く。



ロシア民謡ビートルズRCサクセションだけではない。『ひよっこ』では1960年代のヒットソングがいつも流れる。今週は喫茶店で流れる「明日があるさ」、銭湯の帰りに口ずさむ「見上げてごらん夜の星を」が印象的。街灯が水面に煌めく川縁を、銭湯帰りの洗い髪で乙女達が歌う。そして、就職してからの初めての休日を終えようとしているみね子たちに、幸子が気合いを入れる。

がんばりましょう、明日からまた

前述の宗男おじさんのブルーハーツもそうであるし、この”がんばりましょう”は『ひよっこ』全体を貫くテーマのようなもの。一体何度この魔法の言葉が登場することか。思い返せば稲刈りの前日のみね子の「明日はがんばりましょう」がまずもって記憶に濃い。そして、向島電機の朝の挨拶「それでは今日も一日、がんばりましょう。ご安全に!」、巡査がみね子に言う「お互いがんばろう、東京で」、すず子(宮本信子)の「がんばれ、みね子」、愛子(和久井映見)の「さぁ、今週もがんばろう」などなど、枚挙に暇はない。とりわけ愛子さんの"がんばりましょう"は素晴らしい。

ちゃんと頑張ってないと 神様は気付いてくれない

だから私はこれから幸せしかやってこないのよ
もうね 大変なことになってしまうわよ これからの私は

台詞がまぶしく躍動している!最後に、音楽が流れ続ける『ひよっこ』であるから、この国が誇る最高のポップミュージックの名曲を重ねてしまおう。

Hey Hey Hey Girl
仕事だから とりあえずがんばりましょう
Hey Hey Hey Boy
空は青い 僕らはみんな生きている

Hey Hey Hey Girl
いつの日にか 幸せを勝ちとりましょう
Hey Hey Hey Boy
かっこわるい 毎日をがんばりましょう


SMAP「がんばりましょう」


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